返信が来た夜、初めての接客が決まるまで
既読がついたのは、翌日の午後だった。
通知を見た瞬間、心臓が飛び出しそうになった。
『優しく癒してくれる方を探してます』
短いけれど、僕には眩しすぎる言葉だった。
頭の中が真っ白になった。
「どう返せば…? いや、丁寧に、誠実に」
必死で言葉を選んだ。
『もちろんです。お時間のご都合はいかがでしょう?』
指が震えて、文字が打てない。
何度も打っては消して、やっと送信。
その数分後に返ってきたのは――
『今週末、大丈夫ですか?』
その瞬間、息が止まった。
スマホを握ったまま、しばらく動けなかった。
決まった…? 本当に…?
確認するように画面を何度も読み返す。
『はい、大丈夫です。ご希望のお時間を教えてください』
送ってから、心臓が早鐘を打ち続けた。
待ち合わせ時間の確認、場所の相談、すべて手探りだった。
ぎこちなく、でも誠実に。
相手は丁寧な女性だった。文面の優しさに、何度も救われた。
そして、決まった。
「今週末、初めての施術」
スマホを置いた瞬間、涙が出そうになった。
まだ何もしていないのに、もう報われた気がしていた。
でも、同時に、胃の奥が重くなる。
「できるのか? 僕に」
善、56歳。妄想の日々が続く、、、
この手で、誰かを本当に癒やせるのか。
その夜、眠れなかった。
