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写メ日記

全126件中1~10件を表示

龍生の投稿

虚しさと風穴と、ワンパンチ

09/05 23:39 更新

子供の頃
学校で前の席から回ってくる行事のお知らせの紙
僕のところで無くなってしまうことが多かった
後ろの子に渡すために 自分の分を差し出す
「喜んでくれてるからいいか」
そんな風に 自分を削って笑顔を渡す子供だった

大人になっても それは変わらなかった
会社で僕の仕事は山のように積み上がり
サポート要員として派遣社員が配置されたが
仕事内容を説明すると

「いや無理ですね…」

そう言って肩をすくめる
結局 僕はいい人になって
大変な部分をすべて自分で背負うことになった

夜になれば 気晴らしにバーへ行き
そこに居る人たちにお酒を奢る
みんなが喜んでくれるのが嬉しくて
でも帰り道には 虚しさの風が吹いていた

僕にはもう一つの顔があった
街に現れるモンスターを倒すヒーローの仕事だ
ランクはS級からC級まで分かれていて
僕は最低ランクのC級5位
けれど実力はS級以上
どんな敵もワンパンチで倒せる力を秘めていた
それでも昇格や名声には興味はなく
自分の力だけで何かを掴み取りたかった
そうすれば 心に吹く風も変わると信じていた

僕は他のヒーローと違ってマイペースで個性的だった
そのせいで誤解され 一般市民からは嫌われていた
でも わかる奴だけわかればいいと気にしなかった

ある大雨の日
街に突如 S級以上のモンスターが現れた
ビルは崩れ 車は炎に包まれ
「逃げろ!」「助けてくれ!」
市民の叫びが雨音をかき消す
悲鳴と火の手が入り乱れる中
モンスターは破壊の限りを尽くしていた

現場に着くと S級ヒーローが奮戦していた
市民は声を張り上げて応援する
「S級ヒーロー頑張れ!」
しかし力の差は歴然
S級の一撃は軽く受け流され
反撃を受けたヒーローは吹き飛ばされて動かなくなった

次に狙われたのは僕だった
巨大な影が突進してくる
僕は間一髪でかわし
渾身のワンパンチを放つ
轟音が響き モンスターの腹に風穴が開き
巨体は粉々に砕け散った
衝撃は空にまで広がり
大雨は止み 太陽が顔を覗かせる

僕は倒れたヒーローを担ぎ
「ほんじゃ 帰るか」

その瞬間 市民の大歓声が響いた
初めての経験だった

ただ 自分の力を出しただけなのに
僕は感謝をされていた
胸に吹く風が変わった気がした

与えて得る見せかけの感謝ではなく
自分の力だけで得た本物の感謝こそが
心を満たすのだと その時やっと知った

思いを込めたワンパンチの威力は
心に棲むモンスターの向こう側まで打ち抜き
大雨を吹き飛ばし
空に太陽を輝かせる

その光の下で受け取った感謝は
これまでの虚しさを溶かし
新しい風を 僕の心に運んでいた

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月と摩天楼と、硝子の森

09/04 21:52 更新

暑い中 ソファから起きて
散らかる部屋に 久々にかける掃除機
窓を打つ雨の雫は
記憶の中に流れ込む歌のよう

身体の奥で響く音は
あの日の向こう側で鳴り続け
雨に打たれても気にしない
その衝動だけが残っていた

やがて雨は止み 風が吹く
蜃気楼に揺れる風の香りは
薔薇のように彩を魅せる
心を満たすのは 感じ方次第

自由へ抜け出す道は
探せばきっとある
例えばあの霧の深い森の中に
空の向こう側を渡る気球

雲の隙間から気球を照らす月の光
いくつもの夜を飛び越えながら
諦めない夢を照らし続け
その光を追いかけて 胸の奥で瞬く

星の見える夜には
硝子のように繊細なメロディが流れ
透明な摩天楼を舞うように
時間は音に連れ出されていく

雨は記憶を滲ませ
風は薔薇の香りを揺らし
月光は気球を導き
星々は夜を飾る

そのすべてを抱きながら
僕は そんな物語を描いていく

6598

慎重と異世界と、守るもの

09/03 19:51 更新

最近 不思議な夢を見る
大事なものを抱えて ただ勢いだけで走っている
気を許した瞬間 目の前が真っ暗になり
大事なものは音もなく消え
僕は奈落の底へと落ちていく
慎重に進んでいれば
その後悔の念を抱きながら いつも目を覚ます

目覚めれば現実
今日も会社で残業だ
大型の入札プロジェクト 入念に資料を整える
「そんなに細かく作ってどうする」
人の成果を利用することしか考えない同僚の声
僕は好きなこと以外に興味を持てない
でも 好きなことならば徹底的に慎重に
命を懸けるように準備をする

帰路 僕は秘密の路地裏へと足を向ける
誰も知らないもう一つの顔
僕は会社員でありながら 妖精ジョイの依頼で
異世界の魔王を討伐する仕事もしていた

そこに いつものようにジョイが立っていた
「今回の仕事は危険よ 狡猾な魔王の討伐
でも あなたの“慎重さ”が役に立つかもしれない」

依頼人は母と少女
「家族を助けて」と静かに願い
少女はチョコレートを差し出した
その落ち着いた瞳に違和感を覚えながらも
僕とジョイはそれを口にした

戦の準備
プラチナソードを三本 盾を九枚
素早さの実を百個
「相変わらず呆れるほど慎重ね」
ジョイは微笑むが 僕は笑わない

魔王の城
巨体が玉座から立ち上がり
黒い魔力が天を震わせる
剣と魔法が交錯し
轟音と閃光の中で激闘は続く
そして――
魔王の隙を突き
プラチナソードが奴の身体を真っ二つに切り裂いた
巨体が地に崩れ落ち 城内に重い沈黙が訪れる

勝利を確信した刹那
全身を痺れが襲った
「チョコレートには痺れ薬を仕込んでおいたのだ
少女は俺が操っていたのさ
情に流されたな 慎重な勇者よ」
断たれた魔王の身体は
黒い魔力に包まれながらゆっくりと元の形を取り戻していく

動けない僕
その瞬間 僕は小さく呟いた
「知っていたよ」
懐から素早さの実を一気に百個
口に放り込み 噛み砕き 飲み干す
全身を駆け巡る力
スピードが百倍になった瞬間
痺れからの回復も百倍の速さで進んでいく
麻痺した身体が一気に蘇り
稲妻のような速さで駆け抜け
プラチナソードが魔王を木端微塵にした

「ここまで…慎重なやつだったとは」
魔王の断末魔が響く中
僕は静かに剣を収めた

「慎重?違う
僕の慎重は
大切なものを守るための慎重なんだ」

勢いだけで突っ走り
気づけば失っていた数えきれないもの
世間の常識に逆らっても構わない
もう二度と 大切なものを見失わない

慎重さは臆病ではなく
過去の痛みから生まれた強さ
その強さを胸に
僕はこれからも歩みを進めていく

見えない未来を照らすのは
慎重という名の小さな灯火

6598

SLと少女と、宇宙の心臓

09/01 23:59 更新

スーパーノヴァとは
星が寿命を迎える時に起こす“宇宙最大の爆発”
ひとつの星が砕け散り
その光と衝撃は銀河を揺らし
全てを破壊するほどのエネルギーを
宇宙に解き放つ現象のこと

──子供の頃
近くの大きな公園には「SL広場」があった
黒い蒸気機関車と
宇宙へ繋がるようなU字型の造形物
遅い時間まで一人で遊ぶ僕を
少し年上の女の子が心配して
手を引いて家まで送ってくれた
その手の中にはいつも
光るように甘い飴玉があった

大人になって
僕は「儀式」と呼ぶ旅を始めた
嫌な想い出の場所に足を運び
それを良い記憶に書き換える
過去の傷を消せば
もっと強く前に進めると思ったからだ
だがその儀式は
心のエネルギーを激しく削るものでもあった

そんな日々の傍ら
僕は宇宙センターで働いていた
不安定な恒星を観測し
地球への影響を調査する仕事
最近、風が強い
毎日嵐のように吹き荒れるその風を
誰もが異常気象と片づけていた

──ある日
最も嫌な記憶の地に立ち
いつもの儀式を終えた後
あのSL広場へと歩いていった
その瞬間、宇宙センターから電話が鳴る
「恒星が寿命を迎え、今日にもスーパーノヴァが発生する可能性がある」
僕は呟いた
「この嵐は……恒星から放たれた粒子の嵐
宇宙風が地球に届いていたのか」
スマホがけたたましく鳴り響き
地上の電子機器は狂い始めた
地球を破壊する光が迫っていた

振り返ると──あの女の子がいた
手を取り、僕をSLへと導く
轟音とともに鉄の巨体は動き出し
煙を吐きながら夜空を駆け上がる
999のように宙を舞い
U字型の造形物へ突っ込む
視界が闇に塗りつぶされ
気付くと僕は恒星の中心に立っていた

核は黒く沈み、死にかけていた
女の子はポケットから飴玉を取り出し
次々と光の珠を核へ投げ入れる
刹那、崩れかけた心臓が脈動し
まばゆい光が爆ぜる
死にゆく星に命が吹き返った
その光景を最後に
僕の意識は闇に沈んだ

──目を開けると
SL広場の地面に大の字で横たわっていた
女の子の姿はなく
ただ夜風だけが胸を撫でていく

僕はいつの間にか
偽りの光にすがり
本当の光を見失っていたのだろう
過去の痛みは
消し去るものではなく
今を輝かせるための光に変わる

胸の奥に吹く風は
かつての嵐とは違う
それは自由の空へ連れていく風
──そして僕は歩き出す
あの日もらった飴玉の光を
未来の灯りに変えながら

6598

銀河鉄道と白い靴と、揺れる鼓動

09/01 02:50 更新

朝日が昇る
顔にあたる光の中で
ふと胸の奥の痛みに触れる

白い靴で踏み出した道
あの日の僕は
ただ勢いのままに走っていた
未来を描くよりも
その瞬間を生き抜くことで精一杯だった

──けれど今なら言える
先にある夢を描いて進むことの大切さを

長く険しい銀河鉄道の話を聞かせてほしい
その物語に心が揺れた時
悲しみさえ詩へと染み込んでいく

時代に合わせて呼吸するつもりはない
明日を求める誰かが揺れるように
僕は傷をリズムに変えて手放す

影に光が差し込む
揺れる鼓動が
眠りの中の夢を呼び覚まし
月夜に照らされた時
現実の景色に変わっていくと信じている

──だから僕は
歩き続ける
未完成の物語を
自由の風にのせて

置いてきた言葉が
夜風に混ざり
まだ見ぬ誰かの呼吸に触れていく

6598

狂王とフロッピーディスクと、自由の物語

08/31 02:11 更新

グーグルマップもない時代
知り合いから買ったおんぼろの50CCのバイクを走らせ
A君の家まで行った

二人でパソコンの前に座り
作っていたのは
「狂王」が世界を滅ぼし
勇者がそれを阻むという
よくあるストーリーのゲームだった

完成しないまま
卒業の日が来て
A君とも会わなくなり
データだけが
古いフロッピーディスクの中に眠った

──大人になって
満員電車に揺られ会社へ向かう
頭の中では
「自由になる物語」を描いていたが
それはあのゲームのように
完成する気配を見せなかった

地方への出張
古びた電車に長く揺られ
顧客に神経をすり減らし
疲れ果てた帰り道
再びその電車に乗り込む

まどろみの果て
目を覚ますと
電車は駅に停まり
乗客の姿は消えていた

外に出た瞬間
轟音と共に街が光で裂けた
空に浮かぶ「狂王」
その口から放たれる光線が
建物を砕き、人々を焼き尽くす
地獄の風景の中
僕は山道へと必死に走った

光線が背後を掠め
爆風が身体を吹き飛ばす
転がるように進む途中
道端にバイクがあった
「僕の50CCだ…」
息を呑み、跨り
光を避けながら山を駆け上がる

辿り着いたのは
山の頂のA君の家
玄関は開いていて
中にはあのパソコンがあった
フロッピーディスクを抜き取った瞬間
狂王は悲鳴と共に崩れ落ち
夜の闇に消えた

気を失い
気づけば再び電車の中
「夢か…」
そう呟いたが
ポケットの中には
あのフロッピーディスクが入っていた

──翌日から僕は
頭の中に止まっていた数式を
現実のディスクに上書きしていった
未完成の物語を完成させるために

マップのない暗闇の道を
おんぼろのバイクで走らせながら
自由のストーリーを描いていく

いつかこの物語が
誰かの胸で点灯する時
「狂王」によって封じられた
過去の世界は塗り替えられ
新しい地図が
確かに描かれていくのだろう

6598

影と光と、水筒の妖怪

08/30 00:32 更新

暑い夏の日
教室の片隅で一人でいると
A君が声をかけてきた
同じような環境で育った彼とは
なぜか気が合った

「バイト、一緒にやらないか」
新しい経験にワクワクして
僕は頷いた

倉庫での作業の合間
妖怪や不思議なことが好きなA君は
梱包の手を止めて、ふいに言った
「妖怪と出会ったら、どう闘う?」
僕は答えられずに黙る
A君は続けた
「妖怪は光みたいなものだから
まともに闘えない
封印するか、共存するしかない
水筒の中は鏡だろ
光を反射して閉じ込めるのにちょうどいい」
その発想に僕は感心した

──バイトの帰り道
目の前を一つの光の球が飛んでいった
その先には
僕と同じような環境で育った子供が立っていた
僕は声をかけることなく
ただ通り過ぎた

やがてA君とは道が分かれた

大人になり
「妖怪スポット」の噂を耳にした
そこに潜む妖怪を生け捕りにすれば
多額の報酬が得られるという
がむしゃらに稼ぎたかった僕は
迷わずその場所へ向かうことを決めた

久しぶりにA君に会った
居酒屋の席で妖怪の話をすると
彼は驚き、必死に止めた
「やめた方がいい」
それでも僕が行くと言うと
水筒を渡された
「お守りだ、持っていけ」

──夜
廃校の校舎に足を踏み入れる
特級の呪物を封じる札を手に
廊下を進むと、背後に寒気が走った

振り向けば
顔が前後に二つ
腕が四本、足が四本の鬼が立っていた
鋭い爪が空を裂き
僕は紙一重でかわす
札を鬼の額に貼りつける
「これで終わりだ」──そう思った

だが鬼は心に語りかけ
押し込めていたトラウマが
光となって溢れ出す
僕の姿が
ゆっくりと妖怪へと変貌していく
必死に抗うも、取り込まれてしまう
「もうダメか」

その時
A君から渡された水筒を思い出す
フタを開けると
溢れ出したトラウマが
光の奔流となって吸い込まれていく
鬼は消え去り
僕は気を失ったまま
朝まで水筒を抱えていた

翌朝
封印のため寺へ向かう途中
目の前を一つの光の球が
静かに飛んでいった

僕は立ち止まり
水筒を封じるのをやめた
トラウマは消すべき呪いじゃない
一緒に連れて歩く影だ
その影があるからこそ
光の眩しさを
誰よりも強く感じられる

──だから僕は
光の球と影を胸に抱き
今日も歩き出す
過去の痛みさえ
誰かの未来を照らす
新しい灯になると信じて

6598

砂丘と光と、竜の骨

08/29 02:53 更新

螺旋を登り、昼間にたどり着いた山のふもと
砂丘の上にひっそりと建つ小屋の前で
僕は立ち止まった

希望で上昇するはずの気流は
継ぎはぎの記憶の中で
舞い上がる砂と共に下降していく

手にしていた数式の紙束は
軽やかなのに、なぜかずしりと重かった

──夜
空を見上げると、いつもなら気付かない光があった
広大なりゅうこつ座の中で
ひときわ強く輝くイータ・カリーナ

その姿は
自由に宇宙を航海する船のようで
僕を誘うように瞬いていた

気付けば僕はその船に飛び乗り
言葉は光となり、色をまとい
やがて音楽に変わっていく

その響きは、超新星爆発のように
破壊と創造の音を奏で
今までの「当たり前」という惑星を次々と壊していく

砂に戻った星を拾い上げると
それは再び形を変え
砂丘の小屋の頭上で輝いた

──過去の想い出も
星が爆ぜ、光を生む瞬間に
新しい始まりへと書き換えられる

だから僕は
星の音を胸に抱いて
これからの空へと歩き出す
たとえ砂が崩れても
その先には、必ず新しい自由の景色が広がっている

6598

深海魚と扉と、ナンバー11

08/28 00:45 更新

学校の美術の時間
僕は粘土で深海魚を作った
お腹には小さな扉を刻んだ
「11」という数字を入れた
1と1が並ぶ姿が門のように見えたからだ

形はいびつだったけれど
自分では満足していた
だが金賞を取ったのは
細部まで作り込まれた
A君の恐竜の模型だった

僕の深海魚は
他人の評価の海を泳ぐことなく
机の中で固い粘土に戻っていった

──時が過ぎて
僕は会社員になった
昇進を決める面接のため
上司が喜びそうな言葉を並べ
評価シートに形式通りの答えを書く
心を押し殺し
ご機嫌を取るだけの報告会

だがもう一つの顔を持っていた
趣味で潜り込むのは
表現の海を泳ぐ地下のコンテスト
1対1で向き合い
ジャッジの手で勝敗が決まる世界だった

練習は重ねた
勝てるはずと挑んだ
泳ぎは悪くなかったはずなのに
ジャッジの判断は僕の負け
ここでもまた
他人の評価の海に沈められた

「この世界の答えってどこにあるんだよ」
僕は進む方向に迷子になっていた

帰り道、夜空を見上げる
雲の隙間に魚の影が泳いでいた
よく見ると──
あのとき作った粘土の深海魚だった

へたくそな形のまま
でも自由に泳いでいた
「これが答えなんじゃないか」
僕は思わず呟いた

──数日後
再び表現の海に挑戦する
全国から猛者が集まる中
僕の番が来た

今度は相手に合わせるのではなく
自分の内に深く潜り
問いかけをそのまま表現に変えた
あの深海魚のように
暗い海を自由に泳ぐように

空間は僕の意識に染まり
観客の心が揺れていくのを感じた
気付けば会場は沸き立ち
僕の存在を見つめていた

僕は初めて
他人の評価の海ではなく
自分の自由の海を泳いでいた

──後日
僕は会社を離れた
深海へ潜り、表現を通して共鳴を起こすとき
ナンバー「11」の扉は開かれた

他人の評価という鎖は断ち切られ
不器用な形のままでも
自由の海へ飛び出していける

夜空を見上げれば
あの深海魚が泳いでいる
いびつでも確かな光を宿し
未来への道を示していた

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嵐と紙片と、未来の約束

08/27 01:25 更新

学校までの道を走る
これで何度目の遅刻だろう
遅刻している日のほうが
圧倒的に多かった

走りながら、幸せそうな家族を見かける
子供心に羨ましくて
石に躓いたみたいに
走るスピードは落ちていった

学校に着くと
床に座らされ
ノートに漢字を埋め尽くす罰
授業よりも、地面と話す時間が長かった
いつもひとりのまま
心の中に嵐が吹いた

──自分の存在ってなんだろう
嵐に飲み込まれる前に
僕は紙に魔法の呪文を書き
ポケットに入れた
それがあれば嵐を乗り越えられた
時が経ち、大人になる頃には
魔法の呪文のことも忘れていた

──そして今
僕は決断を迫られていた
仲間を置いてでも自分の道を進むか
揺れていた
進むべき道は見えていたのに
世間の当たり前に
足を止められていた

もう一つの顔
僕は危険なビジネスの傍ら
数年前に突如、世界各地に現れた
「ゲート」と呼ばれるダンジョンの前に立っていた

ゲートの中には魔物が潜み
人類は「ハンター」と呼ばれる
特別な力に覚醒した者たちを送り込み
魔物を倒し、ダンジョンを攻略してきた

ランクはE級からS級まで
強さはそのまま地位や富に直結する
だが僕は最弱のE級ハンターに過ぎなかった

その日、仲間とパーティーを組み
ゲートに入った
下級のゴブリンを倒し進む
その時──
ダンジョン全体を揺らす
強烈な波動が響いた

現れたのは
最下層に潜むはずの
最強のグレーターデーモンが二体
口から放たれる炎で
仲間たちは次々と焼かれ
一瞬で僕ひとりになった

炎が僕を呑み込もうとした瞬間
僕は勢いで転倒し、床に這いつくばった
その姿はまるで、かつて罰で座らされ
地面と話し続けていたあの日の自分のようだった

その瞬間、炎はどこからともなく現れた剣で真っ二つに裂かれ
同時に一体のグレーターデーモンの身体も斬り裂かれた

そこに立っていたのは
とてつもないオーラを放つ戦士
「今日は遅刻しなかったようだな」
「地面と話す時間は終わりだ」
その声を聞いて
僕は呟いた
「僕だ……」

ハッとしてポケットを探ると
紙が残っていた
あの日の魔法の呪文
「今の自分を助けられるくらい強くなる
 だからこの嵐を乗り越えさせて」
そこには確かにそう書かれていた

「約束通り、自分を助けに来たぜ」
戦士はそう言った

だが次の瞬間
もう一体のグレーターデーモンが
戦士を襲い
彼は吹き飛ばされた
動けなくなった戦士は
剣を僕に投げ渡す

「お前が倒せ!」

剣を握った瞬間
全身に今までにない力が溢れる
僕は雄叫びと共に跳び
グレーターデーモンの眉間へ
剣を突き立てた
刹那、炎の巨体は燃え尽き
灰となって崩れ落ちた

「自分の道は自分のために進め
 答えは自分の中にしかない」
戦士の声が響いたかと思うと
その姿は消えていた

──翌日
僕は決意した
仲間や世間の当たり前ではなく
自分の道を歩くことを
もっと強くなり
過去の自分を助けられるように

答えは外にはない
自分の中を真っすぐ見つめれば
例えそれが世間では正しくなくても
最高の人生を進めることができる

ポケットの中の古びた紙が
静かに揺れていた
その約束を確かめるように

6598

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