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写メ日記

全86件中21~30件を表示

龍生の投稿

空白と少女と、ウィンナーコーヒー

06/29 01:51 更新

僕は自由になるために
深夜バスに乗り、東京を目指していた。
新しい明日を探しにいく──そんな旅だった。

心の中は、
お金、自由、成功……
あらゆる欲望でいっぱいで、
“空白”の入り込む隙もなかった。

その夜もまた、
深夜バスの途中、サービスエリアで休憩をとる。
人気のないカフェでウィンナーコーヒーを注文した。
その甘くてほっとする味に、少しだけ心がゆるむ。

ふと顔を上げると、
黒い服を着た無表情の少女が目の前に立っていた。

「ゲームをやめないで」

──そうつぶやいたかと思うと、少女はすぐに姿を消した。
夢でも見たのかと思い、スマホを取り出し
いつもの無料ゲームを開こうとするが、ログインできない。

早朝。東京に着く。
だが、空気が異様に重い。
巨大ビルの外壁モニターに映る緊急速報。

「人工衛星がハッキングされ、
宇宙から強力なレーザーが発射されました。
都市が一瞬で壊滅状態に──」

その瞬間、遠くで閃光が爆ぜ、轟音が響く。
キノコ雲が空を覆い、街が煙になった。
人々の叫び声とサイレン。
映像にノイズが走り、画面いっぱいにあの少女が現れる。

「この世界を、焼き尽くす」

僕のスマホが震える。
見ると、さっきログインできなかったゲームが勝手に起動していた。
僕の頭に、なぜか**“kuuhaku”**という言葉が浮かぶ。

──kuuhaku
僕はそれを入力する。
すると、画面には「No game」とだけ表示される。

僕は静かに目を閉じ、そして開いた。
そして──No lifeと入力した。

少女の映像が、滝のように端から崩れていく。
最後に一瞬だけ、こう表示される。

「私を、忘れないで」

あの事件は、それを境に起きなくなった。

東京に戻った僕は、
小さなカフェに入った。
マスターと従業員しかいない、静かでお洒落な空間。

席についてメニューを見ていると、
まだ注文していないのに、
少し懐かしさを帯びた美しい女性の手が、
ウィンナーコーヒーをそっとテーブルに置いた。

顔を上げると、そこには誰もいない。

マスターに尋ねる。
「さっきの女性、従業員の方ですか?」

彼は首をかしげて言った。
「うちにはそんな娘、いませんよ」

僕はコーヒーをひと口すすった。
甘くて、少しだけ苦い。

そして、立ち上がる。
まっすぐに歩き出す。

──この世界で、もう一度。
自由というゲームを、プレイするために。

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水溜まりと薔薇と、ブラウンシュガー

06/27 02:26 更新

かつて僕は、親会社のプロジェクトリーダーだった。
50人のサプライヤーをまとめて、
毎日が誇りとやりがいに満ちていた。

「このまま課長かもな」
そんな期待すら、浮かんでいた。

──でもある日、僕は“戻された”。
子会社へ、作業員として。
その席にはもう役職なんてなく、
ただの“歯車”が、待っていた。

それでも逆らえなかった。
会社に人生を預けていた僕は、
命じられるまま、田舎の宇宙工場へ通った。

巨大な工場には、似つかわしくない
可愛らしい女性がいた。
彼女は作業員だったが、
笑顔で力仕事をこなしていた。

彼女は、いつも僕にコーヒーを淹れてくれた。
普通の砂糖じゃない、
少し贅沢な“ブラウンシュガー”とともに。

僕はそのシュガーを、こっそりポケットに入れた。
その甘さが、工場の中で唯一の“音楽”だった。

ある日、工場は不気味な静寂に包まれていた。
埃も、光も届かないクリーンルームで、
作業員たちが、血まみれで倒れていた。

そこには牙を生やした“バンパイア”がいた。
彼女もまた、血を吸われて
“あちら側”に堕ちかけていた。

バンパイアは僕を見つけ、襲いかかってくる。
僕はとっさに巨大なファンを回した。
やつは粉々に砕けた。
けれど──再生した。

再び襲いくる怪物。
僕は逃げながら、ポケットの中を握った。
そこに、あの“ブラウンシュガー”があった。

最後の賭けだった。
再生する細胞に、砂糖を混ぜる。
やつの身体は狂い、崩れ始めた。

僕は斧で天井を砕き、
太陽の光を呼び込んだ。
バンパイアの身体は、焼けて消えた。

彼女は、まだ完全には堕ちていなかった。
「コールドスリープで宇宙に送り出して」
そう願う彼女を、僕は薔薇とともに
カプセルにそっと納めた。

最後にキスをして、
僕は彼女を、永遠の旅路に送り出した。

次の日、会社に向かう途中で
僕はふと、空ではなく──
“宇宙(そら)”を見上げていた。

小学生の頃に聞いた言葉を思い出す。
「水たまりは宇宙にはなれないけど、
宇宙を写すことはできる」

僕はもう、“泡”のように消える人生ではなく、
宇宙を映す旅を選んだ。

それは、永遠じゃない。
けれど確かに、僕だけの光だった。

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ピラミッドと地下室と、無音の瞳

06/26 06:21 更新

今日も地下の臭気が漂うバックヤードで、
僕は黙々と汚れ仕事をしていた。
冷凍庫の中で震えながら長時間の作業、
天井裏を這いずるように進むホコリまみれの通路。

寝る場所は、ボイラーの爆音が鳴り響く、
高温多湿の地獄のような部屋だった。

それでも地上では、
キラキラした制服のスタッフたちが
笑顔で“フロント”を飾っていた。

うらやましいと思った。
同時に、あそこに行ける気がしなかった。

学生時代、クラスではそこそこ成績も良かった。
けれど、進む道をほんの少し間違えただけで、
僕はこの底に落ちた。

この建物は、ピラミッドだった。
上層の光のために、下層が犠牲になる構造。
それが現実だった。

ある日、疲れた身体を引きずって
気晴らしに街へ出た。

小さなライブハウス。
隣に座った女性に、なぜか声をかけた。
明らかにお嬢様タイプ。
無視されるかと思ったけれど──
彼女は、優しく微笑んでくれた。

それから何度か、一緒に過ごした。

「どうして僕なんかと?」と聞いたら、
彼女は言った。

「あなたが放つズレが、私には音楽みたいに響くの」

その言葉で気づいた。
僕は枠にはまらない個性を、
無理やり社会という型に押し込もうとしていたんだと。

僕の劣等感の正体は、
他者との比較だった。
毎日、光をまとった“誰か”を見上げては、
汚れた自分を否定し続けた経験。
それが、僕を内側から錆びつかせていた。

ふと気づくと、僕は地下室にいた。
空間が一瞬ゆがんだ感覚。

背後には──
目と耳を塞がれた、僕にそっくりなサイボーグが立っていた。
感情を失った“無音の瞳”が、こちらを静かに射抜いていた。

奴は襲いかかってくる。
尋常じゃないスピードとパワー。
太刀打ちなどできない。
僕は逃げるしかなかった。

そのとき、積み上げられた鉄柱のひとつが床に落ちた。
地下室に反響音が鳴り響く。

サイボーグの動きが乱れた。
目も耳も塞がれた奴にとって、音は唯一のセンサー。
反響音が、やつの感覚を狂わせた。

僕は鉄柱を次々と床に叩きつけた。
金属音が反響し続ける。

奴は僕の位置を見失い、
混乱の中を彷徨っていた。

僕は背後に回り、
鉄パイプを握った。

「チェックメイト」

そう呟いて、こめかみに一撃を食らわせた。
──奴は、動かなくなった。

次の日、
僕は会社とは“逆方向”に歩いていた。

ピラミッドを背に、
自分の足で、
自分の道を歩き始めた。

僕の中で、反響し続ける言葉があった。
「あなたが放つズレが、私には音楽みたいに響くの」

他者の光じゃない。
自分の個性が、自分を救った。

汚れの中でくすぶっていた“音楽”が、
ようやく僕の中で、鳴り始めた。

6598

古の記憶と欲望と、バベルの塔

06/25 00:29 更新

サークルの仲間たちと
会社帰りに作品を作っていた日々。
その中にいた、予測不可能な彼女。

まっすぐで、自由で、
自分だけの世界を生きていた人。

サークルはいつしか自然消滅して、
僕も日々の仕事に埋もれていった。

そんなある日、
彼女から突然の連絡。
「会いたいの」

彼女は経営者になっていた。
都内で再会した僕たち。
彼女はふと、こんなことを言った。

「AIでは測れない本質ってあるのよ。
 真っすぐな心は、絶対に真似できない。」

なぜかその言葉が、
心に深く焼き付いた。

僕はNEO東京にある
天まで届きそうな超高層ビルで働いていた。
通称──「バベルの塔」。
72階建ての、伝説と噂に満ちた場所。

開発者は10年前に忽然と姿を消し、
今は汚職企業の手に渡っていた。

ある日、66階で異変が起きた。
建物を支える回転装置が停止し、
軋むような音とともに、塔がわずかに傾いた。
誰かの悲鳴と、揺れる足元。

警備ロボが暴走を始め、
塔は制御を失っていった。

“僕だけが”無事だった。
ちょうどそのとき、66階で単独作業していた。
皮肉にも──塔の心臓に、いちばん近い場所で。

館内放送で、命令が下る。
「66階の“何か”が頭脳を狂わせている。
 それを破壊せよ。」

探索の末、僕が見つけたのは、
空中に浮かぶ“開発者の亡骸”。
その身体は配線とつながれ、
バベルの塔に封じられた**“古の記憶”**のようだった。

僕が近づくと、
無数のケーブルが襲いかかる。

逃げても、避けても、
AIが僕の動きを予測してくる。

血まみれになり、
もうダメかと目を閉じたとき、
彼女の声が蘇った。

「真っすぐな心は、絶対に真似できない。」

僕は“ただ前に”歩いた。
予測不能なその一歩に、
AIは対応できなかった。

そのまま、工具を突き刺す。
塔の中枢は沈黙し、
世界が、静かに戻った。

次の日の朝、
ビル風に吹かれながら会社へ向かい、
僕は上司に辞表を差し出した。

あの言葉を、
自分の中で風化させたくなかった。

真っすぐな心に従って、
もう一度、世界を選び直したかった。

欲望と自由の“光”は、
あの日から、僕の中で消えていなかった。

6598

石と光と、欲望の行方

06/23 23:16 更新

誰からも高く評価されなかった僕は、
「いつか認められる人間になれる」と信じて、
求めていない努力を、
擦り切れた時間に押し込んでいた。

努力だけがすべてだと信じていたけど、
そこにあったのは、
擦り切れた精神と、
力の入らない身体だけだった。

そんなある日、
空が光って、
全人類が石になった。

気づいたとき、僕は石化していなかった。
いや、他にもいるかもしれない。
誰かを探して、歩いた。

やがて出会ったのは──
自由そのものを絵に描いたような、
ひとりの女性だった。

さらに歩いていくと、
“石にならなかった人たち”の集落があった。
その人たちは、
「当たり前に逆らって生きてきた」
そんな人たちだった。

彼らと共に過ごす日々は、
「欲望のために努力する」世界。
評価のためじゃない。
やりたいことに正直で、
そのためには全力になれる、
まるで逆さまに映る自由の国だった。

彼女との時間が、
未来への不安さえ、
愛おしいものに変えてくれた。

でもある日──
空から声がした。

「carry fea(キャリー フィア)…1 second」

蛇の形をした石が、
空に浮かび、
仲間の一人が石化した。

立っていたのは、
“支配”の権化のような男だった。

「個性なんていらない。
社会の歯車だけが生き残ればいい。」

蛇の石は、
“恐怖”を抱えた人に向かって放たれる。
数字とともに光り、
その場の人間を石に変える呪具。

次は僕だった。
彼女の声が届く。

「…恐怖に勝って。」

目の前で光った石。
でも僕は石化しなかった。

支配者が怯んだ。

僕はその石を手に取り、
同じように呟いた。

「carry fea…1 second」

支配者は、石になった。

気づけば──
電車の中。
いつもの会社に向かう朝だった。

僕は途中下車して、
会社に「体調不良で休みます」と電話した。

そして逆方向の電車に乗った。
海を目指して。

車窓から見えた空は、
“欲望のために努力する”
あの世界と同じ色だった。

恐れに覆われた石の中で
僕らはずっと眠っていたのかもしれない。
でももう、
欲望が光を放った——
あの青空の下で。

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言葉と光と、ウーラノスの星

06/23 02:50 更新

笑顔を忘れた日々があった
個性がまぶしすぎて、
まわりの景色に溶け込めなかった僕らは
弱さを隠して、大人になった

この世界に飛び込んだのは、
ただ、自分の言葉が
誰かの“奥”に届くかもしれない
そう信じたからだった

彼女は、自分を探していた
傷ついたまま、
だけど透明な心で
僕の詩に、そっと触れてきた

「今夜のキスで、一生を変えたい」
そんな夜が訪れた
抱きしめるたび、
知らなかった唄が心に流れてきた

時間が溶けていく──
一緒にご飯を食べて、笑って、
手をつないで夜を越えるうちに
僕は彼女の愛し方に救われていった

やがて、僕が抱きしめられていた
彼女の“まっすぐ”が、
僕の“蓋された記憶”を解き放っていく

もう隠さなくていい
過去の自分も、今の自分も
すべて、愛せるようになっていた

言葉が現実になって
心が“空”を歩きはじめた夜
手をつなぐふたりの上に
ウーラノスの星が、やさしく輝いていた

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夢のロープとピエロと、飛べないフェアリー

06/20 23:06 更新

風に乗って現れたのは、
まるで絵本の中から抜け出してきた女の子だった。

3歳児のような笑顔と、
透き通った羽を背負った、
だけど――飛べないフェアリー。

彼女がいたのは、
楽園のようなストーリーを描いた本の、その外側。
誰かが描いた、一本だけのロープの上を、
ひとりで渡る毎日。

落ちたら終わり。
だけど、進む先も見えない。
それでも歩く。
それしか選べなかったから。

そんな彼女の前に、
冴えないピエロが現れた。
夢しか描けない道化の男。

彼は言った。
「ねえ、君が渡ってきたロープ、
少し狭すぎないか?」

彼はもう一本のロープを張った。
それは、夢でできていた。
不安定かもしれないけど、
渡るのは、なぜか怖くなかった。

彼女はゆっくりと目を開いた。
羽が揺れた。
けれどまだ飛べない。

それでも、
ピエロの描いた夢の上なら、歩いてみたいと思えた。

彼女の目から、呪いが静かに溶けていく。
ずっと飲み込んでいた言葉が、少しずつこぼれ出す。

「今夜は……夢に、辿り着きたい」

その声を聞いた瞬間、
彼は彼女を抱きしめた。

その肩越しに見えた羽は、
透明に揺れて、
少しだけ光を帯びていた。

絵空事みたいな笑顔だった。
でも、その笑顔はたしかに今、目の前にあった。

きっと今夜、
彼女は辿り着ける。
“誰かの物語”ではなく、
“自分の楽園”へ。

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小さな僕と束縛の壁と、光のレジスタンス

06/19 22:51 更新

あの日僕は
昇りかけた階段から
誰かの指先ひとつで、落とされた。
夢も、誇りも、
独裁の気まぐれで灰になる世界。

送り込まれたのは、
巨大なクジラのような建物の中。
臭気と絶望に満ちたその場所には、
人の心を削る音が、
いつも低く鳴り響いていた。

「黙って働け」
「考えるな」
「従えば生き残れる」

そんな呪文のような声に
僕の小さな心は少しずつ縮んでいった。

でも、出会ってしまった。
夜のホテルバー。
小柄で、よく笑う女性。
会社を辞めて、海を越えるという彼女。

「不安より、やりたいことが先」
その言葉は、
心の奥の小さな種火に、
確かに風を吹き込んだ。

僕は目を覚ます。
これは牢獄。
気づかれずに脱出しなければ。

仲間たちと潜伏し、
情報を集め、
奴らを欺きながら
出口を探す日々。

僕たちは“レジスタンス”だった。
小さくても、まだ終わっていない者たち。

けれど、バレた。
処刑場へと連行される僕。
銃口が、
僕の小さな胸に突きつけられる。

そのとき思い出す、
あの瞳。
彼女の眼の中にあった、
「まだ、終わってないよ」っていう光。

僕の体が、
ゆっくりと、音を立てて、
巨大になっていく。

押しつけられた光じゃなく、
あの夜、
僕が自分で選んだ光が、
僕を元の大きさに戻した。

僕は立ち上がり、
束縛の壁を粉砕する。

もう誰の言葉にも、小さくならない。
もう誰の夢にも、閉じ込められない。

僕は今、
自由という名の荒野を走っている。
笑いながら、
この星のどこかでまた、
誰かの火を灯す風になるために。

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海と鳥居と、風の記憶

06/18 23:14 更新

あの頃の僕は、
毎日、ビルの入り口で笑顔を貼りつけていた。
入館証を受け取り、歩き、巡回して、
今日も何も起きないことを喜ぶような日々だった。
静かで、平和で、退屈だった。

腰を痛めたのをきっかけに、
少しだけ、時計の針がゆっくり回り始めた。
空いた時間で、偶然のように出会った“誰か”。
遠く離れた場所に住む、小さな女性。

行くはずのない距離だった。
でもそのときの僕は、
心の奥でなにかがうずいていた。
恋愛経験の浅さと、静かな冒険心が、飛行機の座席に僕を乗せていた。
海辺の町。
バスとタクシーを乗り継いで辿り着いた待ち合わせ場所。
風が抜ける音と、空の色。
近くには、ひとつの鳥居が立っていた。

ふと見上げると、タクシーの運転手が得意げに微笑んだ。
そして、ぐるっと回って──その鳥居の下をくぐった。
空が、青く光った気がした。
あれはただの陽射しか、それとも……。

出会いは、特別でも劇的でもなかった。
可愛らしい彼女は、まるで友達と話すように、僕に接した。
本屋で並んで歩き、カフェで静かに座っていた。
淡い時間。
恋というより、まだ“物語にもなりきらない、ページの余白”だった。

「じゃあね」と言われてホテルに戻り、
痛みが戻ってきて、シャワーを浴びて、僕は眠った。

翌朝。帰り支度をしていたとき、一通のメールが届いた。
「昨日はありがとう。来てくれてすごく嬉しかった。
今、ホテルの前にいるの。……部屋に入れていい?」

少しして、彼女はベッドの上に座り、僕の手を取った。
それだけだった。
それだけで、心が溶けていくのがわかった。

帰りの飛行機の窓から、鳥居のある海岸線を思い出した。
あの光は、なんだったのか。
あの声は、なんだったのか。

「本当に届く願いは、信じた想いの先にあるの。」
そう、風が言った気がした。

気づけば僕は、
毎日を守る側にいた“あの制服”を静かに脱ぎ、
地図のない人生を歩き出していた。

もう一度会いたいと思っても、
あの日の場所が、どこだったかさえ思い出せない。
でもいいんだ。

あの日、僕は鳥居をくぐった。
それは、世界と自分を結ぶ“魂の約束”だった。
自由になっていいよ──
そう言って、誰かが僕を送り出してくれた気がした。

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子犬と巨神像と、見えない森

06/17 23:01 更新

雨の日だった。
傘を持たずに歩いていた僕の前に、
泥にまみれた子犬がいた。

逃げるでもなく、吠えるでもなく、
ただ震えながら、僕の隣を歩いた。

その小さな命に、僕は寄り添った。
でも、家には連れて帰れなかった。
離れようとしたら、全力で追いかけてきた。
僕は――泣きたかった。

あのときの子犬は、
「ただ、そばにいてくれたこと」が
どれだけ嬉しかったのかを、僕は大人になってから知ることになる。

僕は大きな会社に入った。
夢を叶えるためだった。
でもそこは、巨大な“要塞”だった。

地図にもない、“ヘビースモーカーズ・フォレスト”。
空は曇り、
灰色の思想と決まりきった常識が
空にまで染み出して、
希望の光を塞いでいた。

気づけば僕は、
「本当の顔を隠したまま、笑顔だけを使いこなす達人」になっていた。
誤差を許されない世界で、自分を削っていた。

ある日、街で出会った。
まるで異世界から来たような女性に。
汚れていない、透明な瞳。
自分を偽らない美しさ。

最初は、手の届かない人だと思っていた。
でも、なぜか一緒に過ごすようになっていた。

そのときだった。
僕の中の記憶がふいに疼いた。

──あの子犬。
ただ隣にいただけで、全力で喜んでくれた。
あれは、僕だったんだ。
誰かに見つけてもらえることが、
こんなにも嬉しいことだったなんて。

僕は、樹海から出ようと決めた。
でもその先には、崖、河、雲。
逃げ道は、どこにもなかった。

それでも、その夜。
まどろみの中に、あの子犬が現れた。
けれどその姿は、あの頃のままではなかった。
薄く光をまとい、どこか気高い眼差しをしていた。

そして彼は静かに言った。
「古の契約で封印された“巨神像”を目覚めさせれば、
この霧深き牢獄から抜け出せる。
それを動かせるのは──“君の心”だけなんだ。」

目覚めた僕の前には、まだ霧が広がっていた。
でも確かに、心に“声”が残っていた。

僕は立ち上がった。
巨神像なんて、どこにも見えなかった。
でも子犬の声が、また聞こえた。
「自分の心に寄り添って、ハートのネジを回すんだよ」

目を閉じて、胸に手を当てる。
ギギギ……ギィ……
心の奥で、小さなネジが回り出した。
古びた歯車が、静かに息を吹き返すように。

その瞬間、
空を覆っていた煙が裂け、
光の柱の中から、巨神像が舞い降りてきた。

僕は乗った。
もう、歯車じゃない。
もう、誰かの夢を生きない。

樹海の向こうにあったのは、
自由という名の、青い空だった。

ハートのネジは、今も僕の中にある。
巨神像は、僕とともに空を飛んでいる。

今日もどこかで、あの日の気持ちに手を伸ばしている。

6598

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