灼熱の午後だった。
空の奥から、雲のすきまを縫って
ひとすじの光が落ちてきた。
今日は仕事があるはずだった。
でも、突然ぽっかり空いた時間。
ぽかんとした心の中に、
ふいに懐かしい香りが滑り込んできた。
まるでテキサスのような暑さの道を走る。
アスファルトが揺れて、
空にはクラウド——
ぷかぷかと、自由に浮かんでいた。
思い出したのは、あの人。
どこか気まぐれで、
でも芯に熱を持っていた人。
扉をぐぐったその先に、
ちゃんと、彼女はいた。
言葉よりも先に、心と心が触れ合った。
そしてふと漏らした言葉——
「消えたら、どうする?」
僕は答えた。
「必ず見つけるからね。」
それは願いというより、
確信に近かった。
だって僕も、
誰かに見つけられて、ここにいるのだから。
自由という名のクラウドに乗っていれば、
きっと、また会える。
そう思えた午後だった。
帰り道、電車の窓の外に
ぽっかり浮かんでいたブルームーン。
たぶん——
気まぐれに漂う彼女は、
あの月の向こうに、
静かにいた気がした。
