第75回『実樹の禁断賞状💮』

 

2025年12月16日。

 

「セックスの際に女性は演技をしている」という説があります。

 

世の男性を代表して、まずは謝罪したいと思います。

 

演技をさせてしまって、ごめんなさい。

 

ただ、女性が演技をする必要のない特別なテクニックを取得できるかどうかは、人によるところが大きい。

我々男性が、快楽を司る感覚器官を適切に刺激すること。

興奮状態を生むために、安心感や解放感を引き出すこと。

それらの性の技術を獲得するには、特殊な訓練、あるいは被験体の脳を直接いじるような生体実験が必要になります。

 

では、別の形で「セックスの際に女性は演技をしている」という問題に対峙したい。

 

僕はこう考えました。

**「男性も演技をするべきだ」**と。

 

片方だけが演技をし、もう片方は楽しむだけ。

それでは、ただの役者と観客です。

 

お互いに演じれば、それは役者同士による共演になる。

共に作品を作ることができる。

それが僕らのエターナルになるのだから。

 

果たして、現代社会で「セックスの際に演技ができる男性」はどれほどいるでしょうか。

おそらく、ほとんどいません。

 

なぜなら、巷のポルノには、男性が女性のために演技をする姿が存在しないからです。

教科書がない。

 

だから今回は、

**「セックスの際に演技をする男性のための演技論」**を、可能な限り記していきたいと思います。

 

スタニスラフスキーは、かつてこう言いました。

「良い演技をするか、悪い演技をするか、ではない。真実を演じるのだ」

 

エロスとは、真実でしかありません。

 

演技をするには、三つの要素が必要です。

常識、勇気、そして強い意思。

 

常識──

ベッドの上で与えられる、あらゆる出来事を解釈するために。

 

勇気──

失敗の恐怖があるにもかかわらず、すべてを彼女に投げ込むために。

 

意思──

彼女が快楽で白目を剥くことが簡単ではないとしても、その究極的な目標を死守するために。

 

まずは、セックスで演技をする準備をしましょう。

準備とは、「ベッドから与えられた“エッチなアクション”を探すこと」です。

 

即興性の高い、互いの上質なアクションが絡み合うことで、良いセックスは生まれます。

そして、そのアクションは「自分がやっていて楽しいもの」であるほど、真実に近づいていく。

 

たとえば、匂いフェチの男性。

それが女性にバレている場合。

 

女性の頭皮の匂いを嗅ぐとき、

通常の5倍の音量を出す。

 

「すーっ……ズズズズズーーー！」

「ちょっと♡」

「えへへ♡」

 

これが「嗅ぐ」というアクションです。

 

男性が嗅ぐというアクションを取ることで、

女性は「嗅がれて恥ずかしい」というアクションを返すことができる。

 

素晴らしいセッションですね。

 

そして、アクションは時に

**「自分でコントロールできないもの」**である必要があります。

 

頭皮を嗅がれたときの反応は、ある程度想像できるでしょう。

では、ひざの裏を嗅いでみたらどうでしょうか。

 

「ちょ、ちょちょちょ！」

 

おやおや。「ちょ」が出てきました。

人が余裕を失ったときに出る擬音ランキング第一位の「ちょ」です。

 

意外と汗が溜まっている、その部位を嗅ぐことは、

女性の想定外のアクションを引き出します。

 

この「驚きを伴ったアクションの質感」こそが真実であり、

より良い演技を生む沸点になります。

生唾を「ごくん」と飲めば、それは変態性を帯びた愛情表現というアクションになるでしょう。

 

そして重要なのは、

すべてのアクションには「終わり」が必要だということ。

 

頭皮を嗅いだ。

ひざの裏も嗅いだ。

その後に、

 

「次はどこを嗅げばいい？」

 

──このクエスチョン。

これはダメです。

 

アクションは、自分で責任を取らなければいけません。

 

強引に次の部位を嗅ぐべきだし、

嗅がないのであれば、

 

「気分が落ち着いた」

「疲れが吹き飛んだ」

 

といった、ゴールとなる言葉で締める必要があります。

 

ボクシングがコンセプトのラブホテルで、

枕元にゴングがあるなら、鳴らしてもいいでしょう。

 

このようにアクションを積み重ね、

真実味を深め、

セックスという演技を作り上げていくのです。

 

そのためには、

一つ一つのエロスシーンを分析する必要があります。

 

たとえば、女性の下着を脱がす場面。

 

より良いシーンにするには、

その意図に見合った細やかなアクションを実装しなければなりません。

 

素材は綿か、サテンか。

形はTバックか、紐か。

食い込んでいるか、いないか。

その日は2時間履いているのか、12時間履きっぱなしなのか。

 

それらを整理し、

興奮に繋がるアクションを選択する。

 

Tバックであれば、

「ほとんどお尻見えてるね」といった辱めを伴う言語化。

 

腰の付け根から指を入れる。

ずらす。

戻す。

片側だけ膝まで下ろして止める。

また戻す。

ぐいっと持って食い込ませる。

怒られる。

 

そこに、

「こりゃたまんねぇや」

「ごめんなさいね」

 

といった、自分の楽しい・興奮している感情表現を散らしていく。

 

さらに、

その興奮を「まるで〇〇のようだ」と比喩する。

上質な演技のための想像力を持つのです。

 

女性の下着を脱がし、

陰部があらわになったときの感覚。

それは、自身の人生のどの記憶と似ているのか。

 

筆者にとってそれは、

子どもの頃、初めて飛行機に乗り、

窓から見た雲の上の景色でした。

 

雲は陰毛。

その向こうにあるのは、日の出です。

 

触れてみたいと芽生えた、あのときの感覚。

それを思い出し、

日の出に触れるように、手を伸ばす。

 

想像力を働かせ、

「まるで〇〇のように」と例えるこの手法は、

セックスにおけるアクションを、生き生きとさせます。

 

高いレベルで演技を続けていれば、

必ず「真実の瞬間」に気づくことができます。

 

次回は、

**「真実の瞬間を演じる方法」**について解説したいと思います。

次回があれば……。

 

吐息や喘ぎ声は、女性だけのものではありません。

セックスの場では、

女性が観客となり、我々男性を見ている瞬間もあるのです。

 

自分を見失わず、

その夜の物語を演じ切る努力も、時には必要でしょう。

 

この冬のきみの物語に、

登場したいぼくです。

 

［X］@miki_chijin