『56歳の挑戦』
今日もプロフィールを何度も書き直した。
「清潔感」「優しさ」「包容力」――そんな言葉で飾ってはみるけど、結局、56歳という数字は消せない。鏡を見るたびに、深く刻まれたシワと、腹に乗ったポニョが目に入る。正直、怖い。若い子には勝てない。いや、勝てるなんて思ってない。ただ、ひとりでも、俺を選んでくれる女性がいるなら、それだけでやっていける気がする。
様々なマッサージの経験はあるものの選んでもらえなければ意味がない。
だが虚しくも、今日の予約はゼロ。スマホを何度も確認したが、メールはこなかった。
「待ってます」って呟くことすら、必死さが出すぎてダサい気がして、指が止まる。
でも、言わなきゃ始まらない。年齢を理由に諦めるのは、簡単すぎる。
僕はまだ、女性の肌のぬくもりを覚えてる。いや、欲してる。
今夜は写メを撮り直す。カメラアプリを使えば、多少はマシに見えるだろうか。
でも、加工しすぎて実物と違ったら、会ったときに幻滅される。それが一番怖い。
だから、僕は僕のままで勝負するしかない。
56歳、善。年甲斐もなく始めたこの仕事で、まだ何も始まっていないけど、掴みに行く。
諦めたら終わりだ。ここから56歳 善の奮闘記がスタートする
