指先より深く、
言葉よりやわらかく。
触れたのは、彼女の心の奥、
そして——
その奥にひそんだ、渇き。
感性のままに生きてきた彼女は、
自由の香りをまとっていた。
自分の心に素直であること。
それは時に、
誰にも見せない傷を生む。
けれどその痛みさえも、
咲き誇る花々のように、
濡れて艶やかに咲いていた。
名誉でもない、
お金でもない、
彼女が欲していたのは——
“そのままの自分”を
包みこむ、ぬくもり。
僕は、ただそっと近づく。
まなざしで、息づかいで、
肌の温度で語りながら。
奇跡のように、君がここにいる。
それだけで、理性がほどけていく。
濡れた吐息が、鼓動と混ざり合い、
ふたりの境界がゆるやかに溶けていく。
ほどけた心は、もう過去を見ていない。
今この瞬間、
すべてを委ねて呼吸している。
過去と未来の、その先にある——
確かな“いま”。
甘く絡んだ髪、
熱を帯びた背中、
押しつけた唇の先で、
君の星座がかすかに揺れた。
自由であることと、
誰かに満たされることは
きっと矛盾しない。
僕は、縛らない手で抱きしめる。
導くように優しく、
甘く、少しだけ意地悪に。
その風は、
君の深く、やわらかな場所に、
静かに溶けていった。
