こんばんは、千です。
先日、結婚を控えた姉妹が家を出ることになりました。
引越しに伴って不要なモノは残していくから、捨てるか引取るかして欲しいとのことだったので、僕は空いた部屋の後片付けを手伝うことになりました。
可愛らしい雑貨が所狭しと並べられていて、まるでおしゃれなカフェのような雰囲気だった部屋は、モノがなくなってガラリとしており少し寂しさが込み上げてきます。
引き出しを開けて使わなくなった服や小物を整理していると、ふと目に入ったのは隅に置かれたキレイな小箱でした。
普段は目立たない場所に置かれていたその箱は、見たことがないものだったので好奇心から思わず手を伸ばしました。
箱には「Refa」と書かれたシールが貼られています。
「へぇぇ、リファなんて使ってたんだ」と思いながら箱を開けると、中から出てきたのはシンプルなデザインの美顔器でした。
美容には結構こだわりがあり化粧品やスキンケアアイテムもたくさん持っていることは知っていましたが、美顔器を使っているとは知りませんでした。
僕自身の美容意識は薄いので、自分で使うことはないかなと思い箱に戻しましたが、それなりにお値段がすることは知っていたので、画像検索をしてみると案の定の高価格アイテムであることが分かりました。
さすがに捨ててしまうのはもったいないなと思ったのと、母親が使うかもしれないなと思い声を掛けてみました。
「これさ、部屋から出てきたんだけど使いたい? 結構、イイやつみたいだよ。」
美容に関する知識が乏しかった母はリファが何なのかわからなかったようで、「あの子が使ってたやつ?」と不思議そうに尋ねてきました。
「うん。そうだと思うけど、しっかりと使った形跡はなさそうだし、まだまだ新しいやつだと思うよ」と答えました。
母はそれをじっと見つめながら、
「…なんだか変わった形してるけど…そういうやつじゃない??」と恐る恐る聞いてきました。
僕は驚き、ちょっと恥ずかしくなりながら
「いや、ただの美顔器だよ!」と慌てて答えましたが、母は真面目な顔で僕を諭してきます。
「そういうやつかもしれないから、知らないふりして捨ててあげなさい。」
「私は使わないし、あんたもいい歳してるんだからセクハラと間違われるような事しないように気をつけなさいね。」
「違うよ!これ本当にただの美容機器だよ!顔に当ててコロコロして使うの!」と必死に強調しました。
渾身の説明の結果、母はちゃんと理解してくれて、勘違いが生んだやり取りを楽しそうに笑っていました。
僕はセクハラ疑惑をかけられて、とてもとても不服でしたが、美顔器が引き起こした勘違いが家族の笑い話としていい思い出になりました。
思いもしないことで少しだけ家族との距離が縮まったような気がします。
これも姉妹が家を出る前の小さな贈り物なのかもしれませんね。
萬天堂 千
