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写メ日記

全136件中11~20件を表示

龍生の投稿

ビー玉と切符と、雨上がりの遺跡

11/13 02:20 更新

目を閉じて 空気が震えれば
そこは楽園になる
ズレたリズムでもいい
息を感じて
それがビートになる

静かになった夜の街を歩く
七色のネオンが揺れて
頬が風を纏う
その温もりで 少しだけ救われる

雨上がりの遺跡の片隅で
反響する言葉が流れていく
完璧な道が霞んで
月の欠片が空から落ちて
手の中で 美しく光る

染められたビー玉を弾いて
感じるままに踊る
回転する円盤の音に
情熱を重ねていく

涙が落ちて 波紋を描くノイズ
零れ落ちて メロディーに変わって
夜を照らす

人生は一度きり
見えない鎧なんて置いて
片道切符の列車に乗る
窓を流れる雨が 物語を描いていく

歩幅を合わせて
気ままに揺れながら
寄り添う空の下
その瞬間を
胸に刻んでいく

6598

蜃気楼とグルーブと、光の粒

11/11 11:46 更新

どうでもいい話で微笑んでいた
昔から側に居たように
何も気にせず 揺られていた夜
言葉が触れ合うだけで
自分が信じられた

音のない街を
風だけが追い越していく
赤いワインの残り香に
響いた声が 溶けていく

暗闇も ぬくもりが連れ去って
別の空をくれるから
何かを置いて
少しずつ
あの日から遠ざかる

電車の窓に映る自分が
知らない誰かみたいで
その横顔を
誇りに思えた

あの時の笑い声は
どこまでも無防備で
今でも目を閉じると
夢の底で揺れている

桜の花びらのように
落ちていく瞬間が
こんなにも美しいと
蜃気楼が物語る

星空を見上げて
あの夜のリズムが
少しでも心を撫でているなら
きっと風は流れていく

時計の針が進んだら
光りの粒の中で踊ろう
繊細なグルーヴの中で
泳ぐように
ただ身を任せて

6598

虚構と理想の果てと、アイアム・シャドウ

11/08 20:33 更新

――子供の頃
遠くの運動公園まで歩いて行った

そこには滑車に紐がついていて
ぶら下がると、十メートルほどの距離を
風に乗るように行ったり来たりできた

その遊具が大好きで
何度も、何度も繰り返した

けれど、体が大きくなるにつれて
重くなった体は端まで届かなくなった

小さかった頃は
体が羽のように軽くて
もっと遠くまで飛べたはずなのに

遊び疲れて、夕方になる頃
夕日が途中で止まった滑車と僕の影を
地面に長く伸ばしていた

――時は流れ
僕は会社のサーバールームにいた

夜明け前の空気が冷たく
眠気と倦怠が身体を包んでいた

上司の命令で部署が変わり
望んでいないメンテナンス作業をしていた

カチカチと鳴る電子音
ディスプレイに流れる数字が
心拍のように脈を打つ

ハードディスクの中で
暗号化されたデータが回転している
本当の姿を隠した影のように

作業の手を止めて
天井を見上げた
蛍光灯が僕の影を映している

僕は試しに照明を消した
無数のハードディスクのLEDが
夜空の星のように瞬きながら
あらゆる方向から僕を照らした

その光の中で
誰かが囁いた気がした

――アイアム……

音ではなく
意識の奥で響く声だった

小さなLEDの光が
僕の輪郭をゆっくりなぞっていく

天井に浮かぶ影が揺れた
小さな光の中で
僕は本当の影を見た気がした

――実は僕は会社員の他に
影のモンスター“シャドウビースト”の討伐を行っていた

シャドウビーストはある日突如として現れた
蔭に潜み、影となって人を襲う魔物だ

その力は日に日に強くなっていた
人の恐れを糧にして
闇の中で姿を変えていく

そんな中で、僕はある日突然
魔力という“理不尽を超える力”を手に入れた

シャドウビーストを倒すたびに
自分の中の魔力が確かに増えていくのを感じた
それはまるでロールプレイングゲームのようで
倒すたびに、自分が理想の影に近づいていくようだった

誰にも理解されなくていい
誰も知らなくていい
ただ、自分の理想の姿を演じることができる
それが“影”だった

ビルの隙間からの光が僕を照らし
地面に長く影を伸ばしていく

止まった滑車が動き出すように
風が、どこからか吹いていた

――その日、僕はシャドウビーストを追っていた
街を駆け抜け、路地裏へと足を踏み入れる

そこには、討伐仲間のゼノが立っていた
様子がおかしい、と思った瞬間
ゼノが刃を抜き、僕に切りかかってきた

そのスピードは、人のものではなかった

「影が俺に力を与えた」
「この世界を滅ぼす」

低い声が、まるで影そのものから響いていた

どうやら彼は、影の力を吸収していくうちに
影そのものに取り込まれてしまったようだった

ゼノの瞳が黒く濁る
「この薬を飲めば、俺は最強になれる」
震える手でビンを握り、カプセルを飲み込む

その瞬間、空気が裂けた
ゼノの身体が膨れ上がり、骨が軋む音が響く
皮膚が光を拒むように黒く変質していく

モンスターへと変わり果てたゼノのエネルギーは
何十倍にも膨れ上がっていた

僕の目の前には、もはや仲間ではない存在がいた

それは“自分の理想”ではなく
“影の理想”に支配された虚構のモンスターだった

――ゼノが咆哮した
その瞬間、鋭い爪が僕に襲いかかる
咄嗟に身をかわすと、爪の衝撃波が背後のビルを吹き飛ばした

「どうだ、この素晴らしき力」
ゼノが笑う声が闇に響いた

僕は息を整え、最大の爆発魔法――エクスプロージョンを唱える
魔力が腕を走り、空気が震えた
次の瞬間、周囲十メートルが衝撃波に包まれた

爆音が夜を裂き、粉塵が街を覆う
「やったか」
そう呟いた僕の前に、ゼノが立っていた

かすり傷ひとつない
その目はすでに人間ではなかった

ゼノが再び咆哮する
街の隙間から無数の影が溢れ出し
黒い霧となって彼の体に吸い込まれていく

巨大なモンスターへと変貌したゼノのエネルギーが
街全体を押し潰すほどの圧を放つ

息をするだけで痛い
魔力が枯れかけた指先が震える
絶体絶命――そう思ったその時

――アイアム……

声がした
誰のものでもない
けれど確かに、僕の中から響いていた

視界の奥に、あの日の滑車と夕焼けが浮かぶ
風に乗って、自由に飛べたあの感覚が
胸の奥でふたたび動き出す

僕の内側の影が震え
鎧のようにまとっていた恐れが剥がれ落ちていく

体が軽くなる
地面の感触が遠ざかる
空気が逆流し、世界が静止する

音も匂いも消えたその中心で
ただ“影”だけが、確かな質量を持って存在していた

その瞬間、
僕の中で、究極のパワーが目覚めたようだった

――空気が止まった
息をすれば、世界が震えていた

その時、聞こえた
――アイアム・シャドウ

それは誰かの声ではなく
僕の内側に、ずっと潜んでいた声だった

無数のハードディスクの回転音が
街中に響き渡り、共鳴し、重なり合っていく

音が最高潮に達した瞬間、世界が暗転した
闇の奥で、一筋の光が僕を射抜いた

外側の影が剥がれ
僕の身体は、原子のように軽くなっていく

そして――空間の頂点まで、突き抜けた
視界のすべてが裏返り
上下も時間も消えていく

その高みから
滑車が現れた

僕はそれに掴まり、
世界の中心へと一気に滑り落ちた

衝撃の瞬間
街全体が究極の爆発に包まれる

それは破壊ではなかった
星が生まれて宇宙に解き放たれるような
根源的な解放の閃光だった

ゼノの身体は一瞬にして霧と化し
崩れた街の中で、僕は静かに立っていた

地面には、長く伸びた僕の影があった
だが、それはもう“虚構”の影ではなかった

静かな風が吹く
新しい世界が、音もなく再起動していく

――世界は静かだった
崩れた街の隙間から、朝日が差し込んでいた

僕は立っていた
誰の命令も、誰の影響もない場所で
ただ、自分の呼吸だけが現実だった

地面に落ちた影は、もう僕の形をしていなかった
遠く、別の世界へ伸びているように見えた

――アイアム・シャドウ
その言葉が風に溶ける

力とは、壊すことじゃない
自分を閉じ込めていた虚構を
解き放つことだった

風が吹く
あの日の滑車が軋む音がした

夕日と風と記憶が、胸の奥で重なる
僕は空を見上げた
そこには、もう境界がなかった

6598

桜色と深海と、こぼれる光

11/06 00:34 更新

やさしいメロディーを
耳の奥で撫でている

深呼吸して
胸に届くほどの
手の中に残るぬくもりと
あと何度すれ違えるだろう

時計の鼓動でこぼれた音が
静かに液漏れして
感情の答えを探している

月の光に照らされる影が
夜の波を手のひらに受けとめる
透明になったグラスの底で
過ぎた季節の音が
静かに流れていく

ぬるい人生を踊って
真っすぐな空を飛ぶ
鳥の羽が運んできた夢の断片を
拾い集めている

桜色に冷たい青が混ざるように
思い出と現実の狭間で
落ちてきた花びらが
指を絡めて眠る

ノイズの中で叩くやさしい音色を
胸に押し当てるように聴いている
汚れた毛布を洗うように
自分を抱きしめる夜がある

ひとりに溺れる海を渡って
まだ正体不明の人生のままで
カーテンの隙間の光に触れた瞬間
僕はまた
深海の静けさで息をしていた

6598

ゆれと鼓動と、残りの1ページ

11/04 01:17 更新

いつもの道を歩いていると
心がゆれる時がある

誰かの一言が
時間をトリップして
ビートの中で泳いだ記憶に触れた時

踏切の信号で消えていく
あの日の風の匂いで
ふいに季節の終わりを感じた時

残りの人生の1ページをめくって
優しさに触れた瞬間
もう一度、生きたいと思うことがある

ダンボールが重なる静かな部屋で
響く音で震える夜
それでも
そのゆれを抱きしめて

土砂降りの雨の中 真っ直ぐに
ゆれる心が
世界をやさしく撫でる

雲の隙間から流れる音
僕はただ
そのリズムに身を任せるだけ
感じるままに
地面からの響きを
体で受け止めるように

ノイズさえも味方につけて
素直にゆれればいい
眠りの森でソファに倒れても
夢の中で薔薇を咲かすから

鼓動のようにゆれる想いを
音に変えて
息のようにやわらかく
あなたの中で
火をともす

6598

反逆と左目と、押し入れの秘密基地

11/02 01:36 更新

――子供の頃、押し入れの中にダンボールを置いた
そこで僕は、秘密基地を作っていた

その狭い箱の中から覗く世界が、なぜか好きだった
光と影のあいだに身を潜めて
テレビの向こうの世界を見ていた

誰かが笑い、誰かが泣いていた
けれど僕は、その中に入ることはできなかった

暗闇と光の狭間にある景色は、静かで美しかった
まるで僕が存在しない世界で
物語だけが動いているようだった

それでも、心の奥で願っていた
いつか自分も、あの世界の中で
物語を動かす側に立ちたいと

――時は流れ、僕は早朝のモノレールに揺られていた
海の上を滑るように走る電車の窓に、疲れた顔が映る

名刺には「役職者」と書かれているのに
その肩書は、鎧というよりも鎖に近かった

敗戦した兵士のように、責任だけを背負い
誰かの成果を支えるための歯車になっていた

早朝の誰もいない事務所で作業着に着替え
広い館内を巡回しては、誰にも見えない戦いを終わらせていく

眠い目をこすりながら
フードコートの片隅で、無理難題を整えた資料を作る

正しいことを言うほど、自由を奪われていくこの世界で
僕の中の沈黙が、静かに自由を求め始めていた

やがて気づく
この静かな日常こそが
僕の反逆を育てていたことを

――僕は「エリア11」と呼ばれる場所にいた
そこでは、人は名前を失い
番号で呼ばれ、監視されて生きていた

十一番目に占領された地
軍事勢力「Reign(レイン)」の旗が
空を切り裂くように翻っていた

自由という言葉はもう、誰も口にしない
けれど、僕の中だけで
その響きが静かに息をしていた

そんなある夜
夢の中に、一人の女性が現れた
白い髪が風に流れ
永遠の命を持つ彼女は
瞳の奥に、時間の流れを閉じ込めていた

彼女は言った
「この世界を変えたいなら――
 立ち入り禁止区域へ行きなさい」

目が覚めても、その声が離れなかった
夜が明け、街が光を取り戻す頃
僕はひとり、決めていた

もう一度、空を見上げよう
誰の命令でもなく、自分の意志で

――今日がその日だった
立ち入り禁止区域へ向かう
前日から装備は整えてある
Reign(レイン)は僕の動きを
すでに察知しているかもしれない

もう、家に戻ることはないだろう

夜になった
空には満月が浮かび、雲がゆっくりと流れている
街の外れ、かつての研究施設跡に立つ廃墟へと足を向けた

崩れた壁の奥に、遺跡のような建物が見えた
「あそこに何かがある」
僕は小さく呟いた

スコープを装着し、身を低くしてフェンスを越える
視界に映るセンサーの光
蜘蛛の糸のように張り巡らされた罠
一度でも触れたら、終わりだ

息を潜め、影と影の間を縫うように進んだ
冷たい風の中で、鼓動の音だけがやけに大きく響く

奥へ進むと、広い空間に出た
そこには、巨大な球体の機械がひとつ
鋼鉄の殻に覆われ、表面には「DANGER」の文字
そして、ひとつの開放ボタン

中には毒ガスが入っているかもしれない
けれど、もう迷いはなかった

――僕はボタンを押した

装置が低く唸り、振動が走る
球体に亀裂が生じ、液体が流れ出した
その中から、ひとりの女性が現れる

夢で見た、あの白い髪の女性
眠るように、静かに漂っている

近づいた瞬間、心の中に声が響いた

「私は契約を果たせる者を探している」
「この永遠の呪いを、解き放って」

彼女のまぶたがゆっくりと開く
その左目が淡く光り、
次の瞬間、僕の意識に彼女の声が流れ込んできた

視界が白く染まり、世界が止まる
悲鳴、祈り、怒り、願い
無数の意識が渦を巻き、僕の中に流れ込む

気づくと、彼女の姿は消えていた
代わりに、僕の左目が疼いていた
壁が僕の視線に呼応して、赤く光っている

「自由を取り戻すための反逆」
「その力で、大切なものを取り戻して」

天井から響く声
光が消えたあと、残ったのは
胸の奥で脈打つ、見知らぬ力の気配だけだった

――その時、外から装甲車が走ってくる音がした
入口の扉の隙間から外を見る
夜が明けて、光が差し込んでくる
押し入れの秘密基地から外を見るような錯覚に陥った

Reignの部隊が、廃墟を包囲していた
彼らの視線が、僕を正確に捉えているのがわかった
装甲車から兵士たちが降りてくる
銃口が一斉に僕に向けられる

心臓が高鳴り、左目が熱を帯びて光った
光が鳥のように、兵士たちへ向かって飛んでいく
兵士たちの動きが止まり、
僕の意識と彼らの意識が重なった

この力は、人を絶対服従させる力だった
兵士たちは今、僕の思い通りに動く

僕は命令のように、言葉を放った
「ショックガンで……撃ち合え」

兵士たちは互いに銃を向け、
引き金の音が、冷たい空気を切り裂く
叫びもなく、気絶して崩れ落ちていく兵士たち

頭をよぎった
この力を使えば、僕は押し入れの秘密基地から飛び出して
物語の主人公になれる

ふと手を見ると、血ではなく赤い光が揺れていた
この力は、自由のためのものなのか
それとも、破壊のためのものなのか

左目の赤い鳥が、行先を探していた

――その時、廃墟の建物に警報が鳴り響いた
轟音がしたかと思うと、倒れた兵士たちの向こうに
Reignの特殊部隊が、何十人も並んでいた

強力な兵器が僕に向けられる
僕は左目から、赤い鳥を兵士たちに向けて放った
兵士たちは撃ち合い、次々と倒れていく

視界が赤に染まり、世界が歪んで見えた
僕の目は、暗闇の奥を見つめていた
彼らの記憶、恐怖が光となって
僕の意識に流れ込んでくる

意識と意識が混ざり、境界が崩れていく
いくつもの光が混ざり合い、やがて透明になった

「……ゼロ」
「あなたは無色透明のゼロよ」

あの女性の声が、心の中で響いた
無色透明になった僕は
自分に番号がないことに気づいた

「僕はゼロだ」

兵士に向けていた赤い光を
僕は、自分に向けて放った

赤い鳥が具現化し
僕を背中に乗せ、大空へと連れていく

「エリア11」が、遠く下に小さく見えた
「与えられた運命」「生まれた立場」「人としての限界」
すべてに抗うために
僕は、左目の光を他人ではなく
自分に向けた

自分で自分の意味を決めること
それが、僕にとっての呪いを解くための「反逆」だった

――彼女から受け取った「反逆」の力は、
闇にも、光にもなった

世界は決して綺麗じゃない
それでも、誰かを想い
抗い、選び続ける人間の姿は、美しい

選び続けた意志の光が重なり合い
無色透明の、名もなきゼロとなって
世界をわずかに動かした

押し入れの中で願った、“物語を動かす側”に
僕は今、現実の中で、静かに立っている

――この胸の奥で、まだ赤い鳥が羽ばたいている

6598

タイタンと震える風と、忘れられた光の遺跡

10/30 23:38 更新

シャワーの雫に錆びついた
開かない窓の向こうで
置き去りの名も知らぬ花が揺れていた
あの頃と同じ風が
同じリズムで
まだここに吹いていた

行先の決まったレールに乗って
冷たい星に映る顔
擦り切れた透明なケースの隅に
空から零れ落ちた
夢の切符をしまい込んだまま

歩いてきた足跡は知っていた
自由の鐘の残響が消えたのは
タイタンが遮る光の向こうに
旅立つことを怖れた
自分の影があったことを

泣いてもいい
笑ってもいい
不完全なままで
集めた風に身を委ねればいい

太陽がまた頭上で動き出し
影が足元へと吸い込まれていく
あの温もりが心の中に溶けていく

暗闇の湖に潜って
君の中の光を探す
誰かのためじゃなくて
ただ、自分のために

愛すべき不完全な君へ
忘れられた光の遺跡からのメッセージ
震える風の中で夢が呼吸して
僕は遊ぶように息をする

6598

気球と幻想と、曖昧な蜃気楼

10/29 00:19 更新

――子供の頃、僕の家の前の道はまっすぐで
その上の空をゆっくりと気球が流れていた
光の粒みたいに浮かんで
夕方になると色を変えていった

青から橙へ、橙から群青へ
その移ろいを見ていると
世界が静かに呼吸している気がした

いつからだろう
まっすぐだった道が歪んで見え始めたのは
空の明るさが曖昧になっていったのは

記憶のどこかで
誰かとした約束だけが
夕焼けの蜃気楼の中で揺れていた

――時は流れ、僕は早朝の田舎道を歩いていた
駅前でも十時前の田舎はほとんどの店が閉まっている
かろうじて開いていたスーパーで惣菜を買い
小さなフードコートの片隅で食べた

曇った窓に映る自分の顔が誰なのか分からなくなる
パンパンに膨れたビジネスバッグを背負い
顧客との戦いに向かう

田舎道を歩くのは好きで
顧客とのやり取りも好きだった
けれどどんなに頑張っても
成果は誰かの名前に変わっていき
僕は歯車として動くだけだった

それでも朝になるとまた歩き出していた
仕事が終わり、駅へ向かう道
夕日の光が蜃気楼のように揺れていた
歩き続ければ、あの日に戻れるような気がしていた

――実は僕は数ヶ月前、百年に一度の彗星「Libera(リベラ)」を見てから
僕の中に、相手の個性を奪う超能力が宿った
奪った個性は自分の能力になる

正確に言えば、あの彗星を見た者は誰もが
自分の中に眠っていた“個性”を
超能力として覚醒させた
ある者は重力を無視して跳び
ある者は姿を消し
ある者は時間の流れを止めた

けれどその力を扱える者はほとんどいなかった
未熟な能力者は感情に呑まれ
衝動のままに力を放ち
街ひとつを壊すほどの暴走を起こした

その力を集め、利用しようとする組織が現れた
能力者を狩り、支配のためにその力を使おうとする者たち
僕は彼らに利用される前に
能力者の力を奪い、封じることを選んだ

でも相手の能力を奪うたびに
自分が何者なのか、少しずつ分からなくなっていった

――今日も能力者を探して歩いていた
暴走する前に力を奪い、世界を壊させないために
今では能力者たちに僕のことは知れ渡り
僕は「死神」と呼ばれていた

その時、頭上の空気が震えた
反射的にシールドの能力を展開する
鋭い音と共に、何かが弾かれた
転がったのは、小さなビー玉

見上げると、気球が浮かんでいた
太陽を背にしていて、中の様子は見えない
次の瞬間、気球の端が光った
光の粒が無数に見えた

ビー玉が再び飛んでくる
連続する衝撃、シールドがいくつも光を弾いた
明らかに上からの狙撃だった

物体を操るサイコキネシス
銃弾の代わりにビー玉を使っているのだろう

僕は跳躍の能力を使って、気球へと跳んだ
風を切り裂き、縁に手をかけて覗き込む
そこには、一人の少女がいた

まだ幼さの残る顔
その手が震えながらも、僕を狙っていた
恐怖ではなく、決意の目で

少女が再び手をかざした瞬間、僕は視線を合わせた
意識がぶつかる

僕は目を光らせた
能力を奪う力が発動する

世界が一瞬、無音になった
少女の力が僕の中に、光の粒子のように流れ込んでいく
その場に彼女が崩れ落ちた

――気球から少女を抱きかかえ、ゆっくりと地上へ降りた
見上げると、夕焼けの空に誰も乗っていない気球が漂っていた
太陽の光が滲み、蜃気楼のように空間が歪んでいる

その瞬間、空からビー玉が降ってくるのが見えた
けれどそれは現実ではなかった
少女の記憶が、僕に幻想を見せていた

幼い真っすぐな心が、強すぎる力を持ってしまった
そして大人たちに利用された
その映像が、僕の中で繰り返される

意識が遠のく
能力を奪った後は、いつも一定時間、思考が霞む
その時、背中に激痛が走った

振り返ると、ボウガンを構えた男がいた
「死神のお前を倒せば大金が貰える」
次々と放たれる矢
朦朧とする意識の中、僕はその矢を体で受けた

地面に倒れ、空を見上げる
蜃気楼のように歪んだ空が、僕の意識とリンクしていく
まっすぐだったはずの空が揺れている
その歪みの中で、自分が何者か分からなくなっていった

――遠のく意識の中、目の前で「ドン」という音がした
ビー玉だった
空から無数のビー玉が降ってくる

幻想ではなかった
隣で、少女がサイコキネシスを使っていた
あの気球の中にあったビー玉を、地上に降らせている

ボウガンの男に次々と命中し、男は倒れた
その瞬間、僕は理解した

――僕が能力を奪った時に、少女の記憶だけじゃなく
僕の記憶も、彼女の中に流れ込んでいたのだ

僕が成し遂げようとしていたことを
彼女は感じ取って、助けてくれたのだろう

奪ったはずの力なのに、なぜ彼女は使えたのか
その答えは分からなかった

ただ、真っすぐな心が
曖昧な蜃気楼の空に
あの日の約束を光の粒として呼び覚ましたのだと思った

その約束が何だったのかは、もう思い出せない
けれど確かに、誰かを守りたいと思っていた

子供の頃に交わした「あの日の約束」は
言葉にも記憶にも残らず
ただ“心の奥で感じる”ものだった

――気がつくと、世界は静かだった
風の音も、人の声も、すべて遠くに消えていた

掌の上で、ビー玉が微かに光っている
その光を見つめていると、胸の奥が温かくなった

立ち上がると、景色が揺れていた
どこかで見たようで、どこにも繋がらない

名前を思い出そうとしても、言葉が出てこない
けれど、不思議と怖くはなかった

心の奥に、確かな温もりが残っていた
それは誰かの笑顔のようで、夕焼けの光のようだった

ビー玉の光が揺れていた
青から橙へ、橙から群青へ
あの日の空と同じ色に溶けていく

――もう、戦わなくていいよ

その声が風の中で響いた気がした
まっすぐな道はもう見えない
けれど、今なら分かる

僕はきっと、またあの空の下で
誰かを守りたいと思うだろう

6598

夜空と川と、流れるオレンジ

10/26 00:00 更新

ふと揺らぐ鼓動が
自由なあなたを求めて震えた

星が見えない夜に
オレンジの火を灯す
霧の中を探るように手を伸ばす
それは温かく
幻想の中の祈りだった

深く吸い込み、ゆっくり吐く
呼吸のあとに舞う煙
悪戯な優しさを描いた運命が
子供のように微笑む

砕けた硝子の欠片を拾い集め
修復の魔法をかけてみる
それでも元の形には戻らない
掌の中で光る
ひとつだけ残った透明

仮想の海で目を閉じて
あのメロディーを探した
広がる宇宙の距離のまま
それでも僕は手を伸ばした

グラスの中に映る笑顔の裏で
ソファに眠った感情を隠す
忘却の城に背を向け
風を抱くように立ち上がる
ひまわりが 太陽を見つめるように

回り続ける針の音が
静かな夜を裂いていく
掌に残った透明の答えを探して
あの日と同じように
手探りで光を求めた

暗闇の中でも 星が見える夜
オレンジに揺れる感情が
太陽の匂いを呼ぶ
形のないものを抱きしめて
夜空から 川が流れていく

6598

観測と回転と、想いのビート

10/24 05:06 更新

子供の頃、近くの公民館にプラネタリウムがあった
真っ暗な空間に 星が浮かび上がる

僕はこの静かな世界が好きで
何度も 何度も 通っていた

上映の終わりが近づくと
天井の星が ゆっくりと回り出す
座席ごと 世界が動いている気がして
飛ばされないように 必死に しがみついた

他にも観客は居るはずなのに
回転の中で 僕だけが 取り残されているようだった

不思議で こわくて
それでも目を離せなかった

――時は流れ
僕は会社員として生きていた

地下の小さな事務所
窓もなく 時間もわからない世界
カビの匂いと空調の風だけが
日々の境界を曖昧にしていく

誰も居ない古びた座席に座り
机に積まれた書類と向き合いながら
天井を見上げる

照明は薄暗く
太陽を感じられないこの部屋は
朝と夜の区別がなくなっていた

そんな中で
胸の奥に光る何かを僕は探していた

――実は僕は
仮想空間〈エンゼル〉のバグを観測して
正常に戻す、観測修復士の仕事をしていた

観測修復士と呼ばれるその役目は
壊れた世界の“ゆがみ”を見つけ
元の形へ修復することだった

エンゼルの住人たちは
現実ではなく仮想空間の中で生きている

彼ら彼女たちは
現実で「理不尽」「絶望」「やりきれなさ」を抱え
人生をやり直そうとして エンゼルに来たのだ

仮想空間はプログラムのようなもの
バグが生じると 世界そのものが歪んでいく

不思議なことに エンゼルが誰に作られたかは誰も知らない
ただ もう一度 “生きる意味” を探したとき
人は呼び寄せられるように ここへ辿り着く

そして最近 このエンゼルでは
バグの頻発と共に 住人たちが次々と消える事件が起きていた

――エンゼルの世界に 何かが起きているのは確かだった

――その夜、いつものように
エンゼルの監視データを確認していた

ノイズがひとつ、波形の端で跳ねた
次の瞬間、連鎖するようにノイズが走る

監視画面には「lost(ロスト)」の文字が
嵐のように横へ流れていく

ロスト――それは、住人たちの消滅を意味していた

異常事態を察知した僕は
危険を承知で、仮想空間へと侵入を決めた

仮想移行用の座席に座り、目を閉じる
あの日のプラネタリウムのように
世界が回り出す感覚が襲う

光が反転し、重力が消える
僕は必死に座席にしがみついた

――気づくと、エンゼルの内部にいた

空間は静まり返り、
どこからともなく風が流れた

その中心に、少女が立っていた
長剣を握り、沈黙のまま僕を見据えている

喋りかけようとした瞬間、
剣が閃き、僕の胸を貫いた

視界が白く飛び、
音も光も遠のいていく

――気づくと、僕は学校の体育館の壇上の前に立っていた
周囲を見渡すと、数名のエンゼルの住人たちがいた

「やあ、君も卒業しに来たのかい?」
ひとりの住人が微笑んで言った

「じゃあ、この卒業証書を壇上でみんなに渡してくれないか?」
もう一人が僕に手渡してくる

その瞬間、僕は気づいた
彼らは、この世界から前へ進むために
戦いをやめ、感情を受け入れ、
“これまでの痛みとありがとうを言葉にして前へ進む”
――そんな儀式を行っているのだと

僕は壇上に上がり、証書を読み上げた

「卒業おめでとう」

卒業証書を受け取った者たちは
優しい顔をして、ひとり、またひとりと光になって消えていった

全員に証書を渡し終えたとき
広い体育館から人の気配が消えた

その静寂の中、
奥の扉がゆっくりと開き、
あの少女がこちらへ歩いてきた

――少女は僕の目の前で立ち止まった
長剣はもう握っていない

そして少女は ゆっくりと僕の手を握った

「やっと見つけた」
「本当にありがとう」

少女は言った

続けて 彼女は語りはじめた

――僕はバスに乗っていた
運転手の不注意で 崖下へ転落する事故が起きたという
僕はそこで命を落とし
少女も重傷を負い 病院に運ばれた

僕の心臓が 彼女に移植されたことで
少女は生き延びた

仮想空間〈エンゼル〉は
少女が僕に「ありがとう」を伝えるために作った
精神世界だった

少女は静かに微笑み
手にしていた白い紙を 僕に差し出した

「これでお別れね」

その言葉と共に
彼女は 光の粒となって消えていった

手の中に残った白い紙を見つめる
そこには たった一行だけ文字が書かれていた

――「卒業おめでとう」

――街角を歩いている
風にまぎれて 懐かしい旋律が聴こえる

一人の女性が 僕の横を通り過ぎた

長い髪が風に揺れ
その横顔が どこかで見た気がした

どこかで 彼女を知っている気がした
その確信に導かれるように 僕は振り向いた

エンゼルとは 誰かの「ありがとう」を形にした世界だった
理不尽や絶望を抱えた心が 最後に辿り着く“修復の場所”

僕は長く 痛みを消すことが修復だと思っていた
けれど本当の修復とは
痛みの中にある想いを受け入れ
“ありがとう”と共に次へ繋ぐことだった

消えた住人たちは きっとそれぞれの現実で生き続けている
彼らの中にある光の粒が
誰かの胸でまた新しい鼓動になるのだろう

ふと あの日のプラネタリウムを思い出す
天井の星が静かに回り
世界がゆっくりと息づいていた
あの回転は 宇宙ではなく――心の中で続いていたのだ

僕の役目は終わった
けれど 誰かがまた傷つき もう一度生きようと願うとき
エンゼルはきっと再び起動する

――修復とは 終わりではない
それは “想いの循環”という名の再起動だ

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