Web予約/24時間OK 電話受付/10:00~22:00
女性用風俗 日本最大級の女性専用性感マッサージ【大宮 萬天堂】
大宮の女性用風俗なら【大宮萬天堂】

MENU

写メ日記

全125件中31~40件を表示

龍生の投稿

ひまわりとヘルメットと、答えのない部屋

08/04 04:50 更新

みんなが向かう方向に
何の疑いもなくついていく子どもだった
でも、ずっと胸の奥に
小さな問いがあった──
「本当に、これが正解なの?」

 

会社の評価のための資格勉強
興味もないページを開く手は
まるで誰かの人生をなぞるようだった

ある日、本屋の棚の隙間から
自由に旅立った、ひとりの女性の物語が
僕の心をこじ開けた

続きは、ブログにあると──
パソコンが苦手だった僕が
ブログを読むためだけに、PCを買った

ページをめくるたび
彼女の旅と、僕の時間が
同じ風の中を進んでいた

最後のページに添えられた
一枚の、ひまわりの絵

僕は、忘れなかった

 

その日、国家のインフラを支える
巨大サーバーのメンテナンスに向かった

冷たい空調の音
並ぶラックの光
5人の作業員と、張り詰めた空気

突如──
メインブレーカーが落ちた

制御装置のバグ

このままでは、列車が止まり
病院の人工呼吸器も、信号も、すべてが沈黙する

リーダーが言った
「通常作業じゃ、もう間に合わない」
──STEM(ステム)を使うしかない

脳とコンピューターを繋ぐ、禁断の装置
成功すれば一万倍の速度で処理できる
でも、失敗すれば…二度と戻れない

リーダーがヘルメットを装着した
数分後、煙が上がり──沈黙した

 

僕は、震える手で装置を被った

目の前が、闇に塗りつぶされる

──気づくと、そこは巨大な美術館
プログラムの中枢神経だった

壁には無数の絵
知性、欲望、支配、権力、名声

でもその奥に、
ひときわ柔らかな光の中で
“あのひまわり”が微笑んでいた

僕は、ひまわりに手を伸ばした

世界が崩れ、音を失い、
次に目を開けたとき──
そこは、サーバー室だった

 

すべて、動いていた

 

もう、誰かの評価のための人生はやめよう

資格では測れない道を
自分の感性で、積み重ねていこう

あのとき
あの絵の中にあったのは、たしかに
旅の続きを歩く
「自由という答え」だった

それは、地図にも記されない
僕だけの“進む方向”を
静かに照らしてくれていた

6598

月とクラゲと、自由の海

08/03 01:43 更新

大粒の雨が、空をたたく
風がちぎれた雲をさらう日

クラゲが、ふわりと舞い上がる
“いまなら、空を泳げるよ”って

フクロウの秘密のトンネルを抜けて
たどり着いたのは
水のようにやわらかな、空の場所

月がぷかりと浮かんでいた
その香りは、自由だった
誰のものでもなく
でも確かに、ふたりを照らしていた

星の椅子に腰かけて
無限の時間を一緒に味わった
雲のベッドが
“振り返るな”と囁きながら
ふたりを宇宙の奥へと運んでいく

手をつなぐ言葉のリズム
交わすまなざしが
空白だった場所を
静かに埋めていく

やがて海のような空を漂いながら
あなたの感情が
頬をつたって、僕に届いた

境界に触れた瞬間、
僕はひとつの願いを受け取った
──たとえ誰かの光になっても
心の帰る場所は、ここであってほしいと

月がうなずいた
“自由とは、離れてもつながること”と

僕は返事をしなかった
けれど、手のひらのぬくもりだけは
ずっと離さなかった

6598

ポッキーとピラミッドと、風のある場所

07/31 03:18 更新

空地の砂の丘で
3対10の喧嘩がはじまった

ランドセルを放り投げて、帰り道がたまたま同じだった3人組
そのうちの1人が
ガタイのいいリーダー格に引きずられそうになった

僕は反射的に走り出し
そのリーダーに馬乗りになって
殴りかかった

でも拳は
ぬるりと力を逃していった
何度打っても、響かない

リーダーは静かに立ち上がって言った
「お前、なかなか勇気あるね」

僕はもう終わった、と思った
震える手の中で
その言葉だけがやけに柔らかく残った

リーダーは黙って仲間を連れて帰っていった
翌日、僕が助けた相手は
何事もなかったように僕を素通りした

「なんで……?」

誰も答えてはくれなかった
 

職場でも同じだった

身体の弱い女性が
毎日のように、からかわれていた

「気持ち悪いよな」
そんな言葉が
同僚たちの口から簡単にこぼれる

僕は
見て見ぬふりをしていた

ある朝──
彼女が、会社前の道で転んでいた

僕は思わず声をかけた
「大丈夫?」
肩を貸して、彼女を立ち上がらせた

「私って、嫌われてるのかな……」

彼女はそう言って、号泣した

「そんなこと、ないよ」
そう答えながら事務所に付き添うと
中で笑い声が待っていた

「え?付き合ってんの?」

僕は言った
「いい加減にしなよ」

空気が凍った

昼休み
彼女がポッキーとドライバーをくれた

それは
僕にとっての、たったひとつの“肯定”だった

 

午後、僕は
嫌がらせのように
この職場で一番やりたくない仕事を命じられた

排気塔の内部点検
高さは7メートル
命綱なし
一人で作業

今の時代に、こんなやり方があるか?

でも
それがこの職場だった

梯子を使って排気塔の中を降りていく
鉄の匂いと、熱い空気
足が震え、喉が焼けるようだった

下から──
ギィ……ギィ……と何かを引きずる音がした

振り返ると

ピラミッド型の頭を持つ
巨大で醜悪な化け物が
四つ足で、壁を這い上がってくる

その勢いで
梯子が外れる
僕の体は、宙づりになった

冷たい鉄の感触
握力が限界を超えていく

落ちれば、死ぬ

そのとき
壁の点検口が、一瞬だけ光った

ポケットの中に──
あのドライバーがあった

僕は必死に点検口をこじ開け、滑り込んだ
化け物が点検口に手を伸ばしてくる
狭い空間で僕は
ドライバーを振りかざし──突き刺した

化け物は呻き声を上げ、落下していった

 

あとで知った
あの排気塔には
点検口なんて、そもそも存在していなかった

 

僕は決意した
この場所から離れる

誰かの築いた巨大なピラミッドの中で
上を見上げながら
熱と怒号と嫉妬で満たされるよりも

たとえ
石を一つ一つ自分で積む人生でも

その上で感じる風のほうが
ずっと自由で、
ずっと心地よかったから

6598

約束と溺れる街と、あの日の改札

07/29 22:24 更新

暑い夏の日
駅の出入口で、僕は立っていた

「ここで待ってろ」

そう言い残して
父はいつも、しばらく戻ってこなかった

あとで知った
あの時間、父は
僕を置いてパチンコに行っていたらしい

誰かに見られるのが恥ずかしくて
声をかけられるのも嫌で
僕はただ、無言で立っていた

外は晴れていたけど
心の中では、ずっと台風が吹いていた

その日もまた
優しい誰かが声をかけてくれた

「どうしたの、大丈夫?」
「今はまだ無理かもしれないけど……」
「待つんじゃなくて、自分で選んで、本当に必要な人に会いに行くの」

そう言って、そっと
切符を僕の手に渡してくれた

顔をあげると
そこにはもう、誰もいなかった

 

今日、僕は
田舎の物件での会議に向かっていた

同行するのは、苦手な同僚
上司に命じられて組まされた関係だ

「今日は台風らしいですね」

彼の言葉に曖昧に頷いて
“選べないのは仕方ない”と、自分に言い聞かせる

電車の窓から見える風景が
だんだん緑に飲まれていく
まるで都会の記憶を、誰かが消していくみたいに

会議は終わり
帰りはひとり

降り立ったのは
小さくて古びた駅
改札は昔のように、切符を入れるタイプだった

3時間に1本の電車を待つ
空模様が怪しい

風が鳴る
川が溢れる
道が水に呑まれていく

逃げ道だった細い道も
音もなく、水に沈んでいった

足元まで
濁った水が満ちてきて

もう、どこにも行けない──
そう思ったその瞬間

雷鳴が響き、空が裂けた
視界が一瞬、真っ暗になる

そして目の前に──改札があった

僕はポケットを探る
そこには、あの日の切符が残っていた

迷わず、それを差し込む

 

扉の向こうで
僕は、あの日の駅に立っていた

そして
昔の“待っていた僕”が、そこにいた

僕は静かに近づき、
何も言わずに、ぎゅっと抱きしめた

「もう、待たなくていい」
「自分の心に従って旅をすれば
 本当に必要な人に、ちゃんと会える」

その言葉は
自分自身に向けたものだった

 

気がつくと
僕はまた、あの駅にいた

さっきまでの水は引き
台風は通り過ぎていた

空には、晴れ間が広がっていた

 

あの日から
僕は、誰かが決めた道ではなく
自分で選ぶ旅に出ることにした

誰かの言葉を待つのではなく
自分の意志で踏み出すことを選んだ

それが
険しくても楽しいということを

ようやく、知ったから

6598

霧と三角と、階段の向こう

07/29 01:00 更新

「自分には何もない」
そう思って、ベッドに横たわっていた

ラジオから流れる音楽だけが
唯一の外との接点だった

階段までの距離が遠い
降りた先に未来がないような気がして

それでも、
ほんの少し、自分を信じて
階段を下りた

その先には
濃い霧の世界が広がっていた

努力はしていた
でも何も変わらなかった
霧は晴れず
時だけが、ただ過ぎていった

 

あの頃
僕は現場の問題対応のため
始発で、海沿いのライブハウスへ向かう日々を送っていた

まだ誰もいない早朝
裏方の仕事を作業員と共に進める

ライブの残骸で
床はベタベタに汚れている
階段が異様に多く、息が切れる

倉庫には
三角の形をした奇妙な物体がいつも置かれていた
まるで、頭のような──不穏な何か

やがて偉そうな人間たちが出勤してくる
「まだ終わってないのか」

怒号と疲労のなかで
海と空の狭間を飛ぶように
本社へと戻っていく

毎日がその繰り返し
努力しても
誰も見ていない
誰も認めてくれない

目の前の霧は、さらに深くなっていった

 

ある日──

作業中に
突然、全照明が消えた

静寂が崩れる
何かを引きずる音が、背後から迫る

振り向くと
あの三角頭が
巨大な人間の姿になって
錆びた大剣を振りかざしていた

僕は走った
逃げた
作業員たちはどこにもいない

館内は、霧で包まれていた

べたつく床が足をとらえる
逃げ道がわからない

転んだ
すぐ後ろで、鉄が床を裂く音
間一髪でかわす

──そのとき、気づいた

階段が、ない
あの日の階段を下りたときの霧を思い出した

そして
気づいたんだ

努力をすれば報われると信じていた
でも、それは
「誰にでもできる安全な道」への努力だった

苦しいけど、正しそうに見える道
そこには、本当の自分の目的地なんてなかった

 

僕は立ち上がって
三角頭に向かって言った

「もう大丈夫
 方向は、見えた」

三角頭はその言葉に反応し
自らの剣を、自分に向けて突き刺した

霧が震えた
音が消えた

そして──
彼の姿は消えた

その瞬間、目の前に
階段が現れた

霧が晴れ、先が見える
光が射す

 

霧が晴れた世界では
頭上に、いつも太陽がある

僕の中には
誰かが描いた常識という霧を
切り裂く剣がある

あの日、怖くて降りられなかった階段
今なら──その先へ行ける

物語は続いていく
選んだ方向へ
自分の足で、はっきりと

6598

光と波と、ふたりの雫

07/28 02:16 更新

昔は
曇りガラスのようだったあの窓

けれど今日は
陽の光を受けて
透明になったガラスに
かもめが一羽、映っていた

タロットカードでも
きっと、出なかった未来

ふたりが
同じフィーリングの海の上を
すべるように、飛んでいくなんて

静かな波のリズムに包まれながら
ふたりは
同じ空気の中にそっと漂い
ただ、それだけで満ちていた

青い水面を滑り
空と海のあいだに浮かぶように

時間じゃない
言葉でもない

濃い夢だけが
美しく、雫のように
心の奥を流れていった

 

通い慣れた街並み
約束のない午後

それは、ふたりだけの物語の余白となり
都会の真ん中に
波の音を呼び込んでいた

ゆれる水の中で
心がふわりと踊り
丘の上では
風が髪を撫でた

ふたりで描いたのは
瞳の奥にある色彩

それは誰にも見えない画材で
ゆっくりと、確かに
この胸の奥に描かれていった

 

帰り道──

ふと、懐かしい声が聴こえて
曇る夜のガラスに
かつての夢が滲んでいく

光る夜景のなか
確かにそこに、君がいた

きっと今夜も
静かな夢の中で
そのまま、眠りについていくんだろう

たとえ
この静けさの先が
どこへ続いているのか、わからなくても

光と静けさと、波の記憶を胸に
ふたりで漂ったあの時間は
たしかにここに、残っている

6598

静寂と爆音と、金色の尾が駆けるとき

07/25 23:10 更新

ふたつの仕事を
同時に抱えていたあの頃──

ひとつは、会社員としての顔
もうひとつは、会社を辞めるための秘密のプロジェクト

その日、富士山が見える小さな町へ向かった
顧客のいる物件は、駅から歩いて1時間もかかる場所にあった

仲間たちは迷わずタクシーを選んだ
でも僕は、一人で歩く方を選んだ

「お前ってさ、協調性ないよな」

笑いながら放たれたその言葉を
心のどこかで気にしつつ
今日もまた、僕は一人だった

途中、大きな橋のそばに
狐色の木造の店が現れた

軒先には
おかっぱの、狐の目をした少女が立っていた

奇妙な静けさ
でも僕は足を止めなかった
“面白そうな場所だな”と
心の隅でつぶやきながら

富士山は空の近くにあって
静かで、美しかった

顧客との打ち合わせは、淡々と終わった
その直後──
電話が鳴った

もうひとつの仕事
僕が命をかけて育てていた、唯一の武器だった

独自に作ったコンテンツ
誰にもできないシステム
僕は、それを仲間に共有していた
見返りを信じて

だが
電話の内容は、裏切りだった

僕のノウハウだけが
“都合よく”抜き取られていた

“またやり直せばいい”
そう思い込もうとしても
胸の奥は、ぽっかりと穴があいたままだった

帰り道、再び一人で歩き出す
仲間たちは、タクシーに乗って帰っていった

そのときだった

──ドォン……

地の底から、獣のような咆哮が響いた
振り返ると、空が赤く染まっていた

富士山が、爆発していた

地響きとともに大地が揺れ
建物が崩れ、空が灰に飲まれていく

太陽は見えなくなり
町はパニックに包まれた

溶岩が迫ってくる
人の叫びと、轟音と、炎のにおいが混ざり合う

タクシーの屋根が、赤い津波に呑まれていくのが見えた

僕は無我夢中で走った
あの橋へ──あの道へ

だが、橋はもう崩れていた
戻る場所も、進む場所も、ない

終わった──そう思ったそのとき
目に飛び込んできたのは、あの店だった

そして、店の前に
あの少女が、まだ立っていた

「見えてるんだろ?」
「早く入りな」

声は小さかったのに
なぜか、すべての音をかき消すようだった

僕は扉を開けた

一瞬、視界が真っ暗になり──
次の瞬間、風の音と、草の匂いがした

目の前にあったのは
何事もなかったように、穏やかな風景だった

空は澄み、富士の稜線が静かに浮かんでいた

どこからか、少女の声が聞こえた

「一人で歩いてきたから、見えたのさ」
「唯一無二ってやつだね」

そのとき、金色の尾を翻しながら
一匹の狐が、遠くを駆け抜けていった

僕は気づいた

また創ればいい
また信じればいい

さらけ出して
奪われても
それでも、歩き続ければ

誰もやっていないことを
誰よりも深くやり続ければ

僕にしかなれないものになれる

それが──
唯一無二

そして今も、
僕は歩いている
あの日の続きを
富士の頂の、そのさらに先を目指して

6598

逃亡と引金と、ラストエスケープ

07/24 23:08 更新

東京に帰ってきた僕は
すべてがうまくいくと思っていた。
新しい会社、小さいけれど
そこで結果を出せば、次の扉が開くと信じていた。

スキルも経験もあった。
最初からマネージャー候補だった。
でも、それが火種だった。
嫉妬は静かに広がり、
やがて社内に悪い噂が立った。

そして、ある日。
突然、辞令が出た。

「君の給料は50%カット。現場に行ってもらう」

違法だ。どう考えても。
でも、僕は呑み込んだ。
“とりあえず”また転職すればいい。
そう言い聞かせて。

向かった先は、廃棄物処理工場。
汚物と臭気が染みつく、地下の世界。
溶鉱炉が唸りを上げる。
けれど、そこにいた人たちは
不思議なほど、みんな優しかった。

その中に彼女がいた。
黒髪を後ろで結び、
引き締まった身体に作業着を纏った現場リーダー。
どこか凛とした美しさと、
闘う者の強さを纏っていた。

「音楽は何聴くんだい?
あたしはクィーンとか、パンクとかヘヴィメタが好きだね」

「クィーンていいですよね。自由の塊みたいで」

彼女は笑って言った。
「あんた、逃げてきたんだよね。
逃げるってのは悪くないよ。
でも――逃げる方向を間違えると、地獄を見るよ」

その言葉が、深く刺さった。
そしてあの日から、
僕は夜の帰り道で
背後に“何か”の気配を感じるようになった。

ある日。
地下溶鉱炉の作業中、
その“気配”が、姿を現した。

鋼のような拳が背後から襲いかかる――
間一髪、僕はかわした。

そこにいたのは、
爛れた顔をした、3メートルはあろうかというタイラント。
巨体を揺らしながら、
怒りの咆哮を上げて拳を振るってくる。

僕は走った。逃げた。
廃棄物の山をすり抜け、
出口を探してさまよった。
でも、行き止まり。
壁を背に、拳が迫る――

そのとき。

“ドカン!”

炸裂する音とともに、
タイラントの顔面に強烈なストレートがめり込んだ。
ふっとんだその先に、彼女が立っていた。

ロケットランチャーを肩に。

「ラストエスケープ」

そして、僕の目を見て言った。
「次に逃げるのは、どっちだい?決めてきな」

差し出されたランチャーを握り、
僕は引き金を引いた。

火花と爆風――
タイラントは砕けて、溶鉱炉の中へ沈んでいった。

翌朝。
彼女の姿はなかった。
同僚に聞いても、誰も彼女のことを知らなかった。

まるで、最初からいなかったように。

でも、僕は知っている。
あれは“自由”が姿を変えて、
僕の前に現れてくれたんだと。

だから僕は辞表を出した。

もう間違えない。
逃げてもいい。
でもその逃げ道が、僕自身に正直なものであるなら――

そこは、
たしかに“未来”に繋がっている。

そしてきっとその先に、
誰にも奪えない光があると、信じている。

6598

雷雨とサークルと、正体不明の光

07/23 22:08 更新

雷が鳴る
豪雨の中を走っていた
空を見上げながら
自転車のペダルを、漕ぐ、漕ぐ

大きな公園の真ん中
木々が円を描いて囲む
静かなサークルの中心へ

フェイクな感謝ばかりを配っていたあの頃
言葉は繋がらず、
「ありがとう」が空回りする毎日
明日が来ることすら
忘れたふりをして、走っていた

そんなある日
ふと目に入った、リアルな「ありがとう」
昔の僕なら、
きっと斜に構えていたはずだった
でもあの日
あのサークルの下で
僕は、シャッターを切った

まっすぐだったはずの思いが
ゆっくりと円を描き始める
大人になりきれない僕の中で
何かが戻ってきた
「やってみようかな」と思えた、あの日

忘れていた“あの日の続きを”
未来に繋げたいと思った
君と見る景色が、
円を描くように広がっていく

そして思い出した
雷が鳴る、あの空に
確かにいた――
雲を割って弧を描く、光をまとう龍

その姿に、
僕は自分の未来を重ねていたのかもしれない

正体不明の人生
でも、流れていく
創って、伝えて、届いていく

光は、
きっとその先にあると信じて。

6598

手鏡とポケットと、暴食の6(シックス)

07/23 00:41 更新

あの頃の僕は、
始発で現場に向かい、終電で帰る日々を生きていた。
通勤時間は往復4時間、
パンパンの電車に潰されながら、
心はいつも圧縮されていた。

現場の最前線から、本社の管理業務まで。
全部ひとりでこなしていた。
でも、誰も見ていなかった。
上司たちは、成果だけを吸い上げる。
それはもう捕食だった。

支配欲と、捕食欲。
会社の中には、そんな欲が充満していた。
生き残るには、飲み込まれるか、飲み込むしかない。
そんなルールが敷き詰められていた。

ある日、管理している大型物件で
大きなイベント案件を任された。
得意分野だ。スケジュール、交渉、すべてを設計していく。

その案件に、外国からの特待生のような立場の女性が
一時的に僕の部下として配属された。
最初は期待していなかった。
だが彼女は、想像以上に仕事ができた。
指示した通りに、完璧に資料を整える。

彼女が加わってから、現場は少し明るくなった。
僕はひとりじゃなくなった。

だが、彼女の評価が上がっていくにつれて、
自分の影が薄くなっていく気がした。
苛立ちが募っていった。

そして――
ある日、6階でイベントの打ち合わせ中に、
彼女が言った。

「嫉妬って嫌ですよね。
いろんな人の助けがあって今の自分がいるのに、
“できる”っていう傲慢さが、自分を見えなくさせるんですね。」

僕は何も言えなかった。
言葉が喉の奥で詰まった。
そして、やたらと空腹を感じた。

そのとき彼女が、小さな手鏡を差し出した。
「さっき、そこで拾ったんです。」
僕は無言で受け取り、ポケットにしまった。

だが――
彼女は僕の態度に傷ついたのだろう。
強く当たってしまった日を境に、
彼女は、僕のそばから離れていった。
また、一人になった。

イベント当日。
警備員だけが残る早朝の館内で、
僕はサプライヤーたちに指示を出しながら、
照明のチェックに回っていた。

そして6階にたどり着いたとき、
フロア全体が、異様なほど真っ暗だった。

そこにいたのは、
和服を着た、背の高い女性。
こちらに背を向けて立っている。

「すみません、関係者の方ですか?」
声をかけると、彼女はゆっくり振り返った。

その顔は、闇に溶けていた。
のっぺらぼう――いや、それすらも曖昧な、影のような顔。

刹那、鋭い爪が僕に襲いかかる。
僕は逃げる。館内を、必死で。
体中が傷だらけになりながらも、
逃げ回る。

やがて、破けたポケットから
あの手鏡が、床に転がり落ちた。

化物の動きが止まった。
僕は手鏡を拾い上げ、振り向きざまに
彼女に向かって突き出す。

鏡に映ったのは、
醜く歪んだ、彼女の“本当の顔”。

化物はそれに絶叫し、
身体が炎のように崩れ落ちていった。
6階は、静寂に包まれた。

気づけば僕のポケットは、空だった。
手鏡はもう、残っていなかった。

そうか――
僕は、6番目の罪に取り憑かれていた。
嫉妬という名の闇に。

会社という名の船。
そこには、暴食と支配の匂いが満ちていた。
知らぬ間に僕も、
誰かを飲み込もうとしていた。

だから僕は、
その船を降りた。

暴食が集うその船から
空っぽのポケットで駆け出して
今は、風を感じながら
自分の感性を翼にして飛んでいる。

6598

© 萬天堂 All Rights Reserved.