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写メ日記

全157件中11~20件を表示

龍生の投稿

稚魚と雹と、スター・バースト

10/01 02:49 更新

子供の頃
押し寄せる波と砂を掴むと
手の中に小さな透明の稚魚がいた

輝くその姿は
まるでダイヤのようで
僕は夢中で砂をすくい続けた

夜空の星の下
手のひらの稚魚は
七色に光っていた

やがて気づいた
僕には秘密の能力があることを
海辺の星空の下で砂を掴むと
タイムワープが出来る能力だった

タイムワープは一瞬で
しかも数秒前にしか戻れない
そして波のようにすぐに元の時間に戻される
戻る場所は思い浮かんだ場所に戻ることが出来る
不完全な能力だった

僕は会社員として働き
成果を出しても上司の一言で砕かれた
心は固定された色に染まり
夢を掴もうとしても
手の中には砂だけが残っていた
空を見上げても降ってくるのは埃だけだった

実は僕は会社員の他に
あるスパイ組織で活動していた
通常では解決できない
国家を脅かすような特殊事件を扱う組織だ

ある日告げられた任務は
人類滅亡を招く最悪の兵器計画の阻止 だった

それは巨大なダイヤを氷の核にして
異常に強力な雹を生み出し
世界を壊滅させる気象兵器
「スター・バースト計画」

この計画を企てているのは
世界を一度壊滅させて
一から平和を築こうとする
狂った理想集団「ルナティクス」

僕はルナティクスの本拠地に潜入した
そこは薬品と兵器と配管が入り組む
巨大な研究施設だった

気配を殺し
最新のセキュリティ網をすり抜け
巨大なダイヤのある部屋へ近づく

だがその瞬間
足元を走る赤いレーザーに
わずかに触れてしまった

警報が轟き、サイレンが咆哮する
赤い光が施設を満たし
重装備の警備隊が次々と現れる

銃口と監視レーザーの照準が
一斉に僕へと向けられ
鋼鉄の扉が閉ざされた

僕は逃げ場を失い
瞬く間に取り押さえられ
頑丈な鉄の檻へと
囚われてしまった――

どれほど時間が経っただろうか
鉄格子の前に現れたのは
ルナティクスのリーダーだった

「これからお前を処刑する」
「一つの都市が壊滅するのを見ながら死ぬがいい」

夜、僕は海辺へ連れ出された
研究施設の発射台が
空に向かって照準を合わせる

後頭部に銃口が押し付けられる
僕は空に星が輝き
足元に砂があるのを確認した

この緊迫した状況の中
頭の中である作戦を思いつく
出来るかわからない
だがイチかバチかだ――

「よし、発射しろ!」
リーダーの声が響き
レーザーが天空へ放たれた

星空は一瞬にして
無数の雹で真っ白に覆われた

「今だ」
僕は呟き、砂を掴んだ

星空を見上げ
強く念じる

「空全体の雹を
研究所の上空に戻せ!」

僕の体と空が震え
光が奔った

次の瞬間
数秒の巻き戻しが起こり
研究所の上空に
大量の雹が出現した

雷鳴のような轟音とともに
雹の奔流は地を叩きつけ
鋼鉄の研究所を容赦なく砕いた

建物がきしみ、崩れ落ち
制御装置が爆ぜて火花を散らす
鉄骨が軋む悲鳴と
ルナティクスの断末魔が
夜の海に響き渡った

僕は遠く離れた海岸で
それを見届けていた

ふと手の中を見ると
あの透明な稚魚がいた
僕はそれをそっと海に返す

稚魚は星空に照らされて
七色に光りながら
波間へと消えていった

危機的な状況で掴んだ砂のかたまり
手の中に残ったのは
小さく透明な宝石だった

チャンスは波のように押し寄せる
宝石は夜空に照らされ
七色に光り
僕の心を映し出していた

そしてその輝きは
未来へ進むための光となり
止まっていた物語を
再び動かし始めていた

6598

物語とスペルと、止まった物語

09/30 01:10 更新

子供の頃
本屋で大好きなシリーズの本を予約した

店長は僕の言葉を素早く紙に記す
よく見ると普通の文字じゃない
「これは速記だよ」と大人が教えてくれた

僕の目には
その文字は魔法の呪文のように映っていた

しかし数日後の連絡は
在庫なし、入荷予定なし
パズルのピースが欠けたように
物語は完成しないまま止まった

大人になり、会社員となった僕の言葉も
上司の一言で砕かれ
万人受けの形に矯正されていく
自分ではなくなる恐怖に
物語は再び、止まったままだった

けれどある日
子供の頃の記憶が蘇る
自分の物語を完成させたい――そう願った

僕は会社員の他に
実は ウィザードを狩る「ウィザード・スレイヤー」でもあった

ウィザード――
人の姿をした異形の者
呪文を唱え、火と闇を操り
強盗、殺人、破壊を繰り返す存在
それを倒すことが、僕のもうひとつの仕事だった

物語を完成させるために
僕はネットであの本を探しまくった
しかしいくら探しても見つからない
「表のサイトでは見つからないか」そう考え
裏の闇サイトへアクセスした

そこで知る
闇オークションに出品されるという情報
危険レベルはSSS
しかも、最凶のウィザード盗賊集団
「シャドウ・トループ」が狙っているという噂

それでも僕は申し込んだ
使命に駆られるように

オークション会場
屈強なセキュリティが並ぶ中
進行する競り
そして――あの本が姿を現した瞬間

轟音とともに扉が吹き飛ぶ
現れたのは「シャドウ・トループ」

「その本をよこせ!」

セキュリティが魔法障壁を展開し
電撃のランスを放つ
閃光が闇を裂き
会場全体に轟音が響いた

だが盗賊の呪文は強力だった
炎の奔流がぶつかり合い
障壁は次々と砕け散り
セキュリティは次々と焼かれていく

焦げる匂いと悲鳴
火花と破壊の残響
緊張が肌を切り裂いた

僕は叫ぶ
「強すぎる!」

セキュリティは倒れ伏し
魔法障壁は崩れ去る
会場の中央に置かれた「あの本」だけが
静かに光を帯びていた

炎の柱が視界を裂き
破片が飛び交う中
僕は身体を低くして駆け出した
肩をかすめる火球
耳を裂く轟音
床を叩き割る衝撃波

それでも
ただ一心に
あの本へ向かって――

ついに僕は両手で掴み取った
全巻揃った瞬間
手の中で光が溢れ出した

頭に流れ込む、言葉の記憶
盗賊たちが呪文を放とうとした瞬間
リーダーが血走った目で叫んだ
「貴様!その本をよこせ!
お前ごと焼き尽くしてやる!」

僕は空間に大きく円を描いた
指先から奔る光が火花のように散り
輪は震え、唸りをあげて拡大していく

轟音とともに
幾重にも重なった光の円環が放たれ
盗賊たちの呪文を飲み込み
炎も雷も闇の槍も
次々と砕かれ、呪文は無効化されていった

会場全体が閃光に包まれ
床が震え、空気が爆ぜる
呪文は叫び声ごと吹き飛ばされ
盗賊の身体は光に裂かれ
影の残像となって霧散していく

「スペル・クラッシャー……!」
盗賊のリーダーが恐怖に震える
「なぜその魔法を……!」

断末魔の絶叫とともに
「シャドウ・トループ」は飲み込まれ
光の奔流の中で完全に消滅した

僕は静かに呟く
「恐怖の呪文はもう通じない」
「物語は、自分の言葉で創っていく」

残されたのは
子供の頃から探していた本
そこには言葉の記憶が詰まっていた

自分の言葉で創る呪文は
まだ見ぬ物語へ進むための光

止まっていた物語は
ようやく動き出した

閉ざされたページがめくられ
失われた章が再び綴られる

その言葉たちは
恐怖を越えて進む光となり
まだ見ぬ未来を照らしていた

そして僕は知った
物語は終わらない
自分の手で紡ぐ限り――

6598

夜空の塔と再会

09/29 02:31 更新

猛スピードで
この時間は変わっていくから

絡まってほどけなかった思いを
久しぶりに開いてみる

毎日の忙しさで固まったコンクリートは
雨に濡れて少しずつ溶けていく

いつかこの雨が止んで
夏の大雨が終わってほしいと
取るに足らないものを捨てていく

現実の匂いも
緩い眠りも
綺麗に畳んでしまい込んだ心

溢れた思いは歌になり
そっと心を抱きしめる

耳を撫でる吐息
大きな手が包む小さな肩
僕の弱さを
君にどれだけ見せよう

扉を開くと
月を抱く透明な塔が 夜空に滲む

最初で最後の雨が降った夜
背後から聞こえたのは
君の好きだった詩

その雨はまだ胸の奥で降り続け
肩に残る温もりは
静かに扉を押し開けていく

塔の上から零れた光が
僕の歩く道を
遠い旅の途中まで照らしていた

6598

絆創膏と掌と、第3の目

09/27 06:17 更新

子供の頃
僕は漫画を描くのが好きだった

テスト用紙の裏でも
ノートの隙間でも
夢中で線を走らせた

好きなことは時間を忘れるほど熱中し
興味のないことには一切手を伸ばさない
所謂変人で
良く言えば自由人だった

常識という箱からはみ出し
枠に収まらない存在だった

――大人になり
会社では抜群の処理速度を買われ
評価は得ていた

けれどその感性は
響く者には共鳴し
響かない者には
気に障る存在でしかなかった

上司や同僚からの嫌味や理不尽に
言い返さず立ち去るだけの僕の心には
重い鉛が沈んでいた

――実は僕には秘密があった

おでこに隠された「第3の目」
それを開けば
知性は何倍にも膨れあがり
空間移動の力すら解き放つ

けれど興奮状態になり
冷酷な人格へと変貌していく代償を伴った
能力を発動する時には
いつも絆創膏を貼り
他人に気づかれぬように隠した

いつからか僕は
自分を守るために
第3の目を少しだけ開き
嫌味を言う上司や同僚を冷徹に論破した

完璧なまでのロジックと異様なオーラに
次第に誰も寄せ付けなくなり
そのたびに人間から少しずつ
かけ離れていくのを自覚していた

――ある日
ショッピングセンターに向かって
街を歩いていると
帽子を深く被った女性が
すれ違いざまに呟いた

「第3の目を使いすぎると
普通の人に戻れなくなるよ」

咄嗟に振り返ったが
そこにはもう誰もいなかった

不思議な余韻を胸に残しながら
僕は歩き続けた

ショッピングセンターでの買い物を終え
出口に向かって歩く
前から幸せそうな母娘が歩いてくるのを横目に
建物の外へ出た

――その直後
轟音が背後を襲った

あの建物に大型のタンクローリーが衝突し
大爆発が巻き起こったのだ

建物は今にも崩れ落ちそうで
逃げ惑う人々の感情が
怒涛のように頭へ流れ込む

その瞬間
あの声がまた響いた

「その力を使ったら
もう戻れなくなるよ」

振り返ると
あの帽子の女性が立っていた

「構わない!」
僕は叫んだ

女性は静かに帽子を脱いだ
そこには第3の目が光っていた

「じゃあ手伝うよ」

僕は第3の目を最大に開いた
雷に打たれたような衝撃が
身体中を駆け抜ける

瞬間移動の力が全開で迸り
次々と人々を建物の外へと運び出した

光が裂け
空間が捻じれ
燃え盛る炎の向こうから
生命が外へ解き放たれる

運び出された人々は
しばらく状況を飲み込めなかったが
やがて助かったことに気づき
安堵の声がそこら中から響き渡った

僕はその声を聞きながら
胸をなでおろす

ふと目に入った自分の掌は
もはや人間のそれではなく
異形の形に変わっていた

隣に目をやると
僕と同じように
人間とはかけ離れた姿の女性が立っていた

「これでいいんだよ…ね」
彼女は小さく呟いた

僕は空を仰いだ
普通には戻れないだろう

けれど偽って生きるより
本当の自分で進む方がいい
そう思えた

圧倒的な力だけでは滅びる
そこに「人間的な心」が寄り添ってこそ
未来は続いていく

夜空に浮かぶ星は
淡く瞬きながら
僕たちの選んだ道を照らしていた

6598

配線と瞳と、迷宮の記憶

09/26 08:56 更新

子供の頃
迷路のような家庭の中で
親にテレビの配線を抜かれた

どうしても見たくて
出かけた隙に配線を繋ぎ直す
昔のテレビは工具で加工しなければ
光を映せない

僕は電気屋の手元をじっと見て
やり方を覚えていた
カッターナイフで線を加工し
自分の手で繋いだ

暗闇の部屋に
テレビの光が揺れていた

――今日
僕は巨大な学校施設で
電気工事の仕事に就いていた

迷路のような廊下を進み
学長に挨拶へ向かう途中
盲目の少女とすれ違った

「彼女は目が見えないが
感覚だけで位置がわかる」と学長は言った
その瞳の奥に
どこか悲しげな影があった

――実は僕には特殊能力があった
他人の視界を覗くことができる
視界ジャックと呼ぶその力で
誰の見ているものでも僕の目になる

――作業も終盤になり
日が傾きはじめる頃
校門の方角から轟音が響いた

装甲車が校門を叩き破り
迷彩服の兵士たちが押し寄せる
刃のようなスピードで学校は制圧され
館内に冷たい声が流れた

「この学校は我々が占拠した
お前たちは政府との交渉材料とさせてもらう
建物を吹き飛ばす爆弾を仕掛けた
逃げる者がいれば直ちに起爆する」
――テロ集団の声だった

外では対テロ特殊部隊が待機していたが
内部の状況が把握できずにいた

僕はこの状況を打破するため
能力を発動し
兵士たちの視界を次々と視界ジャックした

一人の兵士の視界から見えたのは
建物の深部で手早く組まれる起爆装置だった
複雑な配線が重なり合い
起爆ユニットが冷たく脈打っている

僕は起爆装置の配線をじっと見て覚えた
起爆装置までどうやって辿り着くか
頭の中で道を探るとき
声が響いた

――「場所はわかる
私の視界を見て」

少女の声だと直感した

僕は大元の電源を断ち
建物中の光を切った
暗闇が一瞬で広がり
兵士たちの混乱した声だけが響く

少女の視界を借りると
闇の中に道が浮かび上がった
まるで彼女だけが触れられる光筋のように

迷路のような通路を手探りで進み
爆弾を仕掛けた部屋の前に立つ
僕の呼吸は浅く震え
指先は冷たい金属と配線に触れる

少女の視界を通して
僕は震える指で配線をほどき
導線を探し当てては確実に切断していった
火花が散りそうな緊張が掌を締め付ける

――沈黙が訪れたとき
爆弾は動きを止めた

窓を割り声を張り上げる
「爆弾は処理した!今だ!」

その直後
テロのリーダーが叫んだ
「貴様!建物を爆発させてやる!」
そして起爆装置に手を伸ばしたが
表示は黙したままだった

外から轟音のように答えが返る
特殊部隊が一斉に突入し
閃光手りゅう弾が炸裂し煙が立ち込める

銃声が交錯し叫びが破裂する中で
破壊と拘束の渦が起きて
テロ集団は力尽きて倒れた

――後に知ったことだが
あの学校には最初から少女はいなかったという

僕が暗闇で視界をジャックした相手は誰だったのか
その謎は残るがわかったことがある

あの時視界の先に見た光りは
迷路の出口を強く照らしていた

孤独ではないと感じた時
胸の奥で温かいものが広がり
進むべき道が自然と見えてきた
他者の光が寄り添うだけで
足取りは確かになる

夜が白み始める頃
心の迷宮に差し込んだその光は
軋んだ記憶の隙間を縫い込み
静かに未来の地図を描き出してくれた

6598

ネオンとつぼみと、旅の途中

09/25 02:16 更新

見栄えするビジネスバッグを抱え
カツカツと音を鳴らすシューズで
クラクラ眩むネオンの街を歩く

宙に浮いた月が影を照らし
追い越すたび
道の途中に揺れるつぼみが
やけに眩しく見えた

電車の背もたれは狭く
瓦礫の中に閉じ込められるようで
自転車に乗り換え
肩掛けのバッグに
旅の荷物を詰め込んだ

見つけた隠れ家で
線香花火を虹に落とす
儚い火の雫が
想い出の道を震わせた

戻れない瓦礫の場所で
諦めない君は
帰れない道を振り返らず
星に願いを届ける

その願いは夜を越え
つぼみを膨らませ
あの道の途中で
野に咲く花へと変わった

風に揺れるその花は
僕の心を映し
君と僕の夢を重ねながら
幸せの景色を広げていく

6598

真紅と左腕と、解放のサイコガン

09/24 03:28 更新

子供の頃
授業で書いた作文は
他の子たちと違って感情を優先していた

先生はその部分を好評してくれた
でも採点され、先生の視点で文章が直されると
何が良い作文なのか、わからなくなった

評価のための整った文章は
自分じゃないようで
心が置き去りになり
感情のペンは、左手の奥に埋もれていった

――今日は会社で
プロジェクトのプレゼンを行う日だ

評価を得るために
適当に作った資料を読み上げるだけの
感情のないプレゼン

給料が上がり
昇進できればそれでいい
他人の評価ばかりを気にしながら
心を置き去りにする日々

――家に帰り眠りにつく
夜中、悪夢にうなされて目を覚まし
汗まみれの顔を水で洗った

鏡に映る自分を見ながら思う
これが本当の自分か、と

その疑問に呼応するように
左手が疼く
ポケットに手を入れると
そこには親指ほどの
真紅のダイヤモンドがあった

「世界で一番高価なレッドダイヤモンド……」
思わず呟く

よく見ると
その中心には小さな黒点が揺らめいていた

――実は僕は
宝やファンタジーが好きなオタクだった

黒点入りのダイヤを調べると
それは「アンチマターを封じ込めた
レッドダイヤモンド」だった

アンチマター――
数グラムで核爆発を超える
究極の物質

なぜ自分がこんなものを持っているのか
困惑したまま
朝を迎えていた

――出社すると
会社の玄関前に黒服の男たちが立ち並んでいた

「待て!こいつから反応がある!」
一人が叫ぶと
数十人の黒服に取り囲まれる

「身体検査をさせてもらおう」
ポケットのレッドダイヤモンドが見つかった

「これはどこから持ってきた!」
「わからない」

答えた瞬間
殴る蹴るの暴行が始まる

「言え!言わないと死ぬぞ!」
血に染まる視界の中
もうダメだと思った時――

――僕の中から感情が溢れだした
身体に衝撃が走る

次の瞬間、拳が黒服の顔面を打ち抜いていた

「貴様、何者だ!」
黒服が叫ぶ

小型マシンガンが一斉に僕へと向けられる
絶体絶命――

その時思い出した
僕は伝説のトレジャーハンター

数年前
アンチマターで世界を滅ぼそうとした巨悪から
それを奪い
レッドダイヤモンドに封じた

逃走の果てに顔を変え
記憶を失っていたのだ

――マシンガンが火を吹く刹那
左腕が光り
感情をエネルギー弾へと変える
サイコガンが目を覚ました

胸の奥から
怒りと悲しみと歓喜を燃料に
灼熱の光弾が迸る

轟音と共に
圧縮された想いが炸裂し
閃光が視界を真白に染めた

黒服たちは叫ぶ暇もなく
次々と吹き飛ばされていく
銃弾の嵐を
感情の奔流がかき消していく

焦げた匂いと破片が散る中で
僕は低く呟いた

「失った本当の感情を取り戻したぜ」

――忘れていた感情を取り戻した時
心の地図を
自由に描きたいと願った

その瞬間
固いレッドダイヤモンドの奥で
閉じ込められていた宇宙が解放され
赤い光は千の星座となり
僕の影を照らし出した

その輝きは
過去に置き去りにした涙を洗い流し
未来を選ぶ自由を与えてくれる

そして僕は気づく
奪われたと思っていた「感情」は
ずっとこの胸の奥で
眠っていただけなのだと

夜明けの空に
解き放たれた光を仰ぎながら
僕は初めて
自分の心の声に頷いた

6598

雨音と影と、崖の向こう

09/23 01:28 更新

子供の頃
雨の日に歩いたどぶ川のほとり
覗き込んだ瞬間、足を滑らせ
隣にいた影と共に川へと呑まれた

濁流に必死で藻掻きながら
偶然通りかかった大人に引き上げられ
助かった安堵と、まとわりつくどぶ川の臭い

家に戻り体を洗い流しながら
あの時、後ろから蹴られたことは
言わないでおこうと決めた

蹴落としたその人は
今は風の噂で大変な状況になっているようだ

――大人になってからも、
同じ光景は繰り返された
深夜も早朝も身を削り
積み上げた大きな仕事を
上司の一言で奪われる

「後はA君が引き継ぐ」

背中に走るあの感覚
蹴落とされる痛みと重なっていた

その日、僕とAは
重大な機密を託されていた
国家を揺るがすほどの情報を収めた
マイクロチップを顧客に届ける任務についた

僕とAは護身用の拳銃を携え、
僕は靴下にグラップリングガンを忍ばせていた
(壁や天井にフックを撃ち リールで身を引き寄せる移動の銃)
子供の頃の記憶が形を変えて
それは僕のお守りになっていた

送迎車に揺られながら
Aは薄ら笑いを浮かべる
「お前の手柄をもらって悪いな」
僕は無言で窓の外を見つめた

後ろから黒塗りの車が尾行して来た
嫌な予感がする
僕とAは警戒する

黒塗り車はじわりと距離を詰め
やがて速度を上げて鋭く切り込んできた

激しい衝撃が送迎車を叩き
車は制御を失って回転し始める

窓ガラスが砕け
金属の悲鳴が辺りにこだまする
車はガードレールに激しく叩きつけられて停止した

衝撃で運転手は動かなくなった
黒塗りの車から武装したエージェントが降り立つ

プロの動きで僕らは素早く押さえつけられ
銃口から催涙の噴霧が吹きかけられる

視界が溶け
意識は闇に沈んでいった

目を覚ますと
雨に煙る滝の崖の上
手を縛られ 銃も奪われていた
エージェントは笑いながら告げる
「そいつを突き落とせば助けてやる」

震えるAの姿に
一瞬「消えても困らない」と
よぎる黒い衝動
だが僕は走り出し
その背を抱きかかえ
共に滝へと飛び込んだ

靴下から引き抜いたグラップリングガンを
咄嗟に放つ
岩肌に突き刺さり
ワイヤーに宙づりになって
激流を背に二人で降りていく

「……ありがとう」
震える声を聞きながら
僕は低く呟いた
「蹴落とす者は いつか自分も蹴落とされる」

雨音にかき消されながら
上ではエージェントの混乱する声が響く
僕らは森の影に紛れ
静かに逃げ延びた

――その後、僕は全てを手放した
もう振り返っても
蹴落とす者はどこにもいない
広がる空の下
自由という宇宙を
ただ飛んでいるのだから
風が背中を押し、未だ見ぬ季節へと向かう
静かな朝を胸に抱えて

6598

ガラスと振動と、秘密の画材

09/21 19:28 更新

なんか足りないと呟きながら歩く
足取りは真面目で
繰り返す日々に すり減る感情が滲む

それでも夜風に押されるように
溢れかえる音へ導かれ
旅の衝動に駆られる

形のない大事なものは
意外と近くで揺らいで
星がひときわ瞬く夜
紡いだ詩がガラス窓を震わせ
グラスの氷を静かに溶かす

知らない世界に飛び込んだ先で
待ちわびた瞳に映る僕は
光に溶け
終わりのない始まりを繰り返す

秘密の画材に描いた想い出は
素肌をかすめ
大人になれない子供の影を浮かべる

笑う君の温かさが
クリーム色の夢となり
夜空を静かに漂う

その軌跡が
気づけば僕の明日を染める

6598

蝙蝠と音と、余韻の波動

09/20 02:54 更新

子供の頃
夕暮れの帰り道、川の上をゆらゆら飛ぶ蝙蝠を見かけた
目ではなく、超音波の反射で世界を描く姿は
まるで「音の世界に閉じ込められている」ようで
音に敏感だった僕の心に、不思議な感覚を残した

やがて僕は、音の世界を旅するのが好きになっていった
音は心に余韻を残し、体に響く
音に身を任せていると
本当の自分に戻れる気がしたからだ

――大人になり
僕は巨大な音響ホールの建築に関わっていた
だが支配人は理不尽な要求ばかりを突きつける
その日も「地下から変な音がする」と言われ
僕はマンホールを開けて下水に降りた
暗闇と異臭の中を歩き、特に異常は見当たらない
ただ一瞬、小さな音がして
水面に波紋が広がったのを見た
わずかな違和感を抱えたまま、地上へ戻る
「これが僕のやりたかったことか」
音響ホールで小さく呟く声は、反響して
音の牢獄に閉じ込められた悪夢のように響いた

実は僕にはもう一つの顔があった
数年前から世界に現れた
「Nightmare Wraith(ナイトメア・レイス)」――通称NW(ヌウ)
人の生気を吸い繁殖する亡霊のような怪物だ
NWはそれぞれ異なる能力を持ち
対峙するハンターもまた、自らの特性を武器に戦う
僕の特性は“音”
音と同化し、音速の力を操ることができる

その日、出動要請が入った
場所はあの音響ホールだった
駆けつけると仲間のハンターが既に集まっていた
天井には支配人が血まみれで吊るされている
緊張が走った瞬間、空気がかすかに震えた
直感で身をかわす
次の瞬間、仲間の身体が音速の衝撃で真っ二つに裂けた
――NWは超音波を操る能力の持ち主だ
そう悟った時には、もう仲間が次々と倒れていった

居場所を探る唯一の手がかりは
攻撃の直前に走る、わずかな空気の震え
その時――また空気が震えた
僕は能力を発動し、全身を震わせる音を解き放つ
波紋のように広がった音は壁や天井を叩き返し
異常な数の反響が一点に収束する
NWはその反響に耐えきれず、たまらず飛び出した
それは巨大な蝙蝠の怪物――
闇に棲む悪夢そのものだった

闇を切り裂くように
僕は音と同化し、全身を音速の矢へと変える
空気を裂き、衝撃がホール全体を震わせる
閃光のような一撃がNWの巨体を貫き
轟音と共にその身体は弾け飛んだ

「音は反発するものじゃない。同化するものだ」
荒い息を吐きながら、僕は呟いた

――あの日から僕は悪夢の世界を抜け出した
音は波を作り、言葉は世界を作る
心から溢れ出す波動は余韻を残し
やがて共鳴となって誰かに届く
音に閉じ込められていた蝙蝠のように
閉ざされた心の奥にも
いつか光は響いていくのだと信じて

6598

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