Web予約/24時間OK 電話受付/10:00~22:00
女性用風俗 日本最大級の女性専用性感マッサージ【大宮 萬天堂】
大宮の女性用風俗なら【大宮萬天堂】

MENU

写メ日記

全125件中11~20件を表示

龍生の投稿

火山灰と雪と、可能性の蓋

08/24 21:08 更新

──子供の頃
僕の住む町では珍しく
昼間の空から火山灰が降ってきた

暑い日差しの下に舞い落ちる灰は
まるで雪のようで
どこか美しかった

その中に一つだけ
キラキラと光る灰があった
手に取ると温かく輝き
すぐに消えてしまった

あの頃はどんな出来事も新鮮で
僕は自分がなんでもできると信じていた
だが大人になるにつれて
火山灰が積もるように
僕は可能性に蓋をしていった

──大人になった僕は
公園の中にそびえる立派な建物で働いていた
数日後に控えた大型イベントのため
周囲は豪華な電気装飾で飾られた

だがそれは
偉い人たちの無理な命令で組まれた
かなり無理をして設営された装飾で
電気容量を最大まで使っていた
ちょっとしたことで不具合が起きるのは
目に見えていた
最悪の設営だった

朝礼では
マネージャーたちの無意味な演説が延々と続く
「従うことが正義」
そう思い込むほどに
僕の感覚は麻痺していった

──そしてイベント前日
大雪が降った
装飾の半分が点灯しなくなる
他の作業員はみんな別案件で出払っていて
現場に残されたのは僕ひとりだった
凍える雪の中
素手で配線を探り続ける

「早く直せ、終わるまで帰ってくるな」
トランシーバーから怒号が飛ぶ
体の感覚は薄れ
手は氷のように固まり
やがて高所から足を滑らせた

激しい衝撃
足を負傷し
トランシーバーも壊れる
連絡は途絶え
雪の中で息が荒くなる
意識が暗闇に沈んでいく

──その時
空から一片の光る雪が落ちてきた
子供の頃に手にした
光る火山灰のように

それを手に取ると
あの日の記憶が蘇る
「なんでもできる」
そう信じていた自分が
胸の奥で再び目を覚ました

次の瞬間
壊れていたトランシーバーが復活し
仲間の声が聞こえてきた
僕は助けを呼び
救助された

翌日
修理できなかった装飾の責任は
偉い人と責任者へと降りかかり
僕は静かにその場所を去った

──今でも
子供の頃に見た火山灰の出来事をネットで調べても
どこにも記録はない
だが僕の中では確かに残っている

あの光のおかげで
僕はいつでも
積もった火山灰を払い
雪の冷たさを超えて
「可能性の蓋を取る」ことができる

限界の中で思い出すのは
あの時、手のひらに触れた
小さな光
それがある限り
僕はこれからも
まだ見ぬ未来を
自由に描いていける

6598

仮面と銃と、夕焼けの空

08/23 01:11 更新

──小さい頃、公園に屋台がやってきた
仮面の型枠にねんどを流し込む
うまく固めればポイントがもらえて
豪華賞品と交換できるという
謎の遊びだった
子供たちは群がり
僕もまた時間を忘れて仮面を作った
その横で、夕焼けの空はやけに綺麗だった

──大人になり
会議室に並ぶ顔もまた仮面だった
不自然な笑みを貼り付けた
マネージャーの彼は言った
「入札に勝てば君も昇進だ」
だがわかっていた
昇進するのは彼であり
僕はただの兵隊であると
揉めたくないから
「なんとかします」と言い残し
仮面の群れから抜け出した

社会に出て気づいたこと
仮面を被ったやつらは
利益のためなら平気で人を踏み台にする
だが僕は
その仮面の奥を見抜く眼を持っていた

──もうひとつの顔
潜入捜査のハンターとしての僕
依頼屋から持ちかけられたのは
麻薬密売の阻止依頼
「君ならやれるだろう」と差し出されたのは
狙った獲物を決して外さない銃
“ジャッジメント・ガン”
照射レベルを自在に操れ
数秒のバリアすら展開する
だがその時すでに
依頼屋の笑顔の奥に
あの仮面の違和感を感じていた

港の倉庫
闇の中に浮かぶアタッシュケース
麻薬の束を確認した僕は
銃を最低照射レベルに切り替え
閃光の連射を浴びせる
密売人たちは次々に気絶し倒れた
トランシーバーで合図を送ると
特殊部隊が一斉に突入し
場を制圧していく──そのはずだった

依頼屋が背後に現れる
やはり、あの仮面の笑み
僕の寒気は正しかった
咄嗟にバリアを張ると
彼はジャッジメント・ガンを最大照射にし
無差別に連射した
倉庫にいた全員が崩れ落ち
立っているのは僕ひとり

「気付いていたか」
「お前のその銃は、私を撃てないよう顔認証で設定してある」
冷たい声が響く
僕は小さく笑い返す
「だろうな…」

その瞬間
上着の奥から隠し持っていた小型の銃を抜き放ち
弾丸を撃ち込んだ
仮面の笑みは砕け落ち
静寂の中で僕は呟いた
「仮面は欺くためにあるんじゃない
 遊ぶためにあるんだ」

──翌日
入札額を下げた資料を提出し
ほどなく会社を去った
噂では、無理な数字で通した案件は破綻し
マネージャーは降格したという

子供の頃、仮面を作りながら見た夕焼け
その色は今も変わらない
仮面の群れに飲まれず
自分の道を刻み続ければ
あの夕焼けはいつだって
綺麗に映るはずだ

そしてその先に広がる自由の空へ
僕は今日も
時間を忘れて歩いていく

6598

箱舟と雨と、アーチを描いた棚

08/21 23:03 更新

アルバート・アインシュタインは言った
「想像できることが未来を創る」と

──子供の頃
自分の部屋で段ボールの箱舟を作った
完成させるのが楽しみで
胸を高鳴らせて帰宅すると
そこには大きな本棚が置かれていた

箱舟は押し潰され
本棚の後ろに追いやられていた
立派な棚に並んだのは
漫画本ばかり
やがて漫画本は重さに耐えられず
棚ごと歪んでしまい
なぜか怒られて、半分以上捨てられた

机の上にはびっしりと貼られた
勉強のスケジュール表
僕の心と棚は同じように
アーチを描いたまま
箱舟は闇に隠れた

──時は流れ
試験会場に座る僕がいた
国家資格はこれでいくつ目だろう
手応えはある、だが
手応えのない虚しさが残る
読んでいる本といえば
ほとんどが試験用の参考書だった

空想の世界は役に立たない
お金にもならない
そう言い聞かせながら

──仕事の現場
大型物件の構造調査
屋上から地下へと降りていき
最後の危険な作業にあたる
誤れば一気に水が流れ込み
地下は溺死の棺となる

指示を出す僕のトランシーバーが不調をきたす
次の瞬間、防壁扉が作動
怒涛のような水が流れ込む
「間違って押しやがった!」
叫んだ時にはもう遅い
轟音と共に水が押し寄せ
空気は薄れ
視界が闇に沈んでいった

──気づくと
僕は外に立っていた
空から豪雨が降り注ぎ
川は氾濫し
足元を飲み込もうとしていた

「ここは……山のふもと?」
必死に駆け上がる
頂上には一軒の家が見えた
「僕の実家だ……」

扉を開けると
そこには見覚えのある本棚があった
立ち尽くした僕の脳裏に
ひとつの記憶が蘇る
──本棚の後ろに
段ボールの箱舟があるはずだ

子供の頃は動かせなかった棚
全身で押すと
軋む音と共にわずかに動いた
そこに、確かに箱舟はあった

豪雨の中、外へと持ち出す
絶対に沈むはずの段ボールの舟
だが僕が乗り込んだ瞬間
箱舟は光に包まれ
近代的な巨大な船へと変貌した

激流を切り裂き
山を滑り降り
水飛沫と轟音の中を突き抜けていく
僕の身体は再び気を失った

──目を開けると
サプライヤーたちが僕を囲んでいた
「生きててよかった」
どうやら僕は地下の高い鉄筋にしがみつき
奇跡的に水を免れたらしい
普通の人間じゃ到底登れない高さ
皆が驚いていた

あの時の箱舟は幻だったのか
それとも本当に未来から来た船だったのか

ひとつだけ確かに言えるのは
僕は再び漫画やアニメを手に取ったこと
まだ名もない物語を始めるためには
誰も思いつかない想像をして
それを形にすることが必要だと
あの箱舟が教えてくれたからだ

──想像できることが未来を創る
それはアインシュタインの言葉であり
そして今の僕の、生きる物語でもある

6598

不自由と光と、自由

08/21 05:47 更新

星が輝く夜に
腕の中へと舞い下りたギフト
その瞬間、心に風が吹いた

抱きしめるとあたたかく
閉ざしていた扉の奥に眠る
“本当の自分”を目覚めさせてくれる

その存在は
美しく、太陽のような香りをまとい
不自由の中で輝く
ひとつの自由だった

ひとりで奏でていた旋律は
ふたりになり、複雑に重なり合う
響きは深まり、鼓動と共鳴し
川はやがて海へとたどり着く

守るべき光があると知った時
自由の風は激しさを増し
遥か遠くまで飛んでいった

地面に溜まった雫は
夜空を照らし
また誰かの“本当”を映し出すだろう

その光に触れた瞬間
隠していた影も淡く溶けていく
弱さも強さもひとつの色となり
胸の奥で静かに灯り始める

広がった灯りは波紋のように揺れ
まだ見ぬ誰かの心を照らす
風は重なり、やがて大きな流れとなり
空はひとつに繋がっていく

6598

地ならしと絶望と、始まりの空

08/20 19:08 更新

「地ならし」
本来は地面の凸凹を均す作業のこと
だが強大な力を持てば
大陸も文明も平らにしてしまう破壊の象徴となる

──階段の下では
いつも息苦しい言い合いが続いていた
明日は学校なのに眠れない夜
「当たり前」を押し付け合い
心の壁は、気づけば空まで届くほど大きくなっていた

大人になっても壁は消えなかった
世間に合わせるために
自分を削って、壊して、形を変える
「いっそ一からやり直せたら」と思いながら
誰かが壁を壊してくれる日を
ただ待っていた

その時ふと見上げた空には
一羽の鳥が自由に翼を広げていた
その姿は遠く、けれど確かに
心の奥に刻まれていた

──ある日
田舎にある巨大研究所へ
外壁調査の仕事で派遣された
果てしなく続く壁を見上げて
「巨人でも入っているのか」と呟く
圧倒されながらも責任者に挨拶をする
その隣にいた影を帯びた少女
僕は直感で「同じ匂い」を感じた

午後の作業を終え、休憩所で再び出会う
少女は静かに言った
「壁を壊して世界を平らにできる」
馬鹿げているはずなのに
その瞳の奥に揺れる光に
僕は耳を傾けていた

「どうすれば?」
「世界に絶望すればいい」
少女の声は刃のように鋭く
同時に、僕自身の影を映す鏡だった

僕はその手を取った
祈るように、願うように
瞬間、光が溢れ出し
外の巨大な壁が崩れ落ちる
中から無数の巨人が目覚め
地鳴りと共に行進を始めた

大地は震え、街は踏み潰され
悲鳴が重なり、建物は瓦礫となり
地面はどんどん平らになっていく
これが望んだ世界なのか──
僕は唖然とした
止めなければと思っても
身体は動かない

その時、空にあの鳥が舞っていた
見上げた瞬間、身体が光に包まれる
気づけば僕は、その鳥の背に乗っていた

巨人たちの頭上を駆け抜け
少女のいる中心へと飛び込む
巨人の腕をすり抜け、轟音の中を突き進み
少女の手を掴んで鳥の背に引き上げた

ふたりで空を飛ぶ
見下ろせば、壁も道もない
ただ遠くまで広がる自由な景色があった

「こんな景色があったんだ……」
少女が呟く
その声はやわらかく
邪悪な影は消えていた
巨人たちの行進は静かに止まり
大地には新しい風が吹き始めた

──本当の自分を隠す必要はない
心に強い想いがあれば
空をいつでも飛べる
自由を求める時
心に眠る巨人が目を覚まし
当たり前の世界を踏み潰して
理想の未来へ進む力となる

今、鳥の背に揺られながら
僕は初めて
壁の向こうの空を
真っ直ぐに見ていた

6598

水面に広がる花の音

08/19 11:07 更新

朝の水面に
花びらがひとひら落ちてゆく
広がる波紋は懐かしい香りをまとい
胸の奥まで染み込んでいった

波紋をたどり歩いていくと
淡い光に滲んで現れた
静かに目を奪われる、美しい人がいた

その笑顔は静かで
どこか遠い影を抱えているようで
同時に、やわらかな温度を放っていた

貸し切りの小さな部屋に響く共鳴の音
振動がふわりと触れるたび
心は少しずつほどけていく
前よりも深く、言葉を交わし
互いの中に流れる波の形を確かめ合った

テーブルに置かれたのは
冷たく甘いアイスショコラ
それはただのデザートではなく
過去の痛みをやさしく溶かし
未来への切符に変わるようだった

再び歩き出す時
水面に光る波は空へと舞い上がり
まだ見ぬ誰かの胸へと届く
必要とする人のもとへ
やさしく降りそそぐように

6598

地下とサークルと、最後に立つ者

08/18 01:18 更新

Last Man Standing(ラストマン・スタンディング)
倒れても倒れても、最後に立っていれば勝者
強さとは「一度も倒れないこと」じゃなく
立ち上がり続けることだと、誰かが言った

──現実の僕は
転勤先の職場で、所長の説教を聞き流していた
「白を黒と言え」
そうすれば波風は立たない
地元に帰れるその日までの辛抱だと
いつも心に言い聞かせ、椅子に深く腰を下ろしていた

休日、地下の闘技場へ向かう
ここでは賞金を懸けて技を競い合う
審査員のジャッジで勝敗が決まる世界
僕の番が来る
胸が潰れそうなほど緊張し
体は動かず、時間だけが過ぎる
次の瞬間、ライバルの一撃で床に沈んだ
練習の日々も意味を成さず
「僕には才能が無い」
そう思いながら眠りについた

──翌日
課長と所長に呼び出される
課長は、僕を騙してこの職場に飛ばした張本人
「君をここでリーダーにする」
「地元に戻れるのは数年先だろう」
1年以内と言われていたはずの約束は、あっさり覆された
反論すれば地獄が待つとわかりながら
僕は「光栄です」と答えてしまった
弱いままの自分が、そこにいた

会社の帰り
公園で子どもたちが下手くそなキャッチボールをしていた
それでも笑い声は夜に響いていた
──いつから僕は
弱さを隠すことに怯えるようになったのだろう

闘技場に戻った
全身を震わせながら輪の中心に立つ
全国に名の知れた強豪たちが睨んでいる
心臓は爆発しそうだった
僕の番が来る
もう格好つけるのはやめた
自分の弱さを曝け出した

動きは乱れ、けれど熱は途切れなかった
時間を過ぎても、審査員が止めに入らないほど
会場を揺らす動きが続いていた

結果は──そんなに甘くない
あれほどの状況でも、勝敗は「負け」だった
でもその瞬間、僕は確かに「最後まで立っていた」

──翌日
課長がいつものように偉そうに話し始めた
「あの件なんだが……」
その言葉を遮り
僕は初めて口を開いた
「人を騙すことしかしないあんたにはついていけない」
「僕はこの会社を辞める」
課長も所長も固まったまま、言葉を失った

会社を去る日
所長が最後に飯を奢ってくれた
カレーの湯気の中で
「お前は生意気だったけど、一番優秀だった」
そう笑いながら拳を合わせた
バスの窓の外には、地元へと続く道
風が胸を駆け抜ける

今、僕は自由という空の下で
新しいスタートラインに立っている
強くある必要なんてない
倒れても倒れても、最後まで立っていればいい
弱さを隠さずに
胸の奥で炎を燃やしながら
未来へと歩いていく

6598

サイレンと炎と、禁断の実

08/17 11:37 更新

サイレンが鳴る
禁断の実を食べた者は
自由を失い
永遠に同じループを繰り返すという

──現実での僕は
会社員を辞め、自分にしか出来ないことを探していた
誰でも出来ることを選べば
また組織という渦に飲み込まれる
試行錯誤の中で
唯一無二の形に近づきつつあった

ある日、取引先の偉い人から
「成功者が集まるコミュニティ」に誘われた
数千人のメンバーがいるという
右を向けと言われれば、右を向く世界
会社と何が違うのか──
そう思った時
どこからともなくサイレンが鳴った気がした

帰り道
道端に燃えるように咲いた赤い花
その花びらを一枚
ポケットに忍ばせた

──翌日
偉い人からの電話
「参加しなければ、取引は難しい」
禁断の実を差し出されているのだと思った
その瞬間、再びサイレンが響いた
身体の力が抜け
気づけば、あの勉強会の会場へと吸い寄せられていた

近代的なビルの会場
椅子に腰を下ろしたその時
耳を裂くような大サイレンが鳴り響く
参加者たちの身体が歪み、溶け、
次々と屍人へと変貌していく

「俺も同じなのか」
絶望が胸を覆ったその時
ポケットの中の花びらが眩く光った
右手に取り出すと
炎となって掌に宿る
天へ突き上げると
その炎は宇理炎のように刃へと変わり
無数の火の粒が飛び散り
屍人たちを焼き尽くした

背後から、さらに重いサイレン
振り向けば
空を覆う巨大な蠅の化け物
その口から、呪いの音が放たれていた

「こいつがサイレンを鳴らしていたのか」
炎が唸りを上げ
刃の形を取り戻す
全身を駆け巡る熱に身を任せ
僕は跳躍し
蠅の怪物を両断した
炎に包まれた悲鳴が夜を裂き
ビル全体が崩れ落ちる

瓦礫を飛び越え
夜風を浴びながら外へ出る
残響のように、遠くでまだサイレンが響いていた

──思う
サイレンに導かれるままなら
楽な道もあっただろう
でも僕は禁断の実を食べなかった
呪われたループを断ち切った

右手には炎がある
宇理炎のように揺らめく光がある
それは「誰かの真似」ではなく
自分にしかできない道を照らす火だ

今、僕は
その炎を胸に抱き
まだ見ぬ未来へと歩いている

6598

ハンバーガーの失笑

08/16 00:14 更新

こんがり焼けるくらいの陽射し
坂の上から君が降りてくる

火加減を確かめるように
そっと温度を合わせた会話
口に運べば
味が少し違うハンバーガー

UFOみたいな
未確認の丸いバンズ
ひと口ごとに
こだわりとぬくもりが広がっていく

テーブルの上で弾ける笑い声
汁が垂れないペーパーが
幸せな時間をすくい上げる

たわいない話に
ハンバーガーと一緒に失笑をかぶりつく
ケチャップよりも
じんわり甘い時間がこぼれていく

言葉を流し込んだ丸い月が
目の前に浮かぶ
香るカップの向こう
君の微笑みが、湯気となって未来へ飛ぶ

駅までの涼しい道
深い森を抜け
雫が降りてくる街へ帰る

空を見上げる
ほのかに香るひかりが
夜の始まりに
静かに落ちてきた

6598

コーヒーと最中と、水面の月

08/14 22:30 更新

いつものカフェで
お気に入りのコーヒーを口にする
苦さはメロディーのように胸に響き
その香りは陽だまりの中に溶けていく

しばらく遠くへ旅立つ君は
何を想うのだろう
雲に乗せてプカプカ浮かぶコーヒーの煙は
まだ温もりを帯びて、手のひらに残っている

あの日、3センチの最中の距離で笑い合ったことも
今は遠い空の向こう
夜、窓辺で月を見上げて
冷たい風が心をかすめたら
月を映す水面を思い出そう
そこには、冷えた心をそっと温める光がある

ゆっくりとすすった一杯のように
上品で静かな時間を味わえば
道が見え、流れが変わる
贅沢で、ほっとする至福のひと時
それは夢から覚めても
記憶の奥で香りを放ち続ける

水面には、夜明けの空が映る
新しい朝は、自由の香りを乗せて
また旅を続けようとしていた

6598

© 萬天堂 All Rights Reserved.