昔むかし、
ひとりの男が、
静かに目を閉じた──
次に目を開けたとき、
彼はもう、“龍王”になっていた。
時間も場所も、何もかもが違う。
だけど、なぜかとても懐かしい空気が
肌にやさしく触れていた。
その午後、
風の吹くレンガ通りの片隅に
彼女は立っていた。
静かで美しくて、
どこか“自由”の匂いがした。
ふたりで小さな扉をくぐり、
窓辺の席に腰を下ろす。
静かな音楽と、あたたかな空気。
彼女が笑うたびに、
心の奥の何かが、
音もなく、ほどけていった。
やがて、ふたりは、
音楽と自由がやさしく抱きしめ合う空間へ。
そこでは、
言葉よりも深く、
手と舌と、目と鼓動が、
互いを語り合っていた。
夜は長く、甘く、
そしてどこまでも静かだった。
それは時系列のない時間。
ふたりだけの、
星の向こう側の物語だった。
そして、翌朝。
彼女は“星の切符”を手に、
旅立った。
誰かの期待でも、過去でもなく、
“自分の物語”を生きるために。
その背中は、
さみしさよりも希望に満ちていて、
ぼくは思った。
あの旅は、きっとまたどこかで
この龍王のもとに戻ってくる、と。
それは永遠じゃなくてもいい。
でも確かに、
ふたりの間に“光”はあった──
