【全ての貴女に捧げます】
夜風に溶けるような、笑い声が耳に残っている。
ワインの余韻か、指に触れたとき、少しだけ時間が止まった気がした。
仕草は氷を噛むように理性をざらつかせ溶かしていく。
不思議だね。派手な服を着ているわけでもなく、肌を露出しているわけでもないのに色っぽく見える女性って。
年齢を重ねて、慎重になっているのもわかる。傷ついたことも、誰かに裏切られたことも、全部、貴女の瞳が教えてくれる。
グラスの向こうから僕を見たその目が、あまりに優しくて、少し寂しそうだった。
あの夜ずっと抱きしめていたかった。軽くじゃなくて、本気で、心ごと。
でも、まるで氷のように、触れたら溶けてしまう存在だ。妖艶でいて、どこか哀しい。
今度こそ僕の手で溶かしてみせるよ。
心の奥にまで指を入れられたような、
あの沈黙の数秒が、ずっと消えない。
時には氷のように冷たく、
時には火照るように熱く、
揺れる心を僕は抱きしめて。
