天井を見上げると
金色のキラキラとした照明が揺れていた。
そのすぐ隣には、
静かに触れてくる体温があった。
あの頃の僕は
結果を出すために、
すべての時間を一点に注ぎ込んでいた。
他の人がやらないこと。
誰も手を出さない領域。
そこにこそ、自分の道があると信じていた。
だから、
逃げ道を断った。
結果が出なければ生きていけない、
そんな設計図を自分の人生に引いた。
仲間たちの眼差しは知っている。
「無理だよ」と思っている顔の奥で、
口だけの応援が静かに揺れていた。
会社員を辞めてから、僕は変わった。
同じやり方じゃ、
“楽しくなければ意味がない”と気づいた。
苦しい道を耐え抜くようなことは、
もう会社で散々やってきた。
これからは、
楽しい方にしか進まないと決めた。
誰もやっていないことを見つけて、
それを、自分だけの方法でとことん突き詰める。
怖いくらい手応えがない日々。
でもだからこそ、自由だった。
地面はない。
下には水。
足を乗せると沈みそうになる、
深く澄んだ青の山を、僕はひとりで登っていた。
どこかで陽が射し、
その一歩ごとに
苦みとやわらかさが交じり合うような感覚とともに。
疲れ果ててソファに沈み、
天井を見上げる。
白熱灯の眩しい光が、
毎晩、僕を照らしていた。
その光に照らされながら眠りにつく。
その繰り返しのなかで、
ある日、光が少し変わった。
点と点が繋がった。
僕の描いた設計が、地図になり始めた。
誰にも理解されなかった地道が、
線になり、形になり、道になった。
天井を見上げると、
金色のキラキラとした照明が揺れていた。
抱きしめたぬくもりが
背中から胸へ、腕へ、確かに流れていく。
そのぬくもりのなかで、
ふと、川が体温とともに蒸発して
空を舞い、海になり、風になって、
やがて言葉になって誰かに届く――
そんな感情が、静かに湧き上がっていた。
地面のない、青い山を登っている。
だけどその手には、ちゃんと地図がある。
設計することを諦めなかった僕が、
光の見える方へ進んでいる。
そして今、
その光のなかで、やわらかく息を重ねながら、
静かに抱きしめている。
誰かの体温を確かめるように、
僕自身の鼓動を信じるように。
