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写メ日記

全82件中1~10件を表示

龍生の投稿

絆創膏と喰種と、レールガン

07/17 21:22 更新

「君は考えすぎなんだよ」
上司のその声は、空調と同じ温度で流れていく。

でも僕は知っていた。
考えすぎるからこそ、
細部が未来を決めることを。

資料を整え、心を読んで、
感情の地雷を回避する。
同僚たちが笑って走るなか、
僕は歩く速度で、風の流れを読んでいた。

それは、武器だった。
けれどこの街では、評価されることはない。

そんな僕に、ある日、同じ部署のツンデレ女子が言った。
「ねえ、今度の週末、船に乗らない?」

夜、音楽が流れる船。
グラスの中の琥珀が揺れて、
風がスカートを揺らす。

「先輩って凄いですよね、
一人で全部回してしまう」

彼女の声が、波の音に混じった。
見てくれていたんだと思った。
手を伸ばしかけて――ふと気づく。
彼女の指に、絆創膏。

「熱いコーヒーこぼしちゃって」
その笑顔は、どこか嘘くさかった。

そして、彼女は言った。
「最近、**グール(喰種)**の事件が増えてるらしいですよ」

血の匂いはしないのに、
どこか遠くで警報が鳴った気がした。

船が港に着く頃、
彼女はふと思い出したようにポケットを探り、
僕の手に小さな物を置いた。

「たばこ吸わないかもだけど、これ。
道で貰ったの。先輩に似合いそう」

銀色のライター。
月明かりを跳ね返す冷たい光。
そのとき確かに、風向きが変わった。

翌朝、会社は静かだった。
彼女はデスクで微笑んでいた。
絆創膏は……もうなかった。

僕の胸がざわつく。
違和感という名の声が、内側で叫んでいた。

静かに、アタッシュケースを確認。
そこにはいつも通り、小型レールガンが眠っている。

起動キーを押す。
低い振動とともに、
電磁チャージの音が脳に響く。

エネルギーが溜まるには、少し時間がかかる。
僕は席を立ち、トイレに向かった。

無人の廊下。
張り詰めた空気。
まるで舞台が整っていくような予感。

鏡の前で息を整える。
「……行くか」

ドアを開けた瞬間、
空気が変わっていた。

誰もいない。
物音ひとつしない。
何かが、起きた後の静寂だった。

天井を見上げると、
そこには――
同僚が、血まみれで吊られていた。

赤い滴がカーペットに落ちる。

後ろから、音もなく近づく気配。

「やっぱり、気づいてたんですね」

彼女の声。
もう“彼女”ではなかった。

爛れた肌、異形の眼。
グールの姿で、僕に襲いかかる。

ポケットの中の、銀のライター。
火をつける。
青白い炎が揺れると、
彼女の動きが一瞬止まった。

火は、やはり弱点だった。

僕は一気にアタッシュケースへ駆け、
レールガンを引き抜く。

チャージ完了。
引き金を引くと、
空気が一度、沈黙した。

次の瞬間、閃光とともに
グールの体は粉々に砕け散った。

焦げた匂いの中、
僕は静かに呟いた。

「グール退治を、本職にするしかないか……」

いま、僕は感受性という名の武器を持って生きている。
それは、誰かには“考えすぎ”に映るかもしれない。

けれど、僕にとっては――
未来を読み、危機を察し、
誰よりも早く“撃てる”力だ。

結果なんてものは、
心の奥にある火花から生まれる。

そしてその火花こそが、
僕の自由を、撃ち抜いた。

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ミギとヒダリと、欲望のヒトリ

07/16 04:08 更新

左右対称が美しい、美しい心だけが正義──
これが、世の中の常識。

僕の名前はミギ。弟のヒダリといつも一緒にいて、仲が良い。
僕らは両親のいない孤児。
世間では、大人の言うことを聞く“素直ないい子”で、
天使のような心を持っていると評判のふたり。

この生き方は、窮屈だけど波風は立たない。
僕らが我慢すれば、何事も上手くいく。

僕らは、表向きは優しい老夫婦の元に引き取られ、
静かな村で暮らしている。
──けれど、本当の目的は別にあった。

この村には「宝の鍵」にまつわる古い言い伝えがある。
その鍵は、老夫婦が持っているという噂だった。
宝を手に入れれば、お金も、時間も、自由も、すべてが手に入る。

ミギの僕と、ヒダリの彼。
いつも言うことも、考えも、同じだった。

でも、ある日ヒダリが言った。
「老夫婦を痛めつければ、鍵のありかを喋るんじゃないか?」

僕は反射的に言い返した。
「なに言ってるんだ。平和に手に入れなきゃダメだろ」

──この日から、ふたりの意見は食い違い、
天使と悪魔のように、喧嘩が増えていった。
ミギの僕は天使の心を、
ヒダリの彼は邪悪な心を持っていた。
その確執は、日を追うごとに深くなっていった。

そんなある日、老夫婦のもとに新たな虎児がやってくる。
名前は、ダン。

物静かで美しい彼は、
どこか僕らのことを見透かしているようだった。

数日後、彼は言った。
「鍵は手に入れた。深夜に地下室に来い」

驚いた。
彼も、鍵の存在を知っていたのか──。

そして深夜。
ヒダリとともに地下室へ向かった。

そこにはダンが立っていた。
「よく一人で来たね、ミギダリ」

──その呼び方に、違和感を覚えた。
なぜ“ミギとヒダリ”を繋げて呼ぶ?
ふたりなのに、“一人”で来たとは?

隣を見る。
──誰もいなかった。

ダンは微笑んで言った。
「気づいたかい? 君は、ミギとヒダリでヒトリなんだ」

そう。僕はひとりだった。
天使と悪魔、善と悪、愛と欲望──
そのすべてを心に持つ、“僕”だった。

ダンが言う。
「欲望のままに、生きていい。
天使と邪悪は、いつも隣り合わせだ」

その夜、僕はすべてを受け入れた。
もう、宝の鍵など必要ない。
自分を抱きしめて、前に進めばいい。

いま、僕は──
宇宙を飛び回る汽車に乗って、
自由という銀河を、旅している。

ミギとヒダリ、ふたりの声を抱いたままの僕で。

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ヘミングウェイと黄金の鍵と、自由の女神

07/14 22:45 更新

かつてアメリカの文豪ヘミングウェイは、
「パンドラの箱の奥には莫大な宝が眠っている」と語った。
だがその箱を開けるには──
あらゆる恐怖と、孤独と、絶望と、
そして何より「現実」と向き合わねばならない。

 

僕はその箱に、手を伸ばせずにいた。
ただ、誰かの作った地図の上を
正確に歩くことだけに集中していた。

現場の作業員を、いかに長く働かせられるか。
労基に触れないギリギリのラインを探し、
関数を組み、数字を整え、
フードコートの片隅で夜を明かしながら、
“昇進のための資料”を作り続けていた。

──それが僕にとっての「成功への鍵」だった。
でも、あの時はまだ知らなかった。
それが地獄の扉を開く呪われた鍵になることを。

ある日、上司に呼び出された。
「君の肩書きは、今日で解除だ」
静かに、無感情に告げられたその言葉は、
まるで断頭台の斧のように僕を叩き落とした。

 

──そう。
僕は、自分が作った資料で、
自分を処刑したのだった。

その瞬間、
彼は“上司”ではなくなった。
欲望を食い散らかす、“仮面のハイエナ”になった。

僕は知った。
この世界には、
“自由のふりをした牢獄”がある。
そこから抜け出すには、
ヘミングウェイの言った“宝の地図”を手に入れなければならない。

 

そして僕は、ついに決意する。
あのパンドラの箱を開けるときが来たのだ──。

 

警備室から盗んだ黄金の鍵と、
閃光手榴弾、そしてマグナムを手に、
僕は最上階の宝物庫へと走った。
だがそこに立ちふさがっていたのは、
あの仮面のハイエナだった。
マシンガンを構え、僕を見下ろすその顔に、
もう“人間”の気配はなかった。

僕は手を上げるふりをして、
ポケットの中の閃光手榴弾を転がす。
閃光が弾けた瞬間、
僕はマグナムを構え、
ハイエナの眉間を撃ち抜いた。

「あの世で自由の女神にキスでもしてな」

そう言い残し、僕は箱を奪った。
パンドラの箱の蓋が開くと、
中からはあらゆる恐怖と呪いが飛び出してきた。
でもその底には──
“希望の光”が、確かに残っていた。

 

あれから僕は、
その希望の光を帆に受けて、
広大な海に旅立った。

地図を捨て、自分だけの地図を描きながら──
自由を求める仲間たちと出会い、
ときに孤独と闘い、
ときに笑いながら。

そして今日もまた、
空に掲げた希望のコンパスを頼りに、
まだ見ぬ世界へと、航路を引いている。

自由の物語は──まだ、旅の途中だ。

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雨上がりの夜空×星空のメッセージ

07/14 11:17 更新

何気なく届いたメッセージ
シンプルで、丁寧で、少しだけ遠くて
その向こうにある気持ちは
まだ読み切れないまま
夜のページをめくっていく

大雨の夜
僕は濡れた街を越えて
電車の揺れに身をまかせながら
静かな場所へと向かった

アスファルトに滲んだ光
閉じた傘のしずくが、
心の奥に波紋を描く

人懐っこい小鳥の声と
誰にも届かないような、小さなため息
整えられた空間のどこかに
言葉にできない感情が、そっと息を潜めていた

彼女の涙から始まった
でも、そこには
明るい緑が生い茂るような未来の気配が
たしかに、あった

話して、笑って、
時々沈黙の中でふたりの呼吸が重なって
僕の心に灯った言葉は
「見つけてくれて、ありがとう」

誠実で、優しくて、あたたかい彼女の言葉たち
その輪郭が、
僕の曖昧だった境界線を、なぞっていく

窓の外には
雨上がりの空と、まだ滲む星たち
君が最後に投げた
見えない魔法が、そっと夜の端を照らしていた

君は夜のスキマに、静かに溶けていった
話し足りなかったことと、
僕の忘れ物を残したまま

でもたしかに
悲しみが優しさを抱きしめて
幸せの星が、静かに降っていた

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真夏のスタンプ × プロローグ

07/14 10:44 更新

カオスな街並みの中で
僕は君を待っていた

道案内は相変わらず下手だけど
不思議とそれすら、僕の“らしさ”として
受け止めてくれた気がした

まるで
昔から知っていた友人のように
最初から感性がすっと重なった

君の心はきっとパズル
でも僕もその形を抱えて歩いてきたから
その痛みも哀しみも
ちゃんと知っている

曇りがかった午後の街並みに
木漏れ日がひっそりと差し込んでいた
ふたりの足音が
古い歴史の影をそっと踏んでいく

予約したテーブルに並んだ
たくさんのギフトたち──
笑顔と、おしゃべりと、ぬくもりと
お腹も、心も、身体も
ゆっくり満たされていった

長く感じた道のりが
今日はなぜか短く思えたのは
きっとまだ物語の途中だったから

夕暮れの空の下
歩きながら交わした言葉のひとつひとつが
記憶の上にそっと押されていくように
心の奥に静かに染み込んで
今も、やさしく脈を打っている

この続きは
プロローグとして
未来のページに、静かに書き足されていく

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浴衣と秘密の呪文と、クリーム色の未来

07/13 23:20 更新

時間の概念なんて
どこかに置き忘れてしまうほど
ふたりは静かに
信頼を積み重ねてきた

少し息切れしていた君は
肩に浴衣をまとい
涼しげな風が そっと袖を通り抜ける

喧騒の中
アニメのような幻想の街に
ふたりだけが静かに溶け込んでいく

人混みのざわめきの奥で
重なる笑い声は まるで秘密の合図
四角い封筒に封じられた呪文は
僕の胸の奥で まだ眠っている

でもいつか――
封印が解けるとき
きっと僕のなかで 何かが始まる

時の流れは、いつもより
少しだけ優しくて
行き慣れた場所に 別の入り口を見つけたり
秘密の呪文の効果かな?って
くすりと笑った

君は多くを語らない
だけど その沈黙の奥に
いくつもの物語が静かに眠っている
どれも急がずに
ゆっくりほどいていけたらいい

次にまた会うとき
どんな“ひみつ”が顔を出すだろう

過去の痛みも
白と黒と花の魔法で
きっと――
甘く温かい、クリーム色の未来に
変わっていくんだろう

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秘密基地と鍵と、進撃の戦士

07/11 21:51 更新

巨大な壁の向こうには、
何があるんだろう。
考えるだけ、無駄なのか──

当時の僕は、都会の中心で働いていた。
始発電車が通るホームを横目に、
旅行者のような大きな荷物を背負って。
カバンの中は、書類とPCでパンパンだった。

でも、僕には“地下の秘密基地”があった。
自分が管理する物件の地下室に作った、
誰にも干渉されない、僕だけの空間。

そこは、静かで快適だった。
仕事はすべて自分で組み立てて動かしていた。
チームがやるような規模のプロジェクトも、
一人で完結させるような日々。
効率化と改善が好きだったから、
やり方を変えては業務を楽にしていった。

たまに応援に来てくれる
かわいい部下の女の子と、
ふたりでコンビニのカフェラテを片手に、
小さなテーブルを囲んで雑談する。
そんな時間が、ちょっとした癒しだった。

誰にも迷惑をかけず、成果も出していた。
けれど──
その「自由な働き方」は、
上の人たちの“正しさ”には、そぐわなかったらしい。

突然、秘密基地は禁止された。
無意味な報告業務と、
顔色をうかがうだけの朝礼が始まった。
「これが社会ってもんだよ」
同僚は笑って言ったけれど、
僕は笑えなかった。

閉ざされた地下室で、
僕は荷物の整理をしていた。
ロッカーを開けると、
今までに見たことのない鍵が出てきた。

そのとき、どこからか声がした。

──むかし、自由を求めて壁を越えた戦士がいる
  彼らのことを“進撃の──”

声は途中で途切れた。
僕はその鍵をポケットにしまい、
“太陽を背に”、秘密基地を後にした。

壁の向こうに行くには、
巨大な敵を倒し、あの海を越えなければならない。
いまの僕では、まだ足りない。

ふと思い出した。
母から昔、こんなことを言われたことがある。
「お前の顔は、
 一族でいちばん自由を求めたあの人に似ている」

家にあった、鍵のかかった古い机。
もしかして──
あの鍵で開くかもしれない。

カチリ。

開いた引き出しの中には、
僕が子どもの頃に描いた漫画が入っていた。
空を自由に飛ぶ、主人公の姿。

その瞬間、僕の身体に
空間を駆ける装置と、大剣が現れた。

壁の向こうには、巨大な“あれ”がいる。
その額に剣を突き刺さない限り、前には進めない。

空を駆け上がる。
太陽を背に、
その巨大な手が襲いかかる。

避けきれない。
一度は弾き飛ばされたけど、
もう一度、陽光を味方に跳ぶ。

その目が、まぶしさに眩んだ一瞬、
僕は全力で眉間へ突き刺した。

巨人は崩れ落ちた。

その奥には、
見たことのない海が広がっていた。

あのとき僕が掴んだのは、
剣なんかじゃなかった。
ずっと手放したと思っていた「自由」そのものだった。

いま僕は、
その海を越え、自由を求めて進む仲間たちと、
太陽を胸に抱いて進んでいる。

あの日のように、空を見上げながら──

進撃は、続いている。

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無音の風と言葉と、蜘蛛の糸

07/09 22:18 更新

ほどけた糸は
きっと、もう戻らないと思ってた

言葉が一つ、ずれて
気持ちが一つ、遠ざかって
心の奥に 無音の風が吹いた夜

「もう無理かも」
そう呟いたのは、
ほんとうは 終わらせたいからじゃなかった

苦しかっただけ
見てほしかっただけ
あなたの手が まだそこにあるって
信じたかっただけ

それでも
待って、
黙って、
涙の中で 名前を呼んだ

──その声が届いたとき
あなたは言った

「やっと会えたね」

まるで──
光の届かない静かな底から
ひとすじの細い蜘蛛の糸に
そっと願いをかけるように

その言葉に
壊れたものが 音もなく
静かに、柔らかく
結びなおされた

きつくなくていい
ゆるくてもいい
でも今度は、
ほどけてもまた、結べる蜘蛛の糸だと知ってるから

また、一緒に歩こう

「いつか」じゃなくて
「今ここから」

ふたりの物語を、続けよう

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貴族と幻影と、ダンピール

07/09 01:52 更新

僕は子どもの頃から、
なんとなく自分が“普通じゃない”ことに気づいていた。

興味のあることには、何時間でも没頭できる。
でも、興味がなければ、まるで動けない。

高校1年ではビリだった僕が、
翌年には学年トップ。
オール100点の答案用紙を前に、
なぜか「これが普通」だと思っていた。

でも、周りには理解されなかった。
学校でも、会社でも──
僕はずっと、どこにも居場所がなかった。

 

そんな僕にも、ひとつだけ自信があった。

それは、「根拠のない自信」だ。
感受性の強さと、理由なき確信。
たとえ誰かに否定されても、
どこかで信じていた。
“僕は僕でいいんだ”って。

 

ある日、投稿した詩が少しバズった。
感じたまま書いただけなのに、
「言葉が沁みた」
「涙が出た」
そう言ってくれる人たちが現れた。

気づいた。

僕は「言葉にできない想い」を、
“代わりに信じて、言葉にしてあげる”存在なんだ。

──人間とバンパイアのあいだに生まれた存在。
影を背負いながらも、人を守るために剣を振るう。
僕は、“ダンピール”だったんだ。

 

ある日、僕のもとに依頼が届く。
「娘がバンパイアにさらわれた──助けてください」

相手は“貴族”と呼ばれる、強大な力を持つバンパイア。
誇り高い存在が、なぜ人さらいを?
疑問を抱えながら、僕は彼の前に立つ。

貴族の瞳に宿る、かすかな痛みに気づく。
──愛してしまったんだ。
彼は、その娘を。

だが、愛し方を知らなかった。
信じることが怖かった。
だから彼は、娘を閉じ込めた。
その手で、彼女の世界を奪った。

 

「古城に来い」
そう言い残して、貴族は娘と共に飛び去った。

 

古城に着くと、
棺桶が揺れ、影のような霧が立ち昇る。
カーミラ──幻影で心を操る、魔性のバンパイアが現れる。

信じることを恐れた貴族は、
カーミラの幻影に囚われ、
自分も、愛する人も縛りつけていた。

僕にカーミラが襲いかかる。
だが僕は、信じていた。
言葉の力も、自分の存在も。
だから幻影は届かない。

──その一太刀で、すべてを断ち切った。

 

貴族はゆっくりと跪き、
凍えた娘の手を震える指で包んだ。
「もう隠れなくていい」
小さな声に、何年分もの涙が滲んだ。

 

言葉を信じていなかった僕が、
誰かの「生きる力」になれると知った。
それが、僕自身を救うことにもなった。

 

そして今日も、
言葉の届かぬ闇にひとり佇む誰かに、
胸の奥で灯しつづけた光を、
そっと──剣のように差し出す。
「信じることは、もう一度生きることだから」

 

──僕は、ダンピール。
人でもバンパイアでもない、
けれど確かに、“言葉の剣”を握っている。

今も、誰かのために。
そして、自分のために。

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豚と呪いと、自由の設計図

07/07 19:50 更新

僕は、人生の分岐点に立つとき
いつも “かっこいい” と思う方を選ぶ。

 

かつて、会社で僕に勝てる者はいなかった。
知識、スピード、調整力。
どれをとっても、誰よりも上手くやれる自信があった。

でも僕は、自分に“呪い”をかけた。
「はい」と笑って、
無理なことも「できます」と言って、
顧客の嘘にも、上司の無茶にも、全部応える。

──そうやって
僕の姿は、豚になった。

 

ある日、部下が大きなトラブルを起こした。
会社は騒然となり、
誰もが“責任を押しつけ合うゲーム”を始めた。

僕もそうだった。
資料を整え、誰よりも早く顧客に頭を下げて、
「僕は無実です」と、形だけの正義を装う。

 

でも──
そのとき、僕の愛機“ダンピール”が
不調のまま空に舞い上がった。

後ろから海賊の不意打ちを食らって、
僕は機体ごと、海へ墜落した。

 

海の底で僕は出会った。
世間の波に染まっていない、純粋な少女に。

「今のままじゃ、勝てないよ。
でも私が手伝うから──
自由に飛べるように、設計し直そう。」

彼女の瞳には、
僕が忘れていた “空” が映っていた。

 

決戦の日。
ビルの最上階。
会議室には、偉そうな“敵”が並んでいた。

僕は、改造した愛機に乗って
空の決闘場へ飛び立った。

 

空中戦は拮抗していた。
背後を奪い合う消耗戦。
気がつけば、燃料が尽きて
二機とも、海へ落ちた。

 

そこからは、拳の勝負だった。
殴って、殴られて、
痛みも、言葉も超えて、ただ──本音をぶつけ合った。

倒れかけたそのとき、
クロスカウンターが決まって
僕はようやく、
“言い訳の仮面”を打ち砕いた。

 

会議室で、
資料よりも感情を前に出して話した。

すると──
偉い人が立ち上がって言った。

「わかった。今回は、こちらで持ちます」

 

彼女がそっと寄ってきて
僕のほっぺにキスをした。

その瞬間、
豚の呪いは解けていた。

 

かっこいいと思う方に進めば、
自分を偽る必要なんてない。

自由は、
“好きに飛んでいい”という設計図から始まる。

 

──今の僕は、
海を越え、風を抜けて、
もう一度この空を、自由に飛んでいる。

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