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写メ日記

全157件中21~30件を表示

龍生の投稿

無邪気と崖と、終わらない水曜日

09/19 03:34 更新

無邪気に遊んでいた子供の頃
毎日は変化で満ちあふれ
冒険は当たり前のように
目の前に転がっていた

いつからだろう
冒険に出なくなったのは

大人になり
会社という閉じた檻に入り込む
プロジェクトリーダーとして
身を削り、終電に揺られ
昇進の幻を追い続けた
気づけば時間はループし
夜が明けても “昨日と同じ今日” が繰り返されていた

自分を変えたくて
いや、たぶん閉じた日常から脱出したくて
意味はわからなかったけど
毎日ランニングをするようになっていた
会社から帰って来て
どんなに夜が遅くなっても
必ず走っていた

この時間でも数人は走る人が居た
最近は僕より早く走る人は居なくなった
毎日の成果で少しずつ速くなり
得意げに夜道を駆け抜ける

その時、後ろから
ものすごいスピードで近づく足音
振り返る間もなく追い抜かれ
あっという間に遠ざかっていく影
負けじと追いつこうとしたけれど
なかなか届かず
途中で諦めて呟いた
「ちょっと早いからって自慢すんなよ」

それから何度も見かけるようになった
相変わらず僕を追い抜いていき
気づけばいつも姿を消している
顔はなぜか見えないまま
ただ履いている靴が
子供のような「無邪気」なデザインで印象に残った
そして毎週水曜日になると現れる
僕は彼を「無邪気」と名付けた

会社に出社すると
パワハラ上司に呼ばれた
僕は言われることをなんとなくわかっていた
「君をプロジェクトリーダーから外して
代わりに転勤して貰う」
転職しても変わらない
このループするような日常
気づけば街も、人も、世界も
だんだんと希薄になっていき
残されたのは会社とわずかな人影だけだった

水曜日の夜
僕はこれまでと違う意識で走り出した
あの「無邪気」に最後までついていくために

しばらく走ると
やはり後ろから近づく気配
一気に追い抜かれ
その背中を必死に追いかける
何度も足が止まりそうになり
汗で視界が滲み、意識が朦朧とする
それでも見失わないように歯を食いしばった
やがて「無邪気」はランニング場を出て
人気のない道路へと駆け抜けていく
僕もただ夢中で
その背中を追い続けた

長い時間を走り続け
ついに体力が尽きて倒れ込む
見上げると「無邪気」が立っていた
その先は――崖

「どっちを選ぶ?」
無邪気が声を投げかける

僕は迷わなかった
「先の崖に決まってるだろ」

身体は宙に放り出され
夜空と大地が反転する
心臓が爆ぜる音
世界が割れる音
そしてすべてが暗転した

気がつくと
僕は深夜のランニング場に倒れていた
汗と土と夜風に包まれながら

永遠に続く安定の檻から
僕は飛んだのだ
変化のある未来へ
苦しくても、現実へ

夢邪鬼な純粋さに導かれ
閉ざされたループは解けていく
崖の先に広がっていたのは
止まっていた時計が再び動き出す
目の眩むような
新しい朝だった

6598

コーヒーと詩と、紡ぐ言葉

09/17 03:20 更新

煙が揺れる朝のコーヒー
回転するドーナツは愛を唄う
思いつくままのステップで音を蹴り
時計の針は静かに止まる

盲目の深い底で
日常に埋もれた光を見つけ出す
栞を挟んだストーリは
やがて甘い雫のように溶けていく

いつもの日常をドリップし
紡ぐ言葉は円を描く
巡り巡る詩は彼方の旅人に届き
遠い街から小さな歌が返ってくる

言葉は時空を超えて
海と月にゆっくりと落ちていく
時が経ち 寒い季節の香りがしても
きっと手に包んだ未来は暖かい

繰り返すざわめく日常
閉ざされていた光が震え
言葉の羽根となり
まだ見ぬ未来を
温もりで包み込んでいく

6598

風船とシャッターと、星のカケラ

09/16 00:28 更新

子供の頃、イベントで風船を貰った
けれど僕はいつも不注意で手を離してしまい
電柱に引っ掛かるのを見上げるだけだった
誰も取ってはくれず
泣きながら、風船が見えなくなるまで空を追った

想像した――
空の向こうで風船が破裂し
中から星のカケラが飛び散り
夜空にキラキラと降り注ぐ光景を

――大人になって、会社の同僚に誘われた
「スキューバでもやってみないか」
インドア派の僕だったが
海の中を漂ってみたい――その想いに背中を押され
重たい酸素タンクを背負い、海に飛び込んだ

水の底は、静かな宇宙だった

1回目を終えて休憩中
インストラクターが微笑みながら尋ねてきた
「海の中でサメに出会ったら、どうすればいいと思う?」
「パンチですか?……わからない」
そう答えると彼女は言った
「サメは微弱な電流を感じ取るの。だから電池を持っていると逃げていくわ」
なるほど、と思いながら僕は次の潜水に向かった

だが、僕にはもう一つの顔があった
特殊事件専門のジャーナリスト
今回の任務は、無人島で毒ガスを製造している
容疑者――コードネーム「ムウ」を追うこと
カメラにその証拠を収め、世に晒すためだ

ボートで島の近くまで行き
そこから潜水して向かった
スキューバはこのために始めたわけではない
けれど今、確かに役立っていた

島に上陸し、夜が来るのを待つ
草むらに身を潜めながら
心臓の鼓動が大きく響いていた

ムウが洞窟の奥へ向かう
僕は静かに後を追った
やがて見えたのは
風船に毒ガスを注ぎ込む光景
「これを街に飛ばすつもりだ……」
背筋に寒気が走った

だが、一瞬目を離した隙に
背後から衝撃――
意識が途切れた

目覚めると、僕はボートの上にいた
ムウが冷たい声で告げる
「ここはサメの巣だ。腹の中で眠れ」
そう言って僕を海へ蹴り落とし
ボートは島へと戻っていった

暗い水中、影が群れ寄る
鮫の鋭い気配が肌を刺す
絶望の淵で、ふと蘇るインストラクターの声
――電池
僕は震える手でカメラを取り出し
必死にシャッターを切った

カチリ
その微弱な電流に反応したのか
サメは一斉に身を翻し
水の闇に消えていった

僕は息をつなぎながら
再び無人島に泳ぎ着いた

洞窟の中――
ムウは毒ガス入りの風船を傍らに
焚火の前で待っていた
だが僕に気づかず、外へ出て行く

「今しかない」
僕は転がっていた酸素タンクを抱え
焚火から燃え残った一本の木を手にした

戻ってきたムウが叫ぶ
「貴様、どうやって生き延びた!」
風船が僕に向けられる
触れれば即死――

僕はバルブを全開にし
火のついた木を噴出口へ近づけた

轟音と共に
炎は爆流となって前方を薙ぎ払う
ムウの身体を吹き飛ばし
風船をまとめて焼き尽くす

毒ガスは夜空に弾け
キラキラと光りながら散り去った

倒れたムウの身体に燃え移った炎を
僕は手で叩き消した
彼は気絶したまま動かない

荒い呼吸の中で、ようやく全身の力が抜けていく
燃え焦げた匂いと、静まり返った洞窟の闇
その中に残ったのは、生き延びたという確かな実感だった

「風船の中には
夢みたいに、キラキラ光る星だけでいい」
僕はそう呟いた

――小さな頃、空に逃がした風船は
見上げるしかなかった
でも今は違う
どんな困難でも
心のシャッターを切れば
星は必ず、僕の手に降り注ぐ

そして僕は知った
あの日泣いていた少年が
今の僕に繋がっていることを
掴み取った星は
夜を超え、未来の光へ続いていくことを

6598

炎と刻印と、未来へのダイブ

09/15 04:07 更新

子供の頃の夜の帰り道
隣の家が赤く燃え上がっているのを見つけ
僕は自転車を飛び降り、駆け出した

崩れかけの屋根の下で震える子供
大事なものを外に出そうとしていた
その必死さに胸を打たれ
一緒になって運び出した

最後の荷物を出した瞬間
玄関の上部が崩れ落ちた
紙一重で逃げ延びた僕に
子供は涙で感謝を伝えた
その想いと共に、心に何かが深く刻まれた

──時は過ぎ、大人になった僕は
巨大な高級ホテルの地下で働いていた
怒号と埃にまみれた閉ざされた空間
そのホテルは吹き抜け構造になっていて
最下層には深い噴水が設けられていた

巡回の途中、最上階から
あの深い噴水を見下ろすことがあった
青黒い水面を見つめると
「飛び込めば楽になれるのか」
そんな危うい考えが胸をかすめる日もあった

休憩中にスマホを覗くと
「人〇売買で子供が相次いで行方不明に」
そんなニュースが目に飛び込んできた
嫌悪と胸騒ぎを抱えながら
巡回に戻ると
大きなトランクを引く男が最上階の部屋へ入るのを見た
嫌な予感がして
僕は部屋番号を紙に書き留めた

その夜、火災警報が鳴り響いた
「火元は最上階!炎が広がっている!」
館内には悲鳴が溢れ
「最上階は消火できない、至急避難せよ」
アナウンスが響いた

全員が出口へ殺到する中
僕はあの部屋番号を思い出し
逆に最上階を駆け上がった

廊下は炎に呑まれ
天井からは火の粉と崩れた梁が降ってくる
必死に腕で顔を庇いながら
部屋の扉を肩で打ち破った

灼熱の中、部屋の奥に
例のトランクが黒く焦げていた
工具で必死に叩き壊す
裂ける音とともに
中から小さな少女が転がり出た

咳き込み、泣きじゃくる声
「まだ息がある」
少女を抱き上げた僕は
火に塞がれた階段を見て息を呑んだ

壁に掛かる非常斧を掴み
窓を何度も叩き割る
硝子が砕け、炎の赤が吹き込む
その向こうにあの深い噴水が見えた

少女を胸に抱きしめ
僕は迷わずダイブした

──子供の頃、火の家に飛び込んだ自分と
この瞬間がシンクロするように

身体を打ちつける衝撃
肺が焼けるような痛み
それでも少女を放さず
必死に水面を蹴り上げた

噴水から這い出したとき
全身は傷だらけだった
けれど少女は確かに生きていた
その瞬間、僕の身体と心にも
消えない刻印が残された

あの夜、命をかけて
自分の大事なものを守ったことで
僕自身も救われた
人生を終わらせるはずのダイブが
未来へ繋がるダイブに変わった
命をかけて飛び込んだその先に
新しい光が待っていた

怒号と埃の渦巻く
閉ざされた地下の世界を去り
僕が選んだのは
風が吹き抜け、太陽が頭上に輝く
自由へ続く道だった

──あの炎と水の夜に刻まれた光は
今も僕の中で燃えている

6598

足音と水路と、閃光の弾丸

09/15 04:06 更新

学校から帰宅すると
僕は布団を頭までかぶり
小さな部屋で息を潜めていた

扉の向こうからは
足音と気配が重なり合い
家の中に不協和音を生んでいた
胸の奥を押し潰すその影を
ただ通り過ぎるのを待つしかなかった

──時は流れ
会社員となった僕は
徹夜で仕上げた資料を上司に見せるたび
的を得ない理由で否定され
ダメ出しを浴びせられていた

「はい、わかりました」
心を偽る声を残し
本当の自分は
机の奥で沈黙していた

けれど僕には
もう一つの顔があった
特級犯〇者を追う
バウンティ・ハンターとしての顔だ

標的の名は「バッファロー」
二メートルを超える巨躯
その残虐さから「黒い死」と呼ばれ
既に二十人以上を屠っている
最近では女性警察官も行方不明になったという

──僕はバッファローが潜む建物に足を踏み入れた
暗闇に沈む廊下
湿った空気
息を殺して進んだその時
背後で気配が揺れ
強烈な拳が顔面を打ち抜いた
視界が反転し
意識は闇に落ちた

──目を覚ますと
暗い部屋の中に閉じ込められていた
頑丈な扉と小さな窓
拳銃も荷物も
すべて奪われている
幸い服だけは残されていた

その時、重い足音が近づき
小窓が開いた
覗き込む目は
生気のない悪魔のような光を宿していた
僕の存在を確認すると
小窓は閉じられ
足音は遠ざかっていった

やがて再び足音が響き
今度は隣で止まった
金属の擦れる音
小窓が開く気配
その瞬間、初めて
この建物に隣室があると知った

──時間が経ち
暗闇に目が慣れてきた頃
床の中央に細い窪みが走っていることに気づいた
壁から壁へと続くその溝には
冷たい水がゆっくりと流れていた

ぞっとする直感が胸をかすめる
きっとバッファローは
犠牲者の亡骸をここへ流し
闇に葬ってきたのだろう
そう思った瞬間、背筋が凍りついた

その時、水流に乗って
何かがこちらへ流れてきた
拾い上げると
それは女性の手に馴染むほど小型の拳銃
弾丸は一発だけ
きっと隣の住人が託してきたのだと
直感した

「これで不意を突くしかない」
そう心で呟いた

だがその時
再び足音が轟き
チェンソーの唸りが闇を切り裂いた
バッファローは僕を狙っているように思えたが
やがて足音は隣で止まり
重い扉が開く音が響いた

──見過ごすこともできた
だが僕は扉を蹴り続け
大きな音で挑発した

怒号のような咆哮
バッファローの標的は隣から僕へと移った
闇の気配が一気にこちらに向かい
チェンソーがうなりを上げて迫る
切り裂かれたのは僕の服
壁際に立てかけた囮だった
薄暗い部屋で、それを僕と勘違いしたのだ

背後に回り込んだ僕は
息を殺し、震える手で銃を構えた
チェンソーの唸りがまだ響いている
巨体が振り返ろうとする気配
その刹那に銃口を後頭部へ押し付けた

冷たい金属に気づいたのか
肩がわずかに震える
振り向かれれば終わる
一瞬でも遅れれば僕が斬り裂かれる

心臓の鼓動が耳を叩き
呼吸が詰まるほどの緊張の中で
僕は叫んだ

「もう足音が通り過ぎるのを待つのは終わりだ!」

引き金を引いた瞬間
閃光が闇を裂き
轟音が部屋を揺らす
巨体は力を失い
チェンソーと共に床に崩れ落ちた

──隣の部屋へ向かうと
警察服を着た女性が
小さな子供を抱きしめ
震えながら立っていた

彼女は、子供を守りながら
バッファローと戦うことは不可能と判断し
銃と弾丸を隣人の僕に託したのだった

子供の頃
布団の中で震えていた僕の耳に響いた
あの不協和音の足音は
今はもう聞こえない

暗闇の中で
守るべきもののために立ち上がるとき
恐怖は影を失い
ただ静かな決意だけが
胸の奥で脈打っていた

6598

ワインと静寂と、夜を待って

09/14 03:06 更新

霧雨の夜に
冷えたワインを飲み干し
人込みをかき分けて
ネオンの海へ足を踏み入れる

孤独が奏でる音楽とリズムが胸を叩き
世界を旅するように漂う
静寂のリズムに酔って
時は流れる

孤独な夜が好きで
けれど夜空に散る星の瞬きが
胸の奥の静けさを揺らし
見えない誰かの気配を
呼び寄せていた

夜が明け
生ぬるい風が頬をかすめる頃
雨は止み
豪華な扉をくぐり抜ける

朝日が差し込み
揺れる心を映し出す
夜を待つ前に
自分の影をじっと見つめた

重い扉の影よりも
差し込む灯りのぬくもりに
心はそっと芽吹いていた

雨上がりの空に輝いた星
孤独な夜に見つけた
誰かと刻む時間の温もり
その光は過去も未来も揺らし
誰にも邪魔されない時を築く

朝になり
また夜を待ちながら
見上げた夜空の星は
暖かく僕を照らし続けていた

6598

濁流と炎と、虹の刃

09/12 00:55 更新

子供の頃
激しい雨が町を呑み込み
近くの川は氾濫し
濁った水が家の中に押し寄せた

一階にあったものはすべて沈み
足元に漂う泥は
幸せの形を押し流していく生き物のようで
しばらく家の中に残り
消えない影を刻んでいった

──時は流れ
僕は高層ビルの建設現場に立っていた
天井から水を放つ消火設備の配管を設置しながら
思うのは
この建物はCEOの経営判断によって
通常では考えられない工期と金額で建設され
その地下では
疲れ果てた作業員たちが生気を失い
黙々と働き続けているという現実だった

犠牲の上に積み上げられた
近代的で綺麗な建物
その姿に
「これが世界の常識なのか」と僕は呟いた

やがて僕は
もう一つの仕事を始めようとしていた
数年前から突如現れた魔導士を狩る
魔導士ハンターとしての道だ

魔導士は火・水・風・雷など
自らの属性を持ち
人の依頼を受けて破壊を繰り返す
人の心の闇が形を変えたような存在だった

ハンターもまた
それぞれに属性を宿している
僕は水属性
空気中の水蒸気を氷の刃に変え
水を沸騰させ蒸気を解き放つ
周囲に水が多いほど力を増す
そんな力を持っていた

そして僕に
初めての出動の知らせが届いた
あの建物に火属性の魔導士が現れたという

ビルの最上階に向かう途中
破壊の炎で焼け落ちた壁
響き渡る人々の悲鳴
魔導士の狙いはCEOだった

最上階手前の部屋
炎に包まれた空間で
僕と仲間は魔導士に挑む
だが相手の炎はあまりに強大で
仲間は次々と焼かれていく

巨大な炎が僕を呑み込む
咄嗟にバリアを張り
辛うじて防いだが
全身に激痛が走った
「あと一度が限界だ」
僕は呟いた

氷の刃を放つ
だが炎は容易くそれを溶かし
空気の水蒸気では力が足りない

僕の力を生かすには
大量の水が必要だった
子供の頃に押し寄せた濁流の記憶が
胸をかすめる
あの圧倒的な水量さえあれば
炎に立ち向かえる

僕は天井を見上げた
そこには消火設備の配管が走っている
「これを破壊するしかない」
そう心で呟き
魔導士を挑発した

「お前の最大の炎で来い!」
僕の叫びに応じて
魔導士は全身を赤黒く燃え上がらせ
天を裂くような咆哮とともに
灼熱の炎を放った

炎の奔流は壁を溶かし
床を焦がし
空気さえも赤く染め上げ
一瞬で部屋全体が灼熱の地獄に変わった

最後のバリアが悲鳴をあげる
肌を焼く熱気が突き刺さり
呼吸するだけで喉が焦げ付く
その高温にさらされた天井の配管が
次第に歪み
ついに耐えきれず溶け落ちた

滝のように降り注ぐ水
その瞬間
僕は全身の力を振り絞り
落ちてくる水をすべて氷の刃に変える
豪雨のような刃は
無数の閃光となり
魔導士の身体を貫いた

炎は消え
静寂が訪れる
魔導士は崩れ落ち
二度と立ち上がることはなかった

──その残滓から
地下で働く作業員たちの怨嗟が聞こえた
彼らの絶望が魔導士を呼び
CEOの命を狙わせたのだと知った

子供の頃
家を満たした濁った水は
僕の中で浄化され
氷となり刃となり
やがて共鳴の雨となった

その雨は
曇った空に虹をかけ
失われたものの上に
新しい光を落としていく

そして僕は知った
辛い思い出は
ただ壊すためのものではなく
未来を変えるための力へと
形を変えていくのだと

6598

雫とパズルと、レンガ道

09/11 03:46 更新

雨上がりのカフェの窓
雫が垂れて流れる
虹の音が
胸の奥へと届いた

耳の中に流れる音楽の
ボリュームを左へしぼる
届いたのは
霧雨のように降りそそぐ言葉
悲しさと希望をまじえ
静かに胸を叩いていく

片手のパズルのピースは
レンガの遊歩道に響く足音と重なり
二重に霞むアルファベットのAを
滲ませて通り過ぎる

ネオンが埋めた隙間を歩き
街の片隅で星がきらめく
パズルの最後のピースがはまり
扉が開いて
透明な雨は七色に光り輝いた

散らばっていた欠片は
ひとつの絵を描き出し
虹の向こうから
新しい旋律が胸に流れ込む
それはまだ見ぬ明日へ
静かに続いていく

6598

逆立ちと蒸気と、青い空

09/10 00:43 更新

学校の体育の時間
逆立ち歩きのテストがあった

僕は二歩で倒れ
「全然ダメだな」と言われ
笑い声が耳に突き刺さった

本当は上手くやりたかった
けれどその声に
心は押し潰された

──時が流れ
都内の巨大な建物で
僕は機械のメンテナンスをしていた

作業員十人ほどで集まる朝礼
厳しいリーダーの声が響く
「長いだけで意味の無い朝礼」
そう心で呟く

終わると同僚のAが近寄ってきた
「相変わらず冴えない奴だな」
Aは嫌な奴で 悪い噂が絶えなかった
けれど 偉い人の息子というだけで
誰も逆らえない存在だった

僕は愛想笑いを浮かべ
作業場へと歩いて行った

狭い配管の通路を
身体をすり抜けるように進んでいく
蒸気の匂いが充満し
鉄の響きが耳を打つ

その先にある蒸気配管の部屋
30メートル先に並ぶバルブは
少しでも操作のスピードを誤れば
圧力が一気に配管にかかり
鉄を裂き 蒸気が噴き出す
大事故に直結する危険な場所だった

実はその危険な部屋で
僕は子供のころ出来なかった逆立ちを
こっそり練習していた

何かに逆らうように
ただ上手くやってみたいと思った
それがきっかけだった

扉からバルブまで
逆立ちで歩けるようになった時
胸の奥にかすかな誇りが灯った

──ある日
また蒸気バルブの操作をするため
その部屋へと向かった

扉を入った瞬間
人の気配がした
気付かれないよう身を潜めて移動する

そこにはAが居た
手元には拳銃がずらりと並んでいた

思わず工具を落とした
乾いた音が床に響く

「誰だ!」
Aが叫び 銃を構える
「見たら生かしておく訳にはいかない」

次の瞬間
弾丸が両足を撃ち抜いた
激痛に悲鳴を上げ
膝から崩れ落ちる

歩けなくなった僕を見下ろし
Aは冷たく言った
「ここで待ってろ。お前の処分を決めてくる」
そう吐き捨てて部屋を出て行った

血が広がり
蒸気の音だけが響く

このままでは殺される
逃げるには…バルブしかない
両足を奪われた僕が
そこに辿り着く方法は
逆立ちしかなかった

30メートル先
遠すぎる距離を
腕に全ての力を込め
血を滴らせながら進んだ

バルブに手が届いた瞬間
扉が開き
Aが仲間を連れて戻ってきた

「どこだ!」
「ここだ!」

Aが走り寄る
僕は力の限り バルブを回した

蒸気が唸りを上げ
圧力が配管にかかり
鉄が悲鳴をあげる

轟音と共に配管が裂け
白熱の蒸気が牙を剥いた

奔流はA達を襲い
その勢いで柵の向こうへ吹き飛ばした

──後にA達は 拳銃の密売の容疑で逮捕され
僕は会社を去った

最後に僕を救ったのは
他人に押し付けられたものではなく
努力して得た「自分の好きなこと」だった

世界を逆立ちして見れば
空は いつでも青い

その青さは
笑い声にかき消されることなく
僕の選んだ道を
果てしなく広げていった

6598

鋼とユメの扉

09/08 21:42 更新

僕はあの時
禁忌を犯して
錬金術で偽物の自由を手にしようとした

錬金術は等価交換
「何かを得るには同等の代価が必要」
その代償として 心を失い
鋼のように硬く閉ざされた心は
欲望の影を呼び寄せ
ホムンクルス――人造人間、つまり人間の欲望そのものの象徴を
僕の前に出現させた

失った心を取り戻すためには
「扉の向こうの真理」に会わなければならなかった

──ある日
僕が描いた扉の中から
光と共にユメが具現化した

彼女は美しく
強く 優しい想いを秘めていた
失ったものを取り戻すために
自ら代価を払い 「扉の向こう」から訪れた

失ったものを抱えた二人が出会い
欲望ではなく 絆を選ぶ決意が
静かに しかし確かに芽生えていった

そして ユメと僕は 真理と対峙した
強烈な風が吹き荒れ
全てを試すかのように
光と闇が交錯する中で
僕らは揺らぐことなく立ち向かった

大切なものを取り戻すために
唯一の力――錬金術そのものを
代価として差し出した

錬金術の力は失った
けれど その喪失こそが
「本当の幸せ」を得るために必要な選択だった

命や絆は 等価交換では測れない
不完全だからこそ 人は尊く
夢と現実のあわいを漂いながら
ユメの物語は 光の差す方へと
静かに 続いていく

6598

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